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中国が自国民の出国管理を強化 技術・産業まで広がる「国家安全」、なぜ今なのか

中国政府は15日、自国民の出入国管理を強化する新たな規定を施行した。

中国の国家安全や利益を害する行為に関与した場合に加え、輸出管理や技術輸出入に関する規定に違反し、中国の産業・技術の優位性や安全を脅かす可能性がある場合などについて、中国人の出国を認めないことができる。

さらに、戦争や武力衝突、治安悪化、自然災害などによって危険性が高い国や地域について、政府が安全情報を発信し、必要に応じて渡航を控えるよう促す仕組みも設けられた。

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ここで重要なのは、15日に突然規制強化が決定されたわけではないことである。この規定は6月29日に国務院常務会議で承認され、7月22日に公布されたうえで、15日に施行された。したがって、今回の動きは突発的な措置というより、以前から進めてきた出入国管理の制度整備が、この時期に実施段階へ移ったものと見る必要がある。

では、なぜ今、こうした制度が整備されたのか。その背景の一つが、中国政府における「安全保障」の範囲の拡大である。

かつて安全保障というと、軍事力や軍事機密などが中心だった。しかし現在の中国では、半導体、人工知能(AI)、先端製造技術、重要資源などの産業・技術分野も国家安全と密接に結び付けられている。米中間では先端半導体やAIをめぐる競争が続いており、技術やノウハウ、人材が国境を越えて移動することも安全保障上の問題として捉えられるようになっている。実際、今回の規定は、輸出管理や技術輸出入に違反した可能性がある中国人について、出国を制限できることを明確にした。

これは、出入国管理の意味が変化していることを示している。人の移動は単なる旅行や留学だけではない。研究者や技術者、企業関係者が海外に移動すれば、知識や技術、人脈も国境を越える。中国政府にとっては、こうした人的な移動も、場合によっては産業競争力や技術安全に関係する問題となるのである。

海外での危険にも対応 中国政府が渡航自粛を呼びかけ

もう一つの狙いは、海外に渡航する中国人の安全管理を制度化することにある。

中国政府は今回、海外の戦争や武力衝突、治安、自然災害、事故、感染症などを踏まえて安全情報を発信し、高リスク地域への渡航について注意を促す仕組みを設けた。最高レベルの危険地域などについては、必要に応じて渡航を思いとどまるよう促すことも可能としている。

したがって、今回の規制強化を単純に「中国政府が国民の海外旅行を制限する政策」と捉えるのは正確ではない。中国政府は、海外渡航そのものを一律に禁止するのではなく、国家安全、産業・技術安全、違法行為、海外での安全リスクなど、複数の問題を出入国管理の枠組みの中で扱おうとしている。

今回のタイミングを理解する鍵は、中国の対外交流が拡大する一方で、国家安全保障の概念も広がっていることである。海外に出る中国人が増えれば、犯罪や安全上のリスクだけでなく、技術、人材、情報の国外移転という問題も生じる。中国政府はこうしたリスクを個別に対応するだけでなく、出入国管理という制度の中に組み込もうとしているのである。

つまり今回の規定は、米中対立だけを直接の理由とする緊急措置というより、中国が近年進めてきた「国家安全保障の広範化」を、人的な国境移動にも適用する制度整備と見る方が実態に近い。今後は、実際にどのようなケースで出国制限が適用されるのか、特に研究者、技術者、企業関係者などの海外活動にどの程度影響するのかが注目される。

文/和田大樹 内外タイムス

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