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【福田淳の対談闊歩】齋藤健(第1回)「将来、首相になる」と田原総一朗も注目する体育会系代議士 野球少年が東大ハンドボール部の再建へ

農林水産大臣、法務大臣、経済産業大臣などを歴任し、自民党の衆議院議員として7期を迎えた齋藤健氏。10月5日から始まった臨時国会では衆議院議員予算委員長に任命され、重責を担う。だが、これまで順風満帆ではなかった。キャリア官僚から政治家に転身を試みるが、初出馬で落選。長い浪人生活を強いられた苦労人だ。全4回で政権への評価や日本のメディアのあり方、そして成長産業のエンタメコンテンツへの期待まで、“体育会系代議士”の半生をひも解く。

福田 実は私、田原総一朗さんの「遺言」という番組をプロデュースしておりまして、田原さんいわく「将来、齋藤さんが首相になる」とおっしゃっていて。そこで、ぜひ話を聞いておかなければと、今回、お時間を頂戴しました。

齋藤 それは恐縮です。ありがとうございます。

福田 新宿の写真屋さんのご長男として生まれたそうですね。幼少期から政治家になろうと考えていたんですか?

齋藤 政治なんて全く考えてなかったですね。小さい頃からテレビが好きでよく見ていたんですが、国会議員というのはむしろ悪い人という感じで描かれていました。だから、特に関心がなかったです。

福田 そうなんですか。小さい頃は何になりたかったんですか?

齋藤 月並みなんですが、小さい頃は野球選手になりたかった。当時は王(貞治)、長嶋(茂雄)の時代で、サッカーもなかったし、野球しかなかった。だから野球選手になりたいと思っていました。

福田 僕は1965年の大阪生まれなので、阪神と阪急ですよ。確かに野球しかなかった時代ですよね。

齋藤 阪急、強かったね。

福田 阪急ブレーブス、強かったですよね。山田久志投手をまねて、よくアンダー・スローで投げていましたよね。齋藤先生ご自身は、東大ハンドボール部に行って、4部まで落ちたチームを1部にすべく奔走されたと。弱い組織を強くするコツってあったんですか?

齋藤 大学入学式の翌日にハンドボール部に入ったんですね。ハンドボールがやりたくてしかたがなくて。でも実際は、目の前でどんどん負けていって、すごく悔しい思いをしたんですね。当時、関東学生(ハンドボール連盟)は6部制だったんですが、いきなり3部から4部に目の前で落ちたんです。1年生ではありましたが、本当に悔しかった。

楽しむのか、強くなるのか、部員全員と決めたキャプテン時代

齋藤 それから3年の夏にキャプテンになったんです。その時に部員を全員集めて、「強くなるためにやるのか、そこそこ楽しんでやるのか、どちらか決めようじゃないか」って。

福田 すごいですね。そういう発想ってやっぱりリーダー格だったんですね。

齋藤 そしたらみんな、「強くなるためにやろう」ということになった。それまで週4日しか練習しなかったのを、週6日に。月曜日だけ休みにして、土日も練習した。それはもうみんなで決めたことだからね。それから、交流試合を増やした。あと、全日本のコーチに来てもらったりして。そういう新しいことをいっぱいやりました。

福田 大人の発想ですね。野球チームのオーナーみたいな。

齋藤 本当にね、寝ても覚めてもハンドボールのことしか考えてなかった。大学時代はハンドボール一色。のめり込んでいましたね。

福田 幼少期からリーダー的な気質はあったんですか?

齋藤 まあ、ガキ大将ではありましたよ。幼稚園の頃から柔道をやっていて体育会系だった。本当は中学校に入ったら野球部に入るつもりだったけれど、いろいろな経緯があって、勉強の方に行っちゃったんですよ。

福田 いや、勉強にも行けるってすごいことですよ。だけど、「みんな、どっちか決めようじゃないか」とか、すごいコーチを連れてきたりして、どうしてそういう発想が生まれてくるんですか?

齋藤 負けたくないってことですよね。目の前で(自分のチームが負けるのを)見てしまったから。それでやれるところまでやろうと思った。結局、1部までは行けなかったんだけど、1部との入れ替え戦までは行けた。

福田 ほんの数年で、すごいですね。

齋藤 だから、僕らの時代は(東大)史上最強と言っていいか分からないけど、相当強かったと思います。人もそろっていたしね。

福田 会社経営でも、よく「300年続く企業にしよう」って言われていますね。でも実際は、創業者のすごいリーダーがいて、そのテンションってなかなか続かないじゃないですか。熱狂を持続する方法ってあるんでしょうか?

