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元鷹エース・武田翔太の挑戦(第2回)韓国で苦しむ「野球の違い」 KBOの壁を越える“ハイブリッド”への進化

福岡ソフトバンクホークスを離れ、韓国プロ野球(KBO)に新設されたアジア枠でSSGランダースの一員となった武田翔太投手(33)は家族に支えられ、異国の生活にすっかりなじんでいる。しかし、本業であるマウンドではシビアな現実が待ち受けていた。

逆襲へ。2度の右肘手術を経て、いま取り組んでいるのは「ハイブリッド型」の進化だ。元日本代表右腕の本音に迫る第2回をお届けする。

元鷹エース・武田翔太の挑戦(第1回)「戦力外」から韓国へ渡った33歳 異国の地でもがく“再起への道”

「武田には期待していた」 韓国ファンが感じたまさかの不振

こんなはずじゃなかった。

武田を訪ねる前日の4日、私は仁川(インチョン)の「SSGランダースフィールド」(文鶴球場)でSSGと斗山ベアーズのナイターを観戦した。試合前には旧知の間柄でもある斗山の後藤孝志打撃コーチにあいさつ。SSGの芹沢裕二バッテリーコーチの姿も見かけた。

もちろん、日本から飛行機を予約した際は、武田の勇姿を見届けるつもりだったのは言うまでもない。しかし、8月下旬に1軍登録を抹消された背番号23の姿は、そこにはなかった。

その帰り道、今の武田を取り巻くシビアな現実を、期せずして現地のファンから突きつけられることになる。乗車した地下鉄の車内で、たまたま隣に座った熱心なランダースファンのマダムと話す機会があった。

「きょうの先発投手、素晴らしかったね」

しばし野球談議で盛り上がった後、私が「明日、武田投手に会いに行くんですよ」と切り出すと、マダムは「エッ」と驚き、にわかに表情を曇らせた。

「武田投手にはかなり期待していたんです。それなのに…残念」

日本での輝かしい実績を知るからこそ、韓国のファンも戸惑いを隠せない。これが武田なのか。KBOの洗礼を浴び、開幕から3連敗するなど2勝10敗、防御率7.77という信じられない数字が並ぶ。

不振の原因は何だったのか。武田はごまかすことなく静かに切り出した。

「やっぱり、野球の違い。そこに順応できていない。正直、いまでも悩んでいます。日本には日本の、韓国には韓国の、アメリカにはアメリカの野球があるっていう、シンプルな問題だと思う。とにかく、こっちの打者はめっちゃ振ってくる。それも体が崩れずに強いスイングをする。日本の打者とはタイプが違う。1番から6番までは一発がある。“打高投低”と言われるのがよく分かります」

では、ストライクゾーンや、世界に先駆けて導入されたロボット審判(ABS:自動ボール判定システム)への対応はどうか。

「ストライクゾーンは狭いですね。日本の感覚で言ったら1ミリでも外れていたらボール。ただ、逆のパターンもあるので、試合の中でそこを確認しながら投げてます」

機械が瞬時に判定を下す最先端のシステムに、まだ慣れていないことが投球リズムに影を落としているのかもしれない。となると必要なのは、打者の特性を逆手に取るような配球や投球術なのか、それとも圧倒的な球威なのか。

「抑えるには、エグい落ち球を持っているか、速い球。そうじゃない場合は追い込むまではいいけど、決め球がないと苦しいです。ゴロを打たせるようなピッチャーでは、打球が速いし、ヒットになる」

武田と言えば、縦に割れるカーブが代名詞だ。2014年の日本シリーズ第2戦。阪神ファンはあの絶望感を忘れない。しかし、かつての魔球も現時点では通用していない。

「とにかく、こっちの打者は筋肉量が豊富でパワーがすごい。それで2ストライクからでもバンバン振ってくる。カーブは早いカウントなら有効だけど、追い込んでからだと、こっちはABSだからベース上でワンバンするような低めの際どい球は(ボールになるから)振らない。それに日本と違って、見逃し三振は仕方ないという文化。追い込まれたから当てようというのはないんです」

球速アップへ体重100キロに 武田が挑む新たな投球スタイル

ここからは、ちょっとした投手論、打撃論の掛け合いとなった。私が韓国野球の打者に対して抱いていた「インパクトが前にあるような気がして、チェンジアップに大空振りする打者が目立つ」という印象をぶつけてみたところ、彼の口から意外な言葉が返ってきた。

「むしろ、僕の感覚ではこっちの打者は常に真っ直ぐを待っていて、それでも振り遅れているんです。最初は『変化球を待っているから真っ直ぐに差し込まれているんだろう』と思っていた。でも、そうじゃない。味方の打者に聞いてみると、振り遅れていたときでも『真っ直ぐを待っていた』と言うんです。そこで追い込んで変化球を投げると、たまたまタイミングがパチンと合ってホームランを打たれる。日本の投手が苦労しているのはそこなんです」

試行錯誤の末、武田が行き着いた答えは明確だった。かわす技術ではなく、球速を上げることだ。

「見ていると153、4キロを投げるピッチャーになると抑えられている。球速は大事。やっぱり、三振を取れるピッチャーがいい」

そのために武田は今、トレーニングコーチと相談しながら体幹強化に取り組み、出力を引き上げるために体重を100キロに増量中だという。

もちろん、1軍で投げるための準備をしつつ、頭の中にあるのは「球速を上げること」。後半戦に入ってからは、来季を見据えて体を大きくすることに注力し、現在は91キロ。「がちがちのトレーニングをやっている」という言葉通り、この日は投球練習はせず、ひたすらウエートトレーニングに時間を費やしていた。かつてのしなやかな右腕は、いま、一回りも二回りも太い肉体へと生まれ変わろうとしている。

「正直、昔に戻るのは無理。いまは別のスタイルでやっています。いいとこ取りのハイブリッドを目指しているんですよ。それは…」

(第3回に続く)

文/山本智行 内外タイムス編集部

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