芸能事務所の倒産が急増…実力ある若手に事務所は不要、テレビ頼みの事務所は淘汰へ
帝国データバンクによると、今年に入って芸能事務所の倒産件数が急増し、8月時点で早くも年間最多記録を更新した。今年1~8月に判明した芸能事務所の倒産は16件で、これまで最多だった2016年通年の15件を上回った。このペースが続けば、通年で初となる20件台に達する見込みだ。
お笑いの東貴博(Take2)やタレントのはしのえみなどが過去に所属していた佐藤企画や、俳優の布施博が代表を務めていた馬力屋の破産が明らかとなった。
この業界はもともと中小零細が多く、2020年以降の倒産73件を規模別にみると、約8割にあたる57件が資本金「1000万円未満」である。業歴別では設立「10年未満」での倒産が5割強にあたる40件を占め、独立間もない中小事務所の倒産も多かった。
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では、なぜ芸能事務所の倒産が急増しているのか。そこには業界を取り巻く環境の大きな変化がある。
まず、地上波テレビ番組の制作費削減や、Webコンテンツ・SNS案件への移行により、広告・出演料の単価下落が近年著しい。大手以外の中小事務所を中心に収益性が悪化している。公正取引委員会による独占禁止法上の指針・監視が強化されたことも大きい。以前のような「移籍に伴うペナルティーや干す行為」が困難になり、タレント側が独立しやすい環境になった。芸名が本名であるにもかかわらず、「商標権」を理由に事務所が使用禁止を求めるような独立上のゴタゴタも記憶に新しいが、第三者から見ればほとんど事務所の横暴、人権侵害にも見えた。
SNSやYouTubeなどのプラットフォームが普及したことで、タレント自身が発信・集客・案件獲得を行える環境が整った。事務所を介さず「個人事務所設立」や「フリーランス転身」を選ぶタレントが増え、従来型のマネジメント収益が大きく減少した。
そもそも、欧米には日本や韓国のような芸能事務所は存在しない。欧米の俳優やアーティストは基本的に、各人が「個人事業主」であり、メディア対応や案件獲得、ギャラの交渉などはエージェントや弁護士などを通じて行う。
タレントと事務所の契約形態には、マネジメント契約とエージェント契約があり、これまで日本ではほとんどが前者だった。専属が基本で、事務所が包括的に管理・育成・営業を行う。エージェント契約は、契約交渉や仕事の仲介のみを行う。非専属が可能で自由度が高い。この契約形態については、旧ジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)の一連の性加害騒動の中で広く知られることになった。
欧米に近くなってきた日本のエンタメ業界
芸能事務所は戦後、将来性のある新人タレントを発掘し、テレビやイベントなどへの登場機会を増やすことで成長を続けてきた。しかし、歌謡曲の歴史を見れば明らかだが、お世辞にも上手とは言えない歌手を大量にデビューさせ、“アイドル”として消費してきた。
ネット社会になってSNSやYouTubeを見れば、それこそプロより歌の上手な若者やダンサーが山のようにいることが誰にでもわかった。彼ら彼女らは本当の意味で実力があるので、芸能事務所は不要なのだ。また、仮に事務所のサポートを受けるにしても、エージェント契約だけで十分である。そういう意味では、日本のエンタメ業界も欧米に近くなったといえる。
さて、倒産しているのは、所属タレント数が少ない小規模な事務所や、特定の看板タレント数名に依存していた事務所だが、大手事務所は絶好調だ。その代表格が上場企業でもあるアミューズ。ミュージシャンから俳優、テレビタレントまで幅広いジャンルでトップクラスを多数抱えている。売り上げが700億円弱で、テレビCMやドラマの出演料はそのうち1割程度しかない。それに対して、ライブやイベントの収入(グッズ販売含む)は約63%を占める。そして、音楽・映像事業が約27%だ。
例えば、昨今は不倫などで干されるとテレビの収入はゼロになってしまうが、顧客であるファンから直接支払ってもらえる収入が大きいのは経営として心強い。収入源が多角化している事務所は今後も伸びていく可能性が高い。テレビに頼り切りの事務所は淘汰(とうた)されていくだろう。
文/横山渉 内外タイムス






