【福田淳の対談闊歩】中川悠介(第2回)1年後にバズった「倍倍FIGHT!」 再度CANDY TUNEのMVを制作
打席を増やすこと――。ヒットを生み出す秘けつについて、中川氏はあえてこう語る。楽曲、MVは一度リリースしたら終わりではなく、”味変”してメディアやマーケットに再度アピールする。ファンや海外のSNSの反応に敏感に、素早く、愚直に対応し続ける。これがFRUITS ZIPPER、CUTIE STREET、CANDY TUNEの今日の人気につながっているようだ。
【福田淳の対談闊歩】中川悠介(第1回)きゃりーぱみゅぱみゅからFRUITS ZIPPERまで 時代のKAWAII(かわいい)を生み出してきたプロデュース論 から続く
福田 今日は昔話ばかりだと面白くないと思って、AIに質問を考えさせてみたんです。そうしたらすごくいいことを言ってきて。
2007年に原宿で青文字系カルチャーを始めて、きゃりー、新しい学校のリーダーズ、KAWAII LAB.と仕掛けてきました。時代のプラットフォームが大きく変わる中で、これだけは変えなかったというものと、逆に思い切り捨ててアップデートしたものを教えてください。
中川 ブロガー、インフルエンサー、インスタグラマー、YouTuber、TikTokerとかその時代を切り取る言葉ってあるじゃないですか。その言葉には左右されないぞって、ずっと思っていましたね。つまり、プラットフォームに依存するのではなくて、人に依存していこうと。
福田 素晴らしい。
中川 例えば、きゃりーで言うとアメブロで1位になりました、当時のTwitterで日本で1位になりましたという、プラットフォームをまたいでやってきていることは貴重だと思います。「原宿」って言葉だったり「KAWAII」だったり、時代時代でプラットフォームは変わるけど、人として変わらずにい続けるということは大事だなと。そこはブレずにやってきましたね。
福田 僕も全く同感。これはもう一発で納得。2番目の質問はKAWAII LAB.の“味変”の正体について。FRUITS ZIPPER、CUTIE STREET、CANDY TUNE、立て続けにヒットを生む中で、味変という言葉をよく使われていますね。楽曲、SNSグループ設計のどの段階で味を変える判断をされているのか。再現性のあるメソッドなのか、1回きりの勝負なのか?
中川 僕は味変という言葉をよく使っているんですけど、アルゴリズムが常に変わるので、伸びなくなってきたら、諦めずに味変してやっていこうと。やっぱりSNSも同じような道筋から来るから、ちょっと視点を変えて出すとか。例えば、曲は本人たちが踊っているものなのか、踊らずに別のものを作ったほうがよいのかとか、いつも考えています。
AIにヒットは出せない。人間の成功体験は邪魔なだけ

福田 これからはAIが出てきて、味変の先にものすごい変革が待っているという予兆はありません?
中川 AIでヒットは出ないと考えていて、あくまで僕たちみたいなクリエーターや作り手に対して、すごくいい意味でのサポーターがAIであるという認識です。AIに「ゼロイチ」はできない、自分たちがゼロイチで考えたものを「1→100」にすることはすごく早いなと思っています。
自分たちのヒットの方程式みたいなものがもしあるのだとするならば、「成功体験」が一番邪魔だと思っています。成功体験で同じケースは絶対ないから。だったらビジネス書を読んだら全員成功してしまいます。
福田 ダイエット本とかね。
中川 僕の味変の考え方にもつながるのですが、いろいろな場所で自分たちが変わっていかなければいけない。常に自分をアップデートしていくことが大切だなって。今日の質問の仕方もそうじゃないですか。AIで質問を考えてくること自体がエンターテインメントだし、この質問が合っているかどうかが分かるのは、クリエーターだからこそ。
福田 この対談の20分前に作った質問なんですよ。むっちゃいい質問を提案してきて、ちょっと韓国のバズのことがなかったから、その質問を足しました。
中川 なるほど。すごいですね。
福田 次の質問にいくと、TikTok時代のバズとカルチャーの関係。数十億再生という数字が独り歩きしがちですが、バズはあくまで入り口です。一瞬のバイラル(ウイルス性、口コミ)をファンダム(熱心なファンの集団)や長期的カルチャーへどう転換させるのか。バズらせにくい曲と、育てる曲の見極めはどこにありますか?
「私の一番かわいいところ」は正直分からなかった

