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インド太平洋で主体的役割を担わされつつある自衛隊 九州・沖縄で増加する軍事演習

自衛隊と米軍の総勢約5万7千人が参加している「Keen Sword27(キーン・ソード27)」が19日から29日まで、九州・沖縄地域で行われている。1985(昭和60)年から2年に1度のペースで実施される演習で、今回は18回目。これまでで最も規模が大きいものになっている。

陸・海・空の3自衛隊が勢ぞろいし、米軍も太平洋を管轄する陸・海・空軍が参加。そのほか、オーストラリア軍、カナダ軍、フランス軍、ドイツ軍、オランダ軍、ニュージーランド軍、フィリピン軍も加わり、日米含め計9カ国が参加している。

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自衛隊制服組トップの内倉浩昭統合幕僚長は16日の会見で、演習について「先島諸島を含む島しょ部に、自衛隊および米軍のアセットを実際に機動展開し、指揮統制、部隊輸送、補給、共同対艦戦闘等の一連の活動を演練することは、日米双方の機動展開能力を向上させるとともに、即応性および相互運用性を高める上で大変意義がある」と述べた。

少しかみ砕いて言い直すと、自衛隊と米軍の持つ艦艇や航空機、車両など、作戦を遂行するうえで必要となる一連の装備品を、先島諸島を含む九州・沖縄地域の島々に展開させ、来るべき有事の際の手順などを演習するということだ。

今回の演習では、日本最西端の沖縄県・与那国島に、米軍の地対艦ミサイル「ネメシス」と短距離防空システム「マディス」が展開する。「ネメシス」は無人の車両から遠隔操作でミサイルを発射でき、「マディス」は電子妨害装置などを用いてドローン(無人機)などを無力化する装備品だ。

与那国島と台湾は約110キロしか離れていない。つまり「ネメシス」は間違いなく台湾を射程圏に収める。さらに、長崎と佐賀の県境にある大野原演習場には、3月に熊本県の健軍駐屯地に配備された長射程ミサイル「25式地対艦誘導弾」を初めて展開させる。朝日新聞によると、射程が1千キロ程度あり、中国の沿岸部や台湾周辺の海域に届くという。ただ演習では実射はせず、あくまで発射するまでの手順を確認するのみとなる。

また、米軍は沖縄県の石垣島にもウクライナが対ロシアで使用した高機動ロケット砲システム「ハイマース」を初めて配置する。

小泉進次郎防衛相は20日の会見で、演習の意義について記者から問われ、こう答えた。

 「今、これだけ厳しい安全保障環境の中で、これだけの規模と内容で日米で演習ができること自体が、日米同盟の強固さを表しており、アメリカの日本防衛への揺るぎないコミットメントだと考えています。この演習を通じて、日米の相互運用性を更に高め、抑止力・対処力の強化につなげていきたい」

統合幕僚監部のホームページを見ると、前回のキーン・ソード25の演習目的は「我が国防衛のため」となっているが、今回のキーン・ソード27のそれは「各種事態における日米共同対処」と目的が変わっている。自衛隊は憲法上の制約から、あくまで「専守防衛」が主任務だ。ただ、「米中対立」の主戦場となるインド太平洋地域、特に台湾有事の発生リスクが懸念されるなか、日本がこの地域で主体的に大規模演習を行うことには、いささか空恐ろしさを感じる。

ヘグセス米国防長官発言の呪縛

「西太平洋で有事に直面した場合においては、日本は前線に立つことになります。そのような状況になった場合、日米で互いを支え合う状況になります」

2025年3月30日、東京・市ヶ谷にある防衛省は厳戒態勢が敷かれていた。海外からの賓客や要人を迎え入れる儀式「儀仗」を行う儀仗広場には、満開の桜のなか、中谷元防衛相(当時)ら防衛省幹部らと共に、この日のために編成された「特別儀仗隊」が直立不動で静かに世界最強の軍のトップが来るのを待ち受けた。

2025年1月20日にトランプ政権が発足し、国防長官には元陸軍兵士でテレビニュースの司会を務めたピート・ヘグセス氏が就任した。これまで前バイデン政権で国防長官だったオースティン氏と中谷氏は互いに意思疎通を密に行い、安定した日米同盟を継承してきたように見えた。

ただ、トランプ氏は大統領就任前から、これまでのバイデン政権の政策を真っ向から否定した。なかでも安全保障政策については米軍の「世界の警察官」の役割を縮小させ、同盟・同志国にも応分の負担を求めるといった趣旨の発言を繰り返していた。

中国の勢いが増すインド太平洋地域で、米軍のプレゼンスが弱まることは日本にとっては最も避けなければならない。そういった意味で、2025年3月30日は今後の日米同盟を占う意味で、日本にとっては「試練の日」だったといえる。

当日、防衛省で行われた日米防衛相会談は約1時間半にわたって行われ、結果として懸念されていた米側からの防衛費の増額要求はなかったという。会談後の日米共同記者会見で記者からそのことを問われた中谷氏は、防衛力強化は「中身が大切」で「我が国自身の判断と責任において進めていくということが重要である」とヘグセス氏に伝えたとし、これについては米側から理解が得られ、また「特定の数字については、本日の会談において出ておりません」と強調した。

この中谷氏の回答の直前にヘグセス氏が発言した声明が冒頭のものである。内容を見ても、日本にも有事の際の覚悟を求めるかのような、かなり踏み込んだものだったといえる。

さらにヘグセス氏は続けてこう発言した。

「日本での適切な部隊態勢や一時的もしくは常設的に適した能力を前方展開する必要がある。これは、例として南西諸島を含む第一列島線でのアクセスを拡大し、重要エリアで共に演練することが含まれます」

ヘグセス氏がいう「第一列島線」について日経新聞によると、中国が勢力圏を確保するため、海洋上に独自に設定した軍事的防衛ラインの一つ。九州沖から沖縄、台湾、フィリピンを結んで南シナ海に至り、中国が台湾有事を想定し、米軍の侵入を防ぐ自国防衛の最低ラインとしているものだ。

防衛省・自衛隊が南西地域の防衛態勢を強化しているのも、この地域の中国軍の動向が激しくなっているからで、すでに中国はその先の小笠原諸島やグアムを経由したパプアニューギニアに至る防衛ラインまでの「第二列島線」を設定している。

この第一列島線上にある九州・沖縄地域の訓練で、今回自衛隊と米軍が総力を挙げて行っているのが「キーン・ソード27」なのだ。

そう考えると、ヘグセス氏のあの言葉は、より鮮明でより具体性を帯びたものになってきていると考えても不思議ではない。

文/寉見陽平 内外タイムス

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