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中国の新型ロマンス詐欺(後編)「AI社長」に貢ぐ84歳の高齢女性も…孤独につけ込む悪徳商法

今回は前後編に分け、中国で数多く行われている最新のAI技術を使った詐欺を紹介している。

前編ではAIで作成した架空のお見合い相手を使った結婚詐欺を紹介した。後編となる今回は課金形式で金銭を絡めとる手法とAIを利用した悪徳商法を紹介する。

中国の新型ロマンス詐欺(前編)“理想の人”はAI生成の幻…でも成立しなかったのは「自分のせい」

出会い系アプリを使った課金詐欺

この詐欺の舞台となるのは出会い系アプリである。警察当局が摘発した詐欺グループは異なる2種類のアプリを用意していた。

一つはSNSなどで大々的に広告を打ち、一般ユーザーを引き込む集客用アプリである。このアプリの対象は男性となっており、登録後にチャットや音声通話、ビデオ通話を1回行うごとに、課金が必要な仕組みになっていた。

もう一つは、詐欺グループのサクラ要員が使う内部アプリである。こちらは女性アカウントとして機能し、1円も払うことなく無制限にチャットができる。つまり、画面上で展開される恋愛は、最初から一方通行で男性を搾取するモデルとして設計されていた。

アプリ内に並ぶ美女の顔写真は、その多くがAI生成によるものだ。さらにプロファイリングもテンプレート化されており、「バツイチ」「見返りのない真実の愛を求めている」といった設定がAIによって瞬時に付与される。

「実は同じ街に住んでいるんです」といった言葉を投げかけ、あたかもすぐに現実世界で会えるかのような期待を抱かせる。

そこから段階的な課金地獄が始まる。ビデオ通話をするには追加課金が必要となり、連絡先を交換するためには「親密度」というアプリ内の数値を上げなければならない。親密度を上げるには高額なバーチャルギフトを贈り続ける必要がある。

しかし、その数値は運営側の管理画面からいくらでも操作可能であり、あと一歩のところで永遠に達成できないように設定されている。

仮に無理やり親密度を規定値まで引き上げ、ビデオ通話に持ち込めたとしても、相手はカメラのレンズを手で塞ぎ、画面を真っ暗にしてこう告げる。

「プラットフォームの規制に引っかかって映像が映らない。解除するには別の有料ギフトが必要だ」

そうして金を吸い尽くされた果てに連絡先を手に入れても、音信不通なのは言うまでもない。

孤独な高齢者を狙うAI悪徳商法

AIを使った独居高齢者への悪徳商法も問題となっている。

ある84歳の高齢女性は、昨秋からショート動画に登場する「AI社長」のアカウントに熱中し、彼が経営するショップからペンダントや装飾品を次々と購入するようになった。他社の通販サイトで数百円程度で手に入る商品が、そこでは数千円から数万円で売られていた。

女性は1万元(約24万円)以上を費やし、さらには「あなたと結婚したい」と500字に及ぶ直筆のラブレターまで書いていた。

動画に登場する架空のキャラクターは、一様に高級スーツに身を包み、高齢女性に対して親しみを込めて「お姉さん」と呼びかける。日々の健康を気遣い、心にしみる人生訓を語りかけ、時には画面越しに膝をついて求婚するパフォーマンスを見せる。

こうした動画は5分あれば1本が完成し、一人の運用者が数十のアカウントを同時に走らせている。一つのアカウントがプラットフォームの規約違反で凍結されても、即座に次のアカウントが立ち上がる。

今やこの手口は「シルバー市場特化型」のビジネスとしてマニュアル化され、情報商材として高額で転売される産業チェーンと化している。

制作業者の証言によれば、AIを使えば動画やシナリオは全自動で生成され、一日の稼ぎは数千元をたたき出すことができるという。

家族が異変に気付き「それは本物の人間ではなく、AIで作られた偽物だ」と説得しても、高齢者は頑なに信じようとしない。ある母親は、娘から事実を突きつけられて一度は納得したものの、数日後には別のAI動画を見つめ、再び商品を購入していた。

高齢者たちも、心のどこかでは画面の向こうの不自然さに気付いているのかもしれない。しかし、現実の生活において、誰からも体調を気遣われず、心を割って話す相手もいない日々が長く続いた結果、画面の向こうの人物が本物か偽物かは問題ではなくなってしまう。彼らはただ、一日の中で誰かに優しく名前を呼ばれ、気にかけてもらえる瞬間を渇望しているのである。

虚構の技術と現実のきずな

AIによる婚活詐欺、疑似恋愛、そして高齢者を狙う悪徳商法。これらすべての根底にあるのは、人間が抱える孤独と、他者との親密な結びつきを求める心理の悪用である。

偽の恋人を仕立てて仲介料をだまし取る手口自体は、古くから存在していた。かつては生身の人間を雇うコストが参入障壁となっていたが、AIの急速な発展がその障壁を完全に破壊した。

今や悪意を持つ者は、一切のリソースをかけることなく、誰かの理想を100パーセント具現化した「AI恋人」を無限に生み出すことができる。

中国では急速なデジタル化が進んだ反面、現実世界における人間関係の希薄化もまた急速に加速した。そうした社会のひずみが生み落とした産物が、AIによる新型ロマンス詐欺である。こうした犯罪は、他者とのきずなが希薄化した社会の傷口を映し出しているといえよう。

文/下川英馬 内外タイムス

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