認知能力が高い女性、チーム内で敵対的に見られる可能性 米中2研究で対人関係への影響を分析
認知能力が高い女性は、同じように能力が高い男性とは違い、チーム内で「敵対的」「協調性が低い」と見られやすい可能性がある――。
米ミネソタ大学や北京交通大学などの研究グループは、米国の大学生チームと中国企業の従業員チームを対象に、認知能力、性別、同僚からの見られ方、嫌がらせや支援の受けやすさの関係を調べた。研究成果は5月18日付で心理学学術誌「Journal of Applied Psychology」に掲載された。
(https://doi.org/10.1037/apl0001391|doi.org/10.1037/apl0001391)
「能力が高いこと」は、誰にとっても同じように有利に働くのだろうか。研究チームが注目したのは、職場やチーム内にある性別役割の固定観念だ。一般に、女性には温かさ、親しみやすさ、思いやりといった性質が期待されやすい。
一方、知的能力や有能さ、競争力は、伝統的には男性的な性質と結びつけられやすい。こうした見方のもとでは、認知能力の高さという「有能さ」が、女性に対しては性別役割から外れた特徴として受け止められる可能性がある。
研究は2つ行われた。第1研究では、米国の公立大学のビジネススクールで、授業内のチーム課題に取り組む学生432人を分析した。参加者は認知能力テストを受け、その後、チームメンバーから「怒っている」「敵対的」といった印象を評価された。さらに、情報を隠されるなどの被害経験や、課題面・対人面でどれだけ助けを受けたかを答えた。
第2研究では、中国の大手金融企業の従業員394人を対象にした。対象者は5〜6人程度のチームで働いており、採用時に受けた認知能力テストの得点を用いた。同僚は各メンバーについて、敵対的に見えるか、親切さや思いやりがあるかを評価した。本人はその後、チーム内での嫌がらせや支援の受け方を回答した。
分析の結果、認知能力が高い女性は、チームメンバーからより敵対的に見られやすかった。この傾向は、米国の学生チームと中国企業の従業員チームの両方で確認された。一方、男性では同じ傾向は見られなかった。中国企業の研究では、認知能力が高い女性ほど、同僚から親切さや思いやりが低いとも見られていた。
「有能な女性」の二重の負担
こうした見られ方は、実際の対人経験とも関係していた。認知能力が高い女性は、敵対的に見られることを通じて、嫌がらせを受けやすく、仕事上の助けや精神的な支援を受けにくい傾向があった。中国企業の研究では、親切さや思いやりが低いと見られることも、嫌がらせの受けやすさと関連していた。
興味深いのは、男性ではむしろ逆の傾向も見られた点だ。中国企業のデータでは、認知能力が高い男性は敵対的に見られにくく、その結果、嫌がらせを受けにくく、仕事上や対人面で支援を受けやすい傾向があった。同じ「能力の高さ」でも、性別によって周囲の受け止め方が違う可能性が示された。
これまでの研究では、女性が強引さや支配的な態度を示すと反発を受けやすいことが知られてきた。一方、知的で有能であることは、女性にとってもリーダー評価などで有利に働く場合があるとされてきた。今回の研究は、その見方に別の側面を加えるものだ。
つまり、認知能力の高さは、仕事能力やリーダー候補としての評価では利点になりうる一方、日常的なチーム関係では「冷たい」「協調的でない」と見られ、助けを得にくくなる可能性がある。これは、有能な女性が成果を出すだけでなく、周囲からの不当な対人評価にも対処しなければならないことを示している。
この研究は、すべての職場や文化にそのまま当てはまるわけではない。第1研究は米国の大学生チーム、第2研究は中国の金融企業に限られる。また、認知能力の高さが直接嫌がらせを引き起こすと断定するものでもない。研究チームも、効果の大きさは小さいものの、長期的には職場での支援やキャリア形成に影響しうると見ている。
企業にとって重要なのは、能力の高い女性を採用・評価するだけでは不十分だという点だ。同僚や上司が「有能さ」と「温かさ」を性別によって異なる解釈をしていないか、支援や評価の仕組みに偏りが入り込んでいないかを点検する必要がある。能力が高い女性が、余計な対人関係の負担を負わずに力を発揮できる環境を整えることが求められそうだ。
文/吉田光男 内外タイムス






