#52 中国の勝手な主張許すな 勝股秀通

中国の勝手な主張許すな 大学特任教授 勝股秀通

 中国海軍の駆逐艦は7月19日、日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)の南西に広がる排他的経済水域(EEZ)内で、機関銃による射撃訓練を強行した。

 海洋に関する国際的なルールである「国連海洋法条約」は、EEZ内における沿岸国の権益として、資源の探査や開発などを排他的に行う主権的権利と、様々な海洋調査を管轄できる許認可権を認めているが、外国軍による射撃訓練などの軍事活動については、一律禁止とはしていない。だがそれは「禁止」を明文化していないだけで、良識ある国家であれば、沿岸国への敵対行為である軍事活動は慎むはずだという性善説に依拠しているからだ。

 今回、中国は「共同パトロール」と称してロシア艦艇を引き連れ、日本のEEZに入った直後に射撃訓練を実施している。洋上に標的を浮かべ、それを狙い撃つ訓練を他国のEEZ内で実施しなければならない理由などない。つまり今回の行動は、中ロの連携を誇示するとともに、中国による明確な意図を持った日本に対する露骨な威嚇だということだ。

 明確な意図とは何か。ひとつは南シナ海の領有権を巡る中国の主張を全否定した同条約に基づく仲裁裁判所判決から10年を経た7月12日、日米英などが判決を改めて支持する共同声明を出したことに対する中国の意趣返しだ。
 と同時に、同条約は「島」と「岩」を区別する厳格な基準を示しており、①島とは自然に形成された陸地で、高潮時においても水面上にあるもの、②人間の居住または独自の経済的生活を維持することができない岩は、EEZを有しない――と規定している。

 中国はこの基準を逆手にとって、射撃訓練に懸念を示した政府に対し、「沖ノ鳥島は岩であって島ではない。日本の主張は国際法違反だ」との批判を展開した。これに対し木原稔官房長官は「沖ノ鳥島は日本が戦前から有効に支配しており、島としての地位は確立している」と述べている。毅然と反論するのは当然だが、政府はもっと中国の主張に危機感を強めなければならない。

 なぜなら、中国が沖ノ鳥島を「岩だ」と主張しはじめたのは20年以上前の2004年からで、当時も政府は「国際的に島として認知されている」と反論しただけだった。これに業を煮やした当時の石原慎太郎都知事は06年、「国が動かないのなら都がやる」との一声で、小笠原漁協に沖ノ鳥島まで出漁できる大型漁船の新造を支援し、同島の周囲に浮き漁礁を設置するなど経済活動の維持を図ってきた。

 中国の主張は、日本の領土(島)とは認めないということであり、中国の勝手な主張を放置せず、政府は島の領有を確固たるものとする具体的な手立てを講じる必要がある。

かつまた・ひでみち 1958年千葉県生まれ、青山学院大学卒。1983年に読売新聞社入社。東京本社社会部で東京地検などを担当後、93年から防衛省・自衛隊を担当。99年には民間人として初めて防衛大学校総合安全保障研究科(1期生)を修了。その後、防衛問題の専門記者として解説部長兼論説委員、編集委員など歴任。2016年から日本大学に移り、24年から現職。著書は『検証 危機の25年』『自衛隊、動く』など。その他「国防の盲点」を『WEDGE』誌で46回連載するなどオンラインを含め論考を随時発表。

関連記事一覧