ラスカー賞受賞の筑波大・柳沢教授が研究する「社会的時差ボケ」とは…平日と休日の睡眠時間のズレが影響
アメリカで最も権威ある医学賞「ラスカー賞」を筑波大学の柳沢正史教授ら日本人4人が受賞し、17日に授賞式が行われた。
睡眠と覚醒を調節する神経伝達物質「オレキシン」を発見した柳沢教授に基礎医学賞、血友病の治療薬「エミシズマブ」を開発した中外製薬の元シニアフェロー服部有宏氏ら3人に臨床医学賞が授与された。
日本の受賞は12年ぶりで、複数部門を同時受賞したのは1945年の賞の創設以来で初めて。ラスカー賞はノーベル生理学・医学賞の登竜門としても知られ、山中伸弥氏や故・利根川進氏も受賞している。
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帰国した柳沢教授はテレビ朝日系「モーニングショー」に出演し、「睡眠の基礎研究は脳科学の中でも地味に扱われてきた。先人たちがレム睡眠の発見や睡眠時無呼吸の治療法など大発見をしているが大きな賞には結びつかなかった。睡眠学がようやく日の目を見て評価されるようになったことはうれしい」と喜びを語った。
柳沢教授の研究は睡眠のメカニズムを解明し、不眠症など新しい治療薬の開発につながっており、世界中で注目を集めている。例えば、オレキシンの働きを抑えて自然な眠りを促す安全性の高い睡眠薬が2014年に発売された。
日中に突然眠ってしまう睡眠障害「ナルコレプシー」の患者は日本にも1000人に1人の割合でいるとされ、これはオレキシンの欠乏で起こるものと解明されている。厚生労働省の専門部会は先月、治療薬の製造販売承認を了承した。ナルコレプシーは“怠惰”と誤解されることも多く、正確な診断が難しい病気だった。
睡眠時間の中央値が2時間以上ずれると影響
柳沢教授の最新研究は、平日と休日の睡眠時間にずれがある「社会的時差ボケ」で、これがある人は労働生産性が低いという。例えば、平日に23時から6時まで寝るとすれば、睡眠の「中央値」は2時半になる。休日は夜ふかしで1時から11時に寝るとすれば「中央値」は6時。この中央値が2時間以上ずれると社会的影響が大きいそうだ。
社会的時差ボケがあると、1人あたり年間13万6000円の経済損失があり、日本全体では年間約1兆円の損失となる。
「オフィスにいても実力を十分に発揮できない状態を調べたところ、社会的時差ボケがある人ほどそれがひどかった。社会的時差ボケは“酒に酔っている状態”と同じ」(柳沢教授)
サラリーマンの場合とくに、休日に睡眠を多くとりたいという人は少なくないが、“早寝遅起き”で中央値をなるべく合わせる工夫が肝要だと柳沢教授はアドバイスする。
では最適な睡眠時間は何時間なのか。これは人によって異なるのだが、遺伝子で決まっているそうだ。これを知る実験方法がある。まず、4日連続で眠りたいだけ眠る。すると、初日はかなり長く眠れる。10時間以上眠れるかもしれない。
しかし、2日目は初日ほど眠れなくなる。そして、3日目と4日目の睡眠時間はさらに短くなるだろう。3、4日目の睡眠時間こそが最適な時間だそうだ。柳沢教授によれば、ほとんどの人は思っていたよりも長いという。
経済協力開発機構(OECD)の2021年発表によれば、日本人の平均睡眠時間は7時間22分で、先進国を中心とした33か国の中で最も短い。厚生労働省は医療機関の診療科名に「睡眠障害科」を追加する方向で検討しているといい、睡眠不足や睡眠障害はもはや日本人の“国民病”なのかもしれない。
文/横山渉 内外タイムス






