社説 農業委員選考の正当性調査③

 市と農業委員会で主張対立する農業委員候補者の「評価・選考」権限は、調査特別委員会の依頼に応じた県農業会議の回答に沿って「市の現行規則では農業委員候補者の『評価・選考』権限は農業委員会が設置する評価委員会にあり、農業委員会の候補者選考過程に不備はなく正当。評価委員会の報告は具体的な評価基準に基づく公平な手続の結果であり、告示後の内容変更は選考基準の統一性・公正性のうえで望ましくない。区割りは農業委員会の事務委任の範囲内であり問題はない」と決するのが妥当となった。
 しかし、嘉数登副市長が「県農業会議が示した回答はあくまでも『技術的な助言』である」と反論。顧問弁護士からの回答書を提出したうえで「変更は正当なもので法解釈に相違がある」とし「市長に『任命権』がある」と再主張した。
 すると即座に「市長に『任命権』があることは、議員も農業委員会も全員認めている」と委員が反応し、「議論の焦点は農業委員の候補者を『評価・選考』する権利」だと正したうえで「市は『評価・選考』の権利が農業委員会にあると分かっているから『任命権』にこだわって論点のすり替えを狙っているのではないか」との懸念を露(あら)わにした。
 議員が懸念を抱く要因として市が提出した顧問弁護士からの回答書がある。回答書には、市からの「候補者の決定権まで委任したのか」との設問があるが、顧問弁護士は「市長固有の『任命権』までは委任していない」と回答しているのみで「市長に『候補者の決定権』がある」旨の文言は一切ない。つまりこの回答書が「任命権に基づく『候補者の決定権』が市長にある」とする市の主張を正当化するものではないのだ。
 さらに回答書には、市と顧問弁護士の共有認識として「評価委員会による『評価・選考』が農業委員会へ委任したい事務の範囲内」だと記されており、市はこの回答書で「市長に『任命権』はあるが『候補者決定権』はない」ことを認識していると推察できる。(続)

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