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「責任ある積極財政」が招いた円安のツケ 為替市場に試される高市政権の経済政策

円安の進行が止まらず、7月22日に1ドル163円をつけた。実に39年7カ月ぶりの安値水準だ。政府は21日の閣議で重要な政策の方針を決める「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」を発表した。これが市場から財政拡張的であると判断された可能性がある。

骨太の方針は、「『責任ある積極財政』元年 ~日本の挑戦を起動する!~」と銘打たれている。強い経済を実現するため、2040年度までに17分野でロードマップに基づく累計370兆円を超える官民投資を想定するというものだ。

高市政権は基礎的財政収支(プライマリーバランス)を複数年で管理し、一時的な悪化を許容する姿勢を示している。プライマリーバランスとは、国債の元利払いを除いた歳出を税収で賄えているかを示す指標。高市早苗首相が政治の師と仰ぐ安倍晋三元首相も重視したものだ。

ただし、プライマリーバランスには弱点がある。単年度の指標であるために投資規模が限定的になりがちなのだ。

例えば、高市政権が重視する戦略17分野の1つに量子コンピューティングがある。投資額は数百億円から千億円単位になることが予想されるが、産業利用初期段階で活用可能なレベルになるのは2030年ごろになる見込みだ。

フィジカルAIや空飛ぶ車、次世代船舶など、どれも実用可能なものになるまでに長い時間がかかる。単年度で投資効果を測ることは難しい。日本は中国に比べて政府主導の投資に対する厚みに欠けるが、単年度至上主義がそれを阻害していた面もあるだろう。

財務大臣は「適切に断固たる対応を行う」と市場をけん制

一方、財政規律が緩むという懸念があるのも事実だ。高市政権の経済政策は円安を招きやすい構造なのか?

高市政権が重視する指標が債務残高対GDP比だ。国や地方自治体の借金残高が、GDPの何倍に相当するのかを示す指標である。IMFによると、2020年に258.4%だった日本の債務残高対GDP比は2025年に229.6%に低下した。

インフレによって名目経済成長率が大きく伸びたことが要因だと見られている。

これはつまり、物価上昇が債務残高対GDP比を下げることを意味している。物価高はエネルギー価格や原材料、人件費など様々な要因によって引き起こされるが、主要因の1つが円安である。

日本はエネルギーの約9割、食料の約6割を輸入に頼っている。通貨が下がることで相対的な購買力が落ち、日用品や食料品の価格上昇につながっているのだ。

つまり、債務残高対GDP比を財政の健全性を測る指標とし、「責任ある積極財政」という名のもとで財政拡張路線を取ると、為替市場で円売りが加速しやすくなる。しかし、円安による物価上昇は債務残高対GDP比を低下させる要因になりうるというわけだ。一種の循環構造とも言える。

円安に歯止めをかける要因は主に2つ考えられる。1つは為替介入だ。片山さつき財務大臣は1ドル163円という約40年ぶりの円安進行を前に、「適切に断固たる対応を行う」と市場をけん制した。

もう1つは日銀の利上げだ。2026年6月の金融政策決定会合で0.25%の利上げを決定し、政策金利は1.0%となった。31年ぶりの高水準だ。しかし、物価上昇率は依然として高い水準にあり、さらなる利上げに踏み切るとの見方もある。

円安の進行と物価高で苦しめられるのは一般の人々だ。ここに利上げが加わるのであれば、住宅ローンなどの金利負担も重くなる。

「報道ステーション」(テレビ朝日)が7月に行った世論調査で、高市内閣の支持率は5月の調査から10.9ポイント落ちて49.2%となった。高市首相は早く経済成長に弾みをつけて賃金上昇を実現し、経済成長を実感してほしいと考えているはずだ。自らが主導する方針を、いかにして国民に納得させるかが問われている。

文/不破聡 内外タイムス

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