• 全国
  • ASDの被告人がパトカーとカーチェイス、公務執行妨害で逮捕されるも「またやりますよ」【裁判傍聴記】
  • HOME
  • 全国
  • ASDの被告人がパトカーとカーチェイス、公務執行妨害で逮捕されるも「またやりますよ」【裁判傍聴記】

ASDの被告人がパトカーとカーチェイス、公務執行妨害で逮捕されるも「またやりますよ」【裁判傍聴記】

令和7年10月、大分地裁第一号法廷のモニターには警察車両のドライブレコーダー映像が流れていた。

同年8月12日11時半頃、停止線で一時停止せず進行する軽トラックが映り、それを確認した警察車両が運転手に車両の停止を拡声器で促しながら後方を走る。

しかし、軽トラックはそれを無視し続け、全く止まる気配がない。

10分ほどカーチェイスが続き、軽トラックが農業協同組合の駐車場に停まると車を降りた男(事件当時37歳)は建物の中へ入っていく。映像が建物ロビーの防犯カメラに切り替わると、建物に入った男を警察官2名が追って確保する。

すると男が「このストーカー野郎!!」と叫び、一人の警察官(当時34歳)の右足を蹴り、頭部を殴ったところで映像は終わる。幸い警察官にけがはなく、男は公務執行妨害で現行犯逮捕される。

女性従業員に売春を強要してGPSで徹底管理、不同意性交で訴えられたガールズバー経営者の言い分【裁判傍聴記】

「捕まえて俺を精神病院に入れるつもりなんです」

男はなぜ停止に応じず農業協同組合に逃げ込んだのか。法廷でその理由を語る。

「朝から野菜を収穫して、知り合いに野菜を配りに行った。早朝からの農作業で疲れていた上、厚意で行った野菜配りを無下にされてムカついていた」

男は農業をしており、収穫した野菜を知り合いたちに配りに出掛けていた。しかし、思うように受け取ってもらえず、イライラしていたという。そして、帰って寝ようと帰宅していた道中、一時停止違反を起こしたようだ。

弁護人「あの映像は令和7年8月12日、あなたの車両で間違いないですか?」

被告人「あの映像は違います」

弁護人「違うとは?」

被告人「あれは何年か前のものです」

弁護人「どういうことですか?」

被告人「一時停止で捕まえて俺を精神病院に入れるつもりなんです」

弁護人「それは誰が?」

被告人「警察です」

弁護人「なぜ警察がそんなことを?」

被告人「メリットがあるからじゃないですか?」

見守っていた男の母親が傍聴席で頭を抱える。

支離滅裂なまま進む被告人質問

弁号証で男の診断書が提出され、本件後、病院で男はASD(自閉スペクトラム症)と診断された。本公判の被告人質問でも警察の陰謀を示唆し、話がかみ合わない場面が目立つ。

弁護人「なぜ農業協同組合の建物に入っていったのですか?」

被告人「JAは農業をしているので知らないわけではないので。パトカーがしつこいからJAに入ったけど、警察も中に入ってきた。誰も助けてくれなかったんでショックでした」

弁護人「今回、警察官に対して暴行をしてしまったわけですけど、今後はもうしませんか?」

被告人「相手が私になにかしてきたら、またやりますよ」

弁護人「そうならないために今後どうしますか?」

被告人「嫌いな人とは一切付き合わないようにしようと思います」

被告人質問は検察官に移る。

検察官「あなたを捕まえることによって警察になんのメリットがあると?」

被告人「もうかるから」

検察官「あなたを捕まえたところで警察がもうかることはないと思うんだけど、あなた警察、検察が嫌いなんですか?」

被告人「はい」

検察官「今回、身体拘束されていますけど、勾留されてどう感じましたか?」

被告人「誰も助けてくれないんだなというのがよくわかりました」

検察官「もうこんなことはしてほしくないのですが、どうお考えですか?」

被告人「こいつが消えればいいというような態度で来られたら、わかりません」

支離滅裂なまま被告人質問は進行し、終わる。

法廷には男の父親が証人として出廷した。事件当日、警察から連絡があり、「またなにかしでかしたんじゃなかろうか」と思ったという。

男には暴行で警察沙汰になった前歴が1件あり、父親はすぐに察したのであろう。両親の前で暴力行為は一切ないと証言し、今後、精神病院への通院に付き添い、監督すると法廷で述べた。

そして、男には執行猶予付き判決が下される。弁護人からの被告人質問で男ははっきりと述べた。

「通院しろと言われているからするだけで、私は自分に問題はないと思います」

文/田辺朋之 内外タイムス

関連記事一覧