中川 正直に言うと「私の一番かわいいところ」(FRUITS ZIPPER)は分からなかったですね。でも、これまでいっぱい出した曲の中で反応がよかったので、「これだ。MV作るぞ」となって、そこから始まっていったんです。
準備をしすぎないというか、世の中の反応に対してスピーディーに当てていく。あの「倍倍FIGHT!」(CANDY TUNE)もリリースしてから1年後にバズったんです。1年前に本人たちが「倍倍FIGHT!」で遊んでいる動画が真似しやすくて、みんなが遊び出したことがヒットにつながっていったんです。
福田 仕掛けてないの?
中川 バズったあとにもう1回MVを作った曲もあります。本来、あんまりそういうことはやらないのですが、打席を増やしたような感覚です。
福田 「これは売れなかった」では終わらないんだね。単品のヒットはいいけど、ライブラリーにもきちんと上がる仕掛けってあるんですか。それとも自然に上がってくる?
中川 やっぱりUGC(ユーザー生成コンテンツ)を伸ばしていきながら、次にストリーミングを伸ばしていく作業になってくると思うんです。それはもうとにかく…。
福田 行ったり来たり?
中川 行ったり来たりだと思うんです。
福田 それを絶え間なくやるって、大企業レーベルに勤めているマーケターのようで、なんか任務としてやっているじゃないですか。
中川 本人たちの頑張りが一番大きいと思っていて。本人たちがSNSに対して最も向き合っているから、そのパワーと合わさっている感じです。今活動しているグループやアイドルで、マーケティングに対してそこまで自覚的な人は少ないかも。本人たちが一番のトレンドメーカーだと思っています。
常にヒットを狙う。打席に立つ回数をどれだけ増やせるか
福田 僕はテック(テクノロジー)系をやっていて、ショート動画など、バズが効いているか、効いていないか、精緻にA/Bテストしていました。そういうのってどうなのかな。やっぱり感覚値でやってる?
中川 A/Bテストについては、もう毎日がリアルですね。投稿してみていい反応かどうか、これなら伸びそうだなと考えたり。だからこそ、よく言っているのは、タイアップがある場合に「力みすぎちゃいけないよ」って。「これはいける」って過信するとやっぱりスベる。そこは力入れずにやっていかないと。
福田 その力加減は難しいですよね。
中川 常にヒットを狙っていくっていうイメージです。三振じゃなくて、バントのみでも出塁するっていう。
福田 そうなんだ。そういう必死さはあるわけですね。
中川 めっちゃ必死にやっていますね。本当のヒットを出すため、どれだけ自分が打席を増やせるか。ヒットの打率は年々上がっていると思いますよ。
福田 それは19年もやっていたから。それとも、時代が合ったからなのか?
中川 自分たちが19年間立ち続けてやってきて、その中で得た感覚っていうのはすごく大きいですね。
福田 一人のオーナー社長でやっているからでしょうね。僕もね、おこがましいんですけど、最近は何やっても当たるんですよ。むっちゃ打率高くなってきて、どんなプロジェクトをやっても失敗しない。神感が出てきてね。それって絶対、失敗の数だなと思っているんです。
中川 僕も失敗の数には自信があります。
福田 経験こそAIを上回る貴重な部分なのかな。もう一つはサラリーマンじゃないってことも大きい。任務に終わりがないから。
中川 経験で言うと、「何でその現場に行くの?」ってよく聞かれるんです。もう、その質問がいらない。(現場に行くことが)当たり前だと思っているんで。僕は歌わないし、曲も書かない。だけどいろいろな現場に行くことは、そこでの出会いや刺激が自分のやる気につながる。それは実際に行かなければ得られないもので、イメージもできないものだと思っています。
【福田淳の対談闊歩】中川悠介(第3回)インドでCUTIE STREET、南米でリーダーズが人気上昇中 ライブパフォーマンスは国境を超えることを証明 に続く。6月25日18時公開

《プロフィール》
中川悠介(なかがわ・ゆうすけ)アソビシステム株式会社代表取締役。1981年東京生まれ。東洋大学経営学部卒業。大学時代に先輩とイベント運営会社を設立。イベント運営を経て、2007年アソビシステムを設立。原宿を拠点に地域と密着した独自のファッション・音楽・ライフスタイルを発信。2011年から自主イベント「HARAJUKU KAWAii!!」を全国各地で開催。きゃりーぱみゅぱみゅ、新しい学校のリーダーズを輩出、アイドルプロジェクト「KAWAII LAB.」のFRUITS ZIPPER、CUTIE STREET、CANDY TUNE、SWEET STEADYなど多数のアーティストやタレントをマネジメントする。


