
観光協会の真摯な対応を 補助金返還問題 「本来の使命に立ち返って」 本紙に現場から不信の声
県の「観光事業者継続・経営改善サポート事業」補助金返還問題で、同事業に参加した市内事業者がこのほど、本紙のインタビューに応じ、宮古島観光協会の説明不足と手続きの不備を相次いで指摘した。同協会が返還金全額を負担したが、同事業者は「実額に基づく収支開示と正式な謝罪が必要」と協会の真摯な姿勢と対応を求めた。
同事業は長引く新型コロナウイルス感染症や、原油価格・物価高騰の影響を大きく受けた県内の観光事業者を支援し、観光産業の回復を目指すことを目的に実施されたもの。
市では同協会がふるさと納税登録事業者を対象に取りまとめ、各事業者が作成した経営改善計画の審査を経て、コロナ禍の影響で赤字と認められた事業者は羽田空港内物産展への参加とオープンデータ化の「200万円枠」、それ以外の事業者はオープンデータ化と物産展には商品を送るのみの「20万円枠」で支援を受ける仕組みだった。当時協会は「自己負担はない」と説明し、多くの事業者が参加を決めたという。
そのうち、取材に応じた事業者は赤字認定を受け、2023年1月に羽田空港での物産展に「200万円枠」として参加。事業終了後の2月、同協会は事業者らに同月末までの委託料の支払いを要求した。当初の説明とは全く異なるため、協会は「立て替える」と装いながら実際は貸付形式を取り、領収書を事業者に示さないまま県に虚偽の実績を報告していたことも判明した。
事業者は結果的にコロナ禍でダメージを受けた事業者をさらに追い詰める行為だったと述懐し、「参加をやめられない状況で、立て替えに同意せざるを得なかった」「開始時点で負担説明があれば参加しなかった事業者は多い」と振り返った。
収支面については、協会から提示された資料に複数版が存在し「総額1292万余とするものと、県に提出したとされる1425万余の資料があり、100万円超の差がある」と指摘「委託料の設定も途中で変更された形跡がある。実費に基づく正確な最終収支を出すべきだ」と不信感をあらわにした。
物産展の成果についても「売上は100万円に届かず、費用対効果は低かった」とし、PR不足を指摘。人件費計上でも「事業者側アルバイト分は対象外で、協会分のみ多額計上された」と不公平感を示した。オープンデータ化(20万円×15社=300万円)についても「協会への委託と説明されていたが、実際は外部事業者である『エクトラ』に委託され、支払いがあった事実が決算書で判明した」と経緯の不透明さを問題視した。
一方で協会については「本来、観光協会は地域の事業者を支えるために存在していると信じている。だからこそ、却って事業者の負担や赤字を生むような形になってしまったことは、本来の役割とは違うのではないか。協会には、本来の使命に立ち返り、より事業者の方々に寄り添った組織になってほしい」と強調した。
その上で「なぜ当初、支払いの件が伝えられなかったのか、委託を隠していたのか、その理由は本人でなければ説明できない。説明の場には事務局長が出席し、当事者として対応をすべきだ」と求めた。
同協会はすでに返還金全額を負担し、積立金や長期借入で充当。決算では特別損失として計上し、専務理事の報酬減額や事務局長の停職処分を決定。今後は内部調査やチェック体制の強化を進める方針だが、現場からは「透明性の確保こそ信頼回復の第一歩」との声が高まっている。