拉致問題解決、トランプ氏頼みだけでいいのか…小泉元首相を見習うべき
先日、高市早苗首相は拉致被害者家族らと首相官邸で面会した際、トランプ大統領から拉致問題に対する強い支持を確約してもらったと説明した。「私の代で突破口を開く決意で臨む」と強調したという。
トランプ大統領はたびたび、北朝鮮の金正恩総書記と年内に会談する意向を表明している。高市首相は、米朝首脳会談が行われた場合、金総書記に日朝首脳会談に応じるようトランプ氏に働きかけを依頼している。
邦人保護すなわち拉致問題の解決は保守政権にとって一丁目一番地のテーマだ。もし、トランプ氏の口添えが拉致問題解決の突破口になれば、それは日本人誰しもが思い描く最速のシナリオだ。しかし、そう簡単ではなさそうだ。
中国「中連部長」が訪朝か トランプ訪中で動き出す中朝外交、金正恩との米朝会談を仲介も
第1次トランプ政権で国家安全保障問題を担当したジョン・ボルトン元大統領補佐官に新潟日報が単独インタビューし、その内容を報じている。シンガポールなどで行われた過去3回の米朝会談でトランプ氏は3回とも拉致問題を取り上げたと明らかにした。トランプ氏は「この問題について率直であるべきだ。何が起きたのかを家族に伝え、償うべきだ」という趣旨のことを伝えたという。しかし、北朝鮮から前向きな反応はなく、ボルトン氏は「石壁のようだった」と振り返った。
SNSにも高市首相の他人任せの外交に懐疑的な声が広がっている。
《他国に頼るしか出来ないのか、本当に情けなく頼りがいのない高市首相だ、一国のリーダーとしてはいかがなものか、国際裁判所の件でも同様だ。自国のリーダーに頼るより、金総書記やプーチン大統領、また習近平さんに頼む方が可能性としては期待できるのではないかな》
《米中首脳が過去同盟国だったと発言した2度に渡る短い時間での日米首脳会談で、拉致問題の踏み込んだ議論がされた可能性は低い。そもそも「詳細は差し控える」と発言していた総理が、昨日になり、拉致問題の詳細を話すこと自体、簗大臣の件のすりかえとしか思えない。小泉元首相の時の訪朝は、秘書官とともに何度にも渡る水面下交渉の賜物だった。高市総理の悪い癖である口の軽さが表面に出過ぎている》
田中均氏「直接意思疎通できる継続的な対話枠組み必要」
これまで、北朝鮮に拉致問題の存在を認めさせ、拉致被害者5人とその家族を取り戻したのは小泉純一郎元首相だけである。2002年9月に第1回日朝首脳会談(小泉元首相の訪朝)が行われた。その実現のために、日本側と水面下で極秘交渉を行った北朝鮮側の秘密交渉担当者は「ミスターX」と呼ばれ、田中均・外務省アジア大洋州局長(当時)との間で、約1年間で30回以上に及ぶ非公式協議を行った。水面下で交渉を進める際には極秘ルートを使う。この時は、北の秘密警察・国家安全保衛部とのパイプがあった。
横田めぐみさんの両親である横田滋さんと早紀江さん夫妻は、2014年3月、孫娘であるキム・ウンギョンさん一家と初めて対面することができた。そのための交渉にゴーサインを出したのは、高市首相が師と仰ぐ安倍晋三元首相だ。
外務省が通常、国交のない北朝鮮側とやりとりする際は、中国・北京の大使館ルートを通じて行う。北の核実験や弾道ミサイル発射に対する抗議は、この連絡方法を使っている。
田中氏は、単に強硬な非難や要求を繰り返すだけでは停滞を破ることはできないとし、相手側の権力者や権限を持つ人物と直接意思疎通できる継続的な対話枠組みが必要であると訴えている。そのうえで、東京と平壌に互いの連絡事務所を設置し、現地での共同調査や常時協議を行える環境(パイプ)を作ることを提言している。
ロシアのウクライナ侵攻以降はロシアとの友好関係を強める北朝鮮だが、北に対して伝統的な影響力を持つのは中国だ。日中関係を冷え込ませたままで関係改善を模索しない高市政権の頼みの綱がトランプ大統領だけというのでは、あまりに外交無策である。
文/横山渉 内外タイムス






