冤罪につながりかねない「人質司法」とは何か、村木厚子氏やカルロス・ゴーン氏らが長期間勾留
立花孝志被告の公判期日のめどが立たず、逮捕から半年たったいまでも勾留されているという。また、兵庫県の障害者福祉施設で働いていた女性従業員が暴行の疑いで逮捕されて否認したが、18日間身柄拘束されて摂食障害を発症し、低栄養状態で死亡した。これらは「人質司法」と批判される身柄拘束ではないのか。「人質司法」の問題点について解説する。
【あの時、何が】弘中惇一郎弁護士(第1回)日産自動車元会長カルロス・ゴーン氏が逃亡していなければ勝っていた、人質司法の問題点と有罪率99.9%の絶望とは
抽象的に判断され、運用される勾留要件「罪証隠滅の恐れ」
「人質司法」とは「無罪を主張し又は黙秘権を行使している被疑者・被告人について、殊更に長期間身体を拘束する勾留・保釈の運用」である(2020年11月17日付日弁連の「『人質司法』の解消を求める意見書」)。
別の言い方をすると、自分の身柄を捜査機関にいわば人質として取られている状態で、自身の身柄解放と引き換えに、無実の罪について自白してしまい、冤罪(えんざい)が発生しかねないような日本の身柄拘束(勾留)のあり方をいう。
逮捕後の身柄拘束を勾留といい、一般的にあまり問題とならない要件をとりあえず置いておくと、起訴前勾留では①住居不定②罪証隠滅の恐れ③逃亡の恐れ、のいずれかに該当することが勾留の要件であり、起訴後に保釈(釈放)が認められる要件は、①罪証隠滅のおそれがない②被害者等に身体財産に害を加えたり畏怖させたりするおそれがないことが保釈の要件である。
現状、これらの要件が抽象的に判断され、事実上検察側に有利に解釈・運用されているきらいがあり、勾留長期化の一因になっているとの批判もある。
釈放は取り調べに協力した検察官からの恩恵か
勾留中は、警察署の留置場または拘置所内で、起床から就寝に至るまで厳しく管理される。家族・知人との交流は制限され、当然ながら、インターネットも見られず、外部との連絡手段もほぼない。
この間に、仕事はできず、家族や会社も危機に陥る。これまで通りの食事も薬の摂取もできず、事件や今後のこと、家族のこと等不安にさいなまれる一方で、読書以外の娯楽や気晴らしもなく、一刻も早く釈放されたいと切に願うことになる。
無実の罪で被疑事実を否認または黙秘している場合はさらに深刻だ。
多くの場合、起訴され、自分は無実だと思っているのに保釈も認められずに身体拘束が続き、仕事は失い、家族と会えず、精神的に追い詰められ、釈放があたかも取り調べに協力して自白した者への検察官からの恩恵のように思えてくる。
そうなると、いわば自分自身の身柄を人質にとられたも同然であり、無実の罪について検察官のシナリオのとおりに自白してしまうリスクが非常に高まることとなる。
こうして、「早く釈放されたい一心で、やってもいない犯罪を認めてしまう」危険が非常に高まり、冤罪の温床となっていく。これが「人質司法」の問題である。
「人質司法」と言われる著名事件
こうした「人質司法」と評される著名事件として以下のものがあげられる。
■村木厚子氏
郵便不正事件で逮捕・起訴され、164日間勾留されたが、最終的には無罪判決が確定した。
■カルロス・ゴーン氏
ゴーン氏は複数の容疑で長期勾留を受け、日本の刑事司法制度は海外メディアや人権団体から批判を受けることとなった。ただし、同氏は保釈が許可されており、保釈条件を守らず海外に逃亡することはあってはならないことである。
■角川歴彦氏
東京五輪汚職事件で贈賄罪に問われた角川氏は、容疑を否認し続け、保釈請求も複数回却下され、結果として226日間勾留された。同氏は、「人質司法」により精神的苦痛を受けたとして国を提訴した。
冤罪の温床となる人質司法の解消手段
日弁連が「人質司法」解消のために出している提言の概要は以下のとおりである(前記の意見書)。
①起訴後勾留における保釈の拡大や代替措置の運用
②勾留要件の厳格化(逃亡や証拠隠滅のおそれを具体的に立証できない限り、勾留を認めるべきではない)
③取り調べへの弁護人立会い(海外でも一般的な制度にならい、弁護人の立会権を法制化すべき)
これに対して、裁判所と検察庁は勾留・保釈はその要件に基づいて個別事件ごとに適切に判断しているという立場であるが、万が一にも、無実の者が「人質司法」によって有罪となるようなことはあってはならない。一刻も早く制度的な改善がなされるべきである。
文/竹村公利 内外タイムス





