「牛温恵」で生産率向上 畜産農家の16%導入

 宮古島市畜産課はこのほど、市内畜産農家の2022年生産率をまとめた。成牛の繁殖牛が産んだ子牛の数を計算したもの。母牛の分娩兆候を感知して農家に知らせる「牛温恵」を21年度までに導入した農家では96.29%だったのに対し、未導入農家では89.36%となり、改めて「牛温恵」の効果が実証された。市では現在までに全畜産農家の16.5%に当たる89戸が導入しているが、市はさらなる普及のため来年度当初予算案に補助金を計上している。

 牛温恵は出産前の母牛の膣内にセンサーを取り付け、体温を監視するシステム。分娩兆候特有の体温変化を検知し、分娩1日前と一次破水時に携帯電話やパソコンにメールを送信する。分娩事故を減らして生産性が向上できるだけでなく、夜回りや寝ずの番などの重労働から解放されるメリットもある。市は19年度から補助を継続している。

 21年度までに導入した69戸の農家では昨年、1403頭の繁殖牛が1351頭を出産。生産率は96.29%となった。22年度は新たに20戸がシステムを導入。89戸で計算した生産率は95.03%と若干下がるが、同課は「10月ごろに導入した農家も含まれるため、効果が十分表れていない面がある」としている。
 また、牛の妊娠期間は約280日のため、年に2頭産んだ翌年には1頭しか産めないなど、生産率は年によって上下する。「牛温恵」導入農家の生産率は100%を超えたこともあり、関係者が目指してきた「1年1産」を達成している。
 未導入農家494戸では、3383頭が3023頭を出産し、生産率89.36%。市内583戸の農家全体では、5033頭が4591頭を産み、生産率91.22%。
 22年12月末現在の飼養頭数で見ると、市では5頭以下の小規模農家が251戸と43.1%を占める。小規模農家の生産率は84.03%となっており、同課は「発情のタイミングなどを見逃している可能性がある」と説明した。

 市の畜産農家は高齢化や後継者不足などで減少に歯止めがかからない状況。市は「牛温恵」などのICT機器を活用したスマート農業推進で、経営規模の拡大や高収益化、労働効率化を後押ししたい考え。新規就農サポートとしては、賃貸式の「団地牛舎」整備などに取り組んでいる。

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