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船井電機の前社長に2億円の賠償請求 「世界のFUNAI」が世間に見せつけた跡継ぎ問題の難しさ

民事再生法の適用申請が取り下げられ、破産手続きを進めている船井電機の破産管財人が、10日に開いた債権者集会で前社長の上田智一氏に約2億円の損害賠償を求めて提訴したことが明らかになった。

船井電機は2023年4月に脱毛サロンを運営する「ミュゼプラチナム」を買収したが、翌年に香港系の投資ファンドKOC・JAPANに売却していた。売却の際、上田氏の指示でゴルフスクールなどを経営する合同会社に約2億円を支払ったという。社内規則で定められた投融資審議会を経ることなく、独断で手続きを進めていたようだ。

合同会社と船井電機は契約書を交わしておらず、取引実績もなかった。この約2億円の支払いが船井電機の資金を不当に流出させたと判断し、提訴へと至った。

ミュゼの仲介に関する約2億円の支出は以前から取り沙汰されていた。上田氏の不当な資金流出疑惑はこれだけに留まらない。船井電機は2023年に医療法人を取得し、上田氏の妻が理事長に就任。上田氏は理事となった。このM&Aについても、アドバイザリー料などとして資金が外部に不当に流れた疑いがある。

そもそも、船井電機は2021年5月に出版社の秀和システムに買収された後、300億円以上が外部に流出したと言われている。破産管財人の手で調査が進み、少しずつ経営の実態が明らかになっているようだ。

最悪とも言える形で幕を閉じた「世界のFUNAI」だが、いったいなぜこのようなことになってしまったのか。背景には跡継ぎ問題をスムーズに解決できなかったことがある。

秀和システムは甘い言葉で船井電機の再建を持ち掛けたか

船井電機の創業者でカリスマ経営者とも言われた船井哲良氏が逝去したのは2017年7月だ。哲良氏を失ったタイミングは最悪のものだった。

液晶テレビは「地デジ特需」で2000年代前半から需要が急増。2009年に政府が「家電エコポイント」制度を始めて特需に拍車がかかった。しかし、2011年に制度が終了すると反動減が凄まじく、テレビの需要は急速に失われた。シャープがテレビの生産を抑制して「世界の亀山」ブランドを廃止したのが2012年だ。船井電機は2011年3月期に赤字に転落。4期連続の赤字となり、2015年3月期にわずかな利益を出したものの、翌期から3期連続の赤字となった。市況が急速に悪化し、経営難に襲われる中でカリスマ経営者を失ってしまったのだ。

哲良氏が保有していた37%の株を相続したのが長男の船井哲雄氏だ。しかし、哲雄氏は医師であり、当時は病院の院長も務めていた人物。家電事業の知見がなく、船井電機の経営に乗り出す意思も低かった。経営を担うに相応しい人物への持株の譲渡を望んだのだ。

投資ファンドなどと接触するなど、売却先を探していた。しかし、交渉がまとまることはなく、当時船井電機の顧問だった板東浩二氏に相談。板東氏は「ひかりTV」事業の創始者だ。板東氏は懇意だった上田氏を紹介し、哲雄氏と意気投合した。

最終的に船井電機は上田氏が代表を務めていた秀和システムに買収されることとなった。秀和システムは主にビジネス書を手がける出版社だ。中規模の出版社が船井電機を飲み込んだことで、このM&Aは大いに話題になった。

秀和システムが、船井電機を乗っ取って意図的に資金流出を企図していたのかどうかは定かではない。しかし、船井電機は最悪の結末を迎えてしまった。この問題で突き付けられるのは事業承継の難しさだ。

哲雄氏は投資ファンドなどに話を持ち掛けたが、合意は得られなかったと言われている。企業価値を高めるため、事業縮小による人員削減や不採算事業の切り離しは投資ファンドの得意技だ。痛みを伴う構造改革ではあるものの、再生へと導くケースも多い。このような提案を毛嫌いした可能性もある。

経営者の高齢化問題は日本のビジネス界の課題の一つだ。船井電機の教訓は、多くの企業の事業承継において参考になるだろう。

文/不破聡 内外タイムス

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