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韓国出版界を揺るがす「サジェギ」…170万部作家に自著1631冊の買い占め疑惑 日本にも共通する「ランキング依存」の落とし穴

韓国出版界で、ベストセラーランキングを人為的に押し上げる「サジェギ」と呼ばれる書籍の買い占めが、再び問題になっている。

韓国で170万部を超えるベストセラー「言語の温度」で知られる作家イ・ギジュ氏が、近著の販売順位を上げるため、出版社代表と共謀して1631冊を不当に購入したとして、出版文化産業振興法違反の罪で在宅起訴された。検察によると、購入された本が実際のランキングを押し上げる結果にもつながったという。

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問題となったのは、2024年1月に刊行された著書「普遍の単語」だ。同年上半期には、韓国最大手書店の一つである教保文庫の販売ランキングで12位に入った。

検察によると、イ氏は2024年3月から7月まで、知り合いの出版社代表に資金を渡し、全国の書店約300店を回って同書を購入させた。購入した1631冊は、この期間の総販売部数1万1135冊の約15%に相当していた。

その結果、教保文庫の分野別の週間ベストセラーでは、3~4位圏から2~3位圏へ順位が上昇したという。

検察によると、購入を担当した出版社代表は、発覚を避けるため、店員が交代するタイミングを狙って追加購入した。また、同一会員による同じ書籍の複数購入がランキング集計上1冊として扱われる仕組みの抜け穴を利用し、非会員として購入を繰り返す方法も使ったとされる。

検察は、通常の広告費をかけるよりもベストセラー順位を引き上げた方が大きな宣伝効果を得られると考え、購入したとみている。

ランキングが作り出す「売れている本」

ベストセラーランキングは、読者が本を選ぶ際の重要な判断材料となっている。

それだけに実際の需要とは異なる販売実績を人為的に作れば、読者の選択だけでなく、他の作家や出版社の販売にも悪影響を与える。

このため韓国では、販売部数を増やす目的で著者や出版社などが自著を不当に購入したり、他人に購入させたりする行為が法律で禁止されている。

書籍の買い占めをめぐっては、以前から疑惑が相次いでいた。政府系機関の韓国出版文化産業振興院は、出版物の不正流通や買い占めに関する申告を受け付けているが、2023年から2026年までに、書籍の買い占め疑惑は計11件に上っていた。

ランキングは、わずかな販売数の違いでも順位が動くことがある。出版業界では、週間ランキングの場合、総合順位なら100~200冊程度、分野別なら10~20冊程度の販売量の差でも順位が変動する場合があると言われている。

このため、出版社や著者にとってランキングは単なる販売実績ではなく、宣伝効果を左右する重要な指標だ。

今回の事件は、共謀したとされる出版社代表が関連事実を申告したことで、たまたま表面化した。ある出版業界関係者は、書店を回って自著を集中購入する手法は「昔ながらの方法」と指摘する。他にも出版社が社員に現金や商品券を渡して、自社の本を買わせ、外観をきれいにした後、自社の倉庫に入れて新品として売ったり、ひそかに中古本市場に流すこともあるという。

背景にある深刻な読書離れ

事件の背景には、韓国の読書市場を取り巻く厳しい環境もある。

韓国文化体育観光省の2025年国民読書実態調査によると、成人の年間総合読書率は38.5%だった。2023年調査の43.0%から4.5ポイント低下している。

ランキングを利用した販売戦略は、韓国だけの問題ではない。

日本でも、オンライン書店では販売カテゴリーが細分化され、比較的少ない販売数でも「カテゴリー1位」などの表示を得られる。出版社はこうした実績を広告や書籍の帯などで紹介すれば、読者に「売れている本」という印象を与えることができる。

一方、日本でも文化庁の2023年度「国語に関する世論調査」では、1カ月に1冊も本を読まない人が62.6%に達した。読書人口が縮小する中で、「本選びに失敗したくない」「時間を有効に使いたい」という読者がランキングに過度に依存している。

「売れている本」という雰囲気を作り出し、限られた読者を奪い合う構造は、日韓両国に共通する根深い課題といえる。

文/五味洋治 内外タイムス

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