揺れるソニー生命…元社員が「外資由来の営業文化が不正の温床」と指摘、4つの構造的問題とは
金融庁がソニー生命に対して立ち入り検査を検討していることが報じられた。
きっかけは今年1月、同社の元営業社員や専属代理店の保険募集人が顧客の金銭を不正に扱っていたと発表されたことだ。その後も社員による不正事案が次々と明るみに出て、直近では9月11日に元社員2人が顧客から金銭を詐取していた事実を公表。千葉県や兵庫県の支社所属の元営業社員2人が6人の顧客から約2190万円の金銭を詐取していた。同社はこれまでの調査で、保険業務に関する金銭詐取に関わった社員は計4人、被害総額は約5640万円にのぼることを明らかにしている。
ただ、同社の営業社員をめぐる不正事案はこれ以外にも多くのメディアで報道されており、顧客に投資話などを持ちかけ約1億円を受け取ったケースや、なかには顧客らに架空のもうけ話を持ちかけ、約22億円を借り入れたりしていた社員がいたことなども分かっている。同社は現在、全契約者約280万人を対象に確認作業を進めており、11月末ごろまでの作業完了を見込んでいるという。
ソニー生命の一連の不祥事は、同じ1月に発覚したプルデンシャル生命による巨額の金銭不正受領問題と構図が似ている。今回、内外タイムスは秘密裡に元ソニー生命の営業社員I氏と接触。同社など外資系の生命保険会社に共通する「不正を生みやすい4つの要因」について解説してくれた(ソニー生命はもともとプルデンシャル生命との合弁会社だったが、その後解消。現在は外資ではない)。
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裁量の大きいライフプランナー制度
I氏によると「一連の不正は一部の有能な社員が引き起こした特別なものではない」と断言する。不正が生まれる要因としては「『制度設計』『雇用形態』『採用構造』『現場統治』の4つの歯車がかみ合ってしまった結果、起きやすくなる」という。
外資の生保に共通するのが「ライフプランナー制度」だ。国内生保の営業とは違い、「ライフプランナー」が顧客のライフプランを細かく精査し、万が一プランが計画通りにいかない場合は足りない分を生命保険で補うという制度設計になっている。さらに「金融商品を複合的に組み合わせたオーダーメード提案ができることも強み」であるため、営業社員に与えられた裁量は俄然(がぜん)大きくなる。
営業社員も最初は友人や親族など個人的人脈に頼りがちだが、仕事に慣れてくると自宅や喫茶店など第3者の目が届きにくい場所で顧客と会う機会が多くなる。
裁量が大きいからこそ、「必要な補償額を意図的に大きく見積もったり、『保険以外の株や投資などでも補える』などと言葉巧みに顧客を誘導することも簡単にできるという意味で、プランニングの自由度の高さが不正を生みやすくする」とI氏は指摘する。
「生保レディーとは違う」というプライド
さらに2つ目の要素としてI氏が挙げるのが「雇用形態」だ。ソニー生命は親会社であるソニーの創業者・盛田昭夫氏が社員に求めてきた「アントレプレナー精神(起業家精神)」というものがある。
いわゆる国内生保特有の「生保レディー」とは一線を画す集団をつくろうとした独特の文化が根強いため、「ソニーもプルデンシャルの営業社員も『生保レディ-とは違う』というプライドが高く、非常に見えを張る文化が強い。特に『我々は売れている営業マンだ』という見た目重視な傾向のため、入社後に数十万円もするオーダースーツを作らされたり、鞄や靴などもそろえさせられるなど、かなりの出費を強いられる」とI氏は外資生保特有の社風についても強調する。
外資生保の営業社員の雇用環境は過酷を極める。実態は正社員でありながら「個人事業主」という面が強く、会社貸与のパソコン代やコピー代、名刺代に至る備品のほとんどが自腹で確定申告も自分で行う。
基本的に「フルコミッション」で、毎週月曜に行われる「朝会」では全員の前で自分の契約件数と金額を発表させられる。成績が悪いとその場で叱責され、報酬もどんどん減っていき、一定期間実績が出ないと解雇される恐れもあるという。
「経済的な危機感を覚えやすく、契約金額や契約数というプレッシャーに常にさらされるため、不正に走る社員が生まれやすい環境だ」とI氏は指摘する。
ヘッドハンティング中心の採用
また、外資生保特有の「採用構造」についてもI氏は苦言を呈す。ソニー生命もプルデンシャル生命も営業社員の採用は基本ヘッドハンティングが中心だ。
しかし採用活動を行うマネジャーの立場にある人の多くは「”売れなくなったライフプランナー”」であることが多く、彼らは保険を売る代わりに採用ノルマが課せられているという。
「(営業社員の)採用人数の実績が自分の収入になるため、本来はライフプランナーに向いてない人まで採用してしまう恐れがある。そのため倫理観の低い人材が入り込みやすい構図にもなっている」
支社・支店によって全く違う風土
さらに「ガバナンス」の問題もある。ソニー生命ほど規模の大きい会社だと、全国の支社・支店によって風土が全く違うことが多いという。
「体育会系のノリでとにかく数を売る支社・支店もあれば、本部の理念通り規律を重視する支社・支店もある。特定の支社・支店に不正が偏りやすいという意味で、企業ガバナンスが効きづらいことも不正が起きやすい要因の一つだ」と語る。
金融庁も指摘するように、一連の不正は特定の支社・支店や時期に限ったことではなく、複数支社・支店、複数年にまたがる構造的な事象であって、I氏はソニー生命などで繰り返される不正の根本的な構造的要因に「外資由来の営業文化」を挙げる。
「日本特有の『顧客と担当者の個人的信頼を重んじる商習慣』に、外資生保が採用してきた成果主義に基づく『完全歩合・個人裁量型の営業モデル』が持ち込まれると、むしろ、その信頼こそが不正の温床になりかねないという皮肉な構図が生まれる」
しかもI氏いわく、こうした構図は生保業界だけに限らないという。「証券・資産運用や不動産の売買・賃貸仲介、冠婚葬祭の営業などから、最近ではネットワークビジネスに至るまで、多くの業種で同じような不正行為が散見される」と警鐘を鳴らしている。






