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国防費爆上げの地ならしか… 吉本を使ってまで安保を積極広報する、国の隠された意図とは

「くにおとたみよの政府広報」

つい「なんのこっちゃ」とツッコミたくなるが、政府は10月26日、国の施策をまとめているウェブサイト「政府広報オンライン」に、夫婦漫才のキャラクターが「安全保障」の重要性について発信する特集ページを開設した。

夫である「くにお」と妻の「たみよ」が関西弁の軽妙なやりとりを展開し、日常の生活と安保が密接に関連していることを訴える内容なのだが、SNS上では「政府の軍拡プロパガンダだ」「国策漫才か」などといった辛辣(しんらつ)な批判であふれかえっている。

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内容も内容なのだが、気になるのはこの特集ページの制作を含む一連の政府広報の業務を吉本興業が受託したことだ。

ここまで読まれた方で勘の良い方なら、おそらく現政権与党で、関西を地盤とする維新の存在に気づくはずだ。関西政界において圧倒的な勢力を要する維新と地元財界との結びつきは極めて強いと言われている。

例を挙げれば、2025年大阪・関西万博や関西を中心とする各種PR事業などに吉本興業のタレントやコンテンツが活用されたり、維新の吉村洋文代表などが在阪テレビ局の番組や吉本関連のコンテンツ・イベントに登場する機会が多く、「行政と企業間の癒着では?」との批判もある。

そういった意味で国民の側から「なにしてんねん」との総ツッコミが聞こえてきそうだが、ここではむしろ政府はなぜこのタイミングで国民向けに「安全保障」について広報するのか、ということに焦点を当てたい。

なお、確認の意味でこの政府広報オンラインを担当する内閣府政府広報室に「くにおとたみよの政府広報」について問い合わせたところ、業者の選定方法についてはこれまで通り「企画競争(プロポーザル方式)入札」に則り、「内容が良かったので吉本さんを選定した」と答えた。

ただ、実際の入札に吉本を含め何社参加したのかは「複数社」と答えるのみで、詳しい数字は答えられないとした。入札公示日は7月13日で締め切りは8月18日。「約1カ月間の募集期間が他の事業の入札募集期間と比べて短いのでは?」との問いには、「通常の期間」と回答。

事業を入札したい企業は所定の書類を期日までに提出する義務がある。今回は吉本を含む「複数社」が応募、書類審査を経て8月24日に各社がプレゼンを行い、第三者の有識者などの検討も踏まえたうえで、9月1日に吉本興業が選定されたのだという。入札価格はおよそ1億5千万円。すべて我々国民の血税である。

高市政権は広報戦略の強化を打ち出している。首相官邸の広報を担う内閣広報室は、2027年度予算の概算要求で、前年度の10倍となる72億円を計上し、内閣府の政府広報関係費も約80億円から約280億円へと増額要求している。

「くにおとたみよの政府広報」は今年度(2026年度)の事業であるため、2027年度に政府が要求する広報予算とは直接は関係ないが、今後の政府広報がより活発化するとの懸念も聞かれる。国民は今後の政府広報の動向と合わせて、吉本との関係についても引き続き注視するべきだろう。

今年中に改定する「三文書」とは… より先鋭化する防衛省の表現

では吉本の力を借りてまでして、なぜ政府は「安全保障」を国民向けに広報したいのか。

これについては前出の内閣府政府広報室は明言を避けたものの、すでに多くのメディアや関係者が指摘している。いわゆる政府が年末までに改定するとしている「三文書」の存在だ。

「三文書」と聞いてピンと来る人はほとんどいない。だからこそ政府が広報したいのだろうが、「三文書」について分かりやすく説明しているものとしては、防衛省の報道トップ・安居院公仁報道官が自らの公式Xに挙げている「なぜいま三文書改定?」を挙げたい。

三文書とは①国家安全保障戦略②国家防衛戦略③防衛力整備計画の3つの文書のことを指すが、安居院報道官はこれを分かりやすくこう言い換える。

「『何を目指すのか』『どう守るのか』『何を整備するのか』などが記された、日本の安全保障政策の政策を示すものです」

ざっとイメージをつかんだ上で朝日新聞を引用すると、

①国家安全保障戦略 今後10年程度を見すえた外交や防衛政策の基本方針

②国家防衛戦略        今後10年間の防衛力強化の目標

③防衛力整備計画     今後5年間で整備する戦闘機や護衛艦といった主な装備品や、必要な予算を定めたもの

となる。①→③にかけて内容がより具体的になると考えればイメージしやすいという。

この「三文書」を2026年中に改定すると決めたのは高市早苗首相なのだが、現行の「三文書」自体は2022年12月に閣議決定されたもので、実質まだ4年しか経っていない。なぜ、こんな急ごしらえで新しい「三文書」に書き換えたいのか。この回答について安居院報道官はこう言っている。

「現在の三文書を策定してから3年以上。 安全保障環境はさらに大きく変化しています。 だからこそ、いま、新しい時代に対応した『防衛の在り方』を考える必要があるのです」

「三文書」改定の目的については「紛争がおこる前に防ぐこと」だとし、平和と安定を守るためには「外交」が重要だが、「力強い外交を展開していく上で、裏付けとなる防衛力が必要だ」と明言。「国際社会の現実を見れば、防衛力の持つ、国の安全保障の最終的な担保としての機能を、他の手段で替えることはできません」とまで言い放っている。

ここで思い浮かべるのは憲法の前文である。

「日本国民は(中略)平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」

さらにこう続く。

「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる」と。

憲法99条はこう定めている。

「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」

戦後、最も厳しい環境になったのは、我が国を取り巻く安全保障だけではなく、我が国の言論環境ではないのか。

しれっと国民に“覚悟“求める文面 求められる国民の目

今年中に改定される「三文書」にはどんなことが書かれるのか。各メディアの報道合戦は過熱している。「原子力潜水艦」の導入や無人機、AI、長射程ミサイル、非核三原則の見直しなどが取り沙汰されている。

さらに衝撃的なニュースをロイター通信は伝える。政府・与党内で、2027年度から5年間の「防‌衛力整備計画」に必要な経費を70~80兆円とする案が浮上しているというのだ。これまで2023年度からの5年間で約43兆円を費やしていた額の1.8倍の規模だ。関係者は倍近くに増やした防衛費を「大規模なドローンの調達などに充て、さらな⁠る積​み増しも視野に、年末​に向けて政府・与党内で議論する必要がある」と語ったという。

防衛省は10月26日、ホームページ上で「三文書改定に向けた検討状況」を公表している。その中身は中国やロシア、北朝鮮の軍事的脅威をこれでもかと分析している。ただその中で最も注目したいのはこの一文である。

「国際社会における諸課題に対する米国の優先順位が変化する中、米国の同盟国・同志国が一層主体的に取り組まなければならない課題が生じ、果たすべき役割が変化することは不可避」

米国が「世界の警察官」の役割を担わなくなってきたので、同盟国の日本が一層インド太平洋地域の軍事的役割を担わないといけなくなりました。ひいては国民の皆さんもその自覚をもって、これからはそれ相応の負担をしないといけませんよ、という覚悟を国が明確に表明したともいえる。

そう考えると、今年中に改定される「三文書」の中身は我々国民にとっても他人事ではなくなる。吉本がつくった「くにおとたみよの政府広報」や安居院報道官の「なぜいま三文書改定?」など、国、政府がより力を入れている広報については、我々国民の側もより冷徹な目でその内容や意図について精査しなければならない時期に来ている。

文/寉見陽平 内外タイムス

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