右から長男利樹さん母みつよさん三男勇磨さん

井上美香のあんちいーやー⑨暮らす人と観光客をつなげる海岸

 先日新城海岸をキレイにし隊で海岸清掃を行った。48人で3時間それでもまだ拾いきれなかった。
 参加者の中に新城海岸を清掃するときに必ずいらっしゃる女性がいる、新城海岸でパラソルやマリングッズのレンタルを営む新城みつよさん(以下みつよさん)。

新城にお住まいの右からもすぐ漁師の植松さんみつよさん松本さん

 12年前に亡くなった夫和人さんが保良の方から引き継ぐ形でスタートして20年が経った。ご主人は亡くなった時ここでの商売は辞めよう思ったそうだが、長男の利樹さん、三男勇磨さんがお父さんが作り上げたものを無くしたくないとの思いで一緒に運営している。
 新城海岸は海水浴場ではない。海水浴場となればライフセーバーを常駐させないといけなくなる。新城海岸を海水浴場に指定することはコロナ禍の前までは『宮古島市海岸利用促進連絡協議会』で議題に上がっていたとのこと。だが、ガイドブック、ネットも検索すればオススメのビーチに出てくるし、私も移住してきた時は地元の方に子供を遊ばせやすくて海に入ったらすぐお魚が見えるよと教えてもらった。ましてや観光客にはどこもかしこも綺麗すぎて、どこが海水浴場なんて誰もわかないだろう。
 新城の自治会の持ち回りの班長や子供会会長を務めるもずく漁師の植松信弘さんは子供会でさし網体験、海岸清掃して採った魚をバーベキューして食べるという企画を開催した方。新城の住民から見れば、畑の帰りに夕方さっと汗を流すのに海に入っていたが観光客の多さに遠慮して入れないという声を耳にすると言う。
 ここで地元の方や観光客がみんなが幸せな関係性ってどんなことだろう?
 実際、みつよさんはお客さんが来ない閑散期の冬でも新城の海に来ては漂流物を拾っている。少しでも海岸からゴミを減らしたい、観光客が訪れた時に漂流物で埋め尽くされた砂浜を見せたいくないという思いだ。ご存じの方も多いと思うが、宮古の漂流物は冬の東海岸が凄まじく多い。世界規模の問題に宮古島も直面している。
 拾わなければ、海で魚が獲れなくなり、私たちは魚が食べられなくなり、サンゴに漁網が絡まり生態系も狂わせ環境に負荷がかかっているのだ。
 そこで観光客にもその現状を理解した上で海のレジャーを楽しんでもらい、その感動をビーチクリーンという形で地球に貢献してほしい。拾う人が増えれば確実に海岸からゴミは消える。住民の負担も軽減されるのだ。
 最近は新城海岸にある生き物を目指してたくさん訪れるマリン事業者も、お客さんと一緒にゴミを拾ってくれれば海への感謝の形がここで示される。その拾ったゴミは喜んでみつよさんが引き取って責任を持って分別、処理してくれるだろう。ワンハンドでペットボトルを一つ拾うだけでも44万個(2020年の入域観光客数)が無くなるのだ。
 観光客、住民も海のゴミをもっと気軽に拾いたいが拾ったゴミをどうしたらいいの?がワンアクション起こさない要因になっているようだ。それならやりやすい仕組みを考え、拾いやすくする環境作りが大切で海の豊かさも守ることにもつながるのではないだろうか?

 漂流物のことだけではない、幼い頃から新城の海で遊んでいた利樹さん、勇磨さんは海のことを知り尽くしている。私が行った時も親子連れの観光客に丁寧に海遊びの注意点を伝えていた。海峡のことを知る絶対的な安心感そしてみつよさんの三線を聞き、そこで暮らす人々と観光客の架け橋となり島らしさに触れられる場所。だから再会を楽しみにしてリピーターが多い理由がうかがえる。みつよさんの日頃の苦労を知ってか常連さん達は率先してビーチクリーンをしてくれているそうだ。

2009年に父・和人さん享年48歳で永眠した。生前観光客からお礼の手紙が来るほど人気者だった

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