犠牲にしたものを思い返せば、逆境から立ち直れる

齋藤 これは難しいね。世の中は移ろいやすい。一時期人気が出た政治家も、長続きさせるのは大変ですよ。安倍(晋三元)総理みたいにその都度、新しい提案、新しい政策を出すことによって、少し気分を変えたりしないと。

福田 ビジョンを追加して、アイデアを出すことによって、リーダーとしての熱狂を保つと。

齋藤 政治には特にそういう面があります。

福田 原点になっているのはハンドボール部の立て直しですよね。そういう時に「お前のやり方、違うよ」みたいに逆らう人間は現れないんですか?

齋藤 あんまりいなかったかな。人数もそんなに多くなかったから。練習は厳しかったけど、いい仲間だったし、本当に面白かった。

福田 その成功体験はその後の人生に影響を及ぼしましたか?

齋藤 いろいろ学びましたね。例えば、キャプテンとして一番怖かったのは、自分たちより少し弱いチームと戦う時。相手は一杯食わせてやろうと虎視眈々(こしたんたん)と狙っている。こっちは(気が)緩んでいる。その差で点数がひっくり返っちゃう。だから、弱いチームとやる時ほど、キャプテンが引き締めなければいけない。

福田 強いチームの時に引き締めるんじゃなくて?

齋藤 強いチームの時は、もうみんな「やってやろう」と気が引き締まっているから。どうやって緊張感を高めるかというのは、やっぱり練習を厳しくすることが大事。これだけ厳しい練習をしてきて、「俺たち多くのものを犠牲にしてきたよな」と。「たくさん犠牲にしてきたのに、こんなチームにやられていいのか」ってなると、弱いチームに苦戦した時でも立ち直るんですよ。

福田 なるほど。でも今うるさいじゃないですか。いろいろハラスメントだとか。なかなかそういう組織は作れないですよね。

齋藤 そうなんだろうね。私が大学でやったようなことを今やったら、アウトなんだろうな。

昭和だって笑われちゃうけど、ある程度厳しくしないと

福田 アウトの状態にしてしまうのもちょっと行き過ぎていてよくないですよね。

齋藤 でも、ある程度厳しくしないとね。

福田 だから今、働きたい人が働けない問題ってありますよね。

齋藤 中には「もっと注意してくれ、もっと怒ってくれ」っていう人もいるみたいだね。

福田 行き過ぎたコンプラっていうのは、何かを変えられるんでしょうか?

齋藤 この間、驚いたことがあったんだよね。私とハンドボールを一緒にやっていた男がいて、現役の監督なんだよね。いくつか大会が続くんだけれど、ある大会について「この大会は勝ちに行かないで調整にする」とキャプテンがその監督に言ったんだよね。

「調整をして次の大会にかけます」っていうことが、僕らの感覚ではあり得なくて。すべて全力。正直ちょっと驚いたね。

福田 現代っぽいですね。

齋藤 そう、現代っぽい。「メリハリつけてやるんです」って言われれば、しょうがないんだけれども。僕らの時にはそのような発想がなかったんで、驚いた。まあ、こう言うとさ、「昭和ですな」って笑われて終わっちゃうんだけどね。

福田 今の時代に昭和、本当に必要ですよね。現代は情報が多すぎるのかなって思いますけど。

齋藤 うん。だから今後さらに生成AIの時代になってくるともっと怖い。もう考えなくなりますよね。探すこともしない。

福田 AIが賢いからみんな考えなくなってしまう。例えば、新入社員は会社でAI使ったらダメにしたり。

齋藤 いいね。

福田 スマホ中毒になったり、そこでいじめられて自死したりするようなティーンがいるから、もっとスマホを規制してもいいのではと思うんですけど。

齋藤 僕もね、やっぱり子どもに対してはもう少し配慮すべきだと思います。現実と非現実の世界の境界が分かりづらくなってしまう。

【福田淳の対談闊歩】齋藤健(第2回)エリートキャリアを捨てて出馬した選挙でまさかの落選 生活費に困窮して妻は倒れ、子どもはいじめに遭う に続く。21日18時公開予定。

《プロフィール》
齋藤健(さいとう・けん)1959年東京都新宿区生まれ。1983年東京大学経済学部卒。卒業とともに通商産業省(現・経済産業省)に入省。1991年ハーバード大学大学院に留学。1994年通商政策局米州課で日米間の自動車交渉を担当。1999年に深谷隆司通商産業大臣の秘書官、2004年上田清司埼玉県知事の招聘を受け埼玉県副知事に就任。2006年衆議院千葉7区の補欠選挙で自由民主党の公募に応募、出馬するも落選。2009年衆議院議員総選挙の比例南関東ブロックで初当選。2017年第3次安倍第3次改造内閣で初入閣、農林水産大臣に就任。2023年経済産業大臣に就任。2026年2月の衆議院議員総選挙で7選。好きな作家は司馬遼太郎、塩野七生ほか多数。公式YouTubeチャンネル「さいとう犬」を配信中。

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