オンラインで研究成果を報告するOISTの佐藤教授(右上) =28日、動画から抜粋

表面海水でサンゴ特定 OIST、ダイバー目視と91%一致

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の佐藤矩行教授は28日、オンラインで、東京大学と共同で開発してきた「サンゴ環境DNA解析法」の成果報告を行った。表面海水1㍑に含まれる「環境DNA」から造礁サンゴを識別する新技術を県内62カ所で実施した調査で、ダイバーの目視確認と91%が一致する結果が得られ、有効性が確認できたという。海に潜ることなく、大規模かつ網羅的に造礁サンゴを調査する道が開けた。
 環境DNAとは、はく離した細胞や排泄物などで環境中に放出された生物由来のDNAのこと。例えば美ら海水族館の大水槽の海水には、飼育しているジンベエザメやマンタなどのDNAが含まれている。環境DNAを解析することで、そこに生息する生き物を特定したり、特定の種が生息しているか否かを判別したりすることが可能になる。
 サンゴの分類・生息調査は現在、熟練した専門家がスキューバダイビングやシュノーケルで直接観察して行っている。サンゴに関する知識や高度なダイビング技術などが求められるため、より広範囲かつ網羅的な調査方法の開発が待ち望まれていたという。
 佐藤教授らは沖縄本島近海の62地点で、目視と環境DNA法を組み合わせた実態調査を実施。うち41地点(67%)で目視確認との結果が一致、15地点(24%)でほぼ一致し、91%の割合で高精度な識別が行えることが確認できた。
 目視ではミドリイシなど大きく目立ちやすいものに確認が限られがちだが、環境DNA法ではより多くのサンゴを検知できる優位性もあるという。また、これまでは宮古が生息北限と考えられていたパラオクサビライシ属というサンゴのDNAが検出され、本島近海で報告されていない属が存在することが示唆された。
 佐藤教授は「これほどまでに高精度な結果が得られるとは想定しておらず、正直に驚いた」と述べた。識別がうまくいった理由として「サンゴは岩などに付着して動かないことと、多くの粘液を分泌するため環境DNAが多いことが考えられる」と説明。
 太平洋の小さな島々など、これまで目視調査が手薄だった地域への拡大などに取り組みたいという。論文は英国科学アカデミーの王立学会誌に掲載された。

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