法廷では土下座で号泣謝罪、面会室では涙目で筆者を見すえ…広島の女子児童34人わいせつ教師の素顔
「こんなことをした私が言ってはいけないことですが…」
今年7月2日、広島拘置所の面会室。上は紺のスウェット、下は黒のズボンという姿で現れた坊主頭の細身の男は、アクリル板越しに涙で潤んだ目で筆者を見すえ、申し訳なさそうにそう切り出した。そして、こう続けた。
「子どもたちを大事に思う気持ちはあるんです」
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男の名は、中島健夫(40)。教師として勤務していた広島市内の小学校で女子児童34人にわいせつ行為をはたらくなどした罪に問われ、今月19日、広島地裁(佐藤智彦裁判官)で懲役9年(求刑は懲役13年)の判決を受けた男だ。
近年、小中学校の教職員が教え子の児童・生徒に対し、わいせつ行為をはたらいた容疑で逮捕される事件が増えている。その中でも中島が起こした事件は近年では被害規模が最大級であり、事件を伝える報道に多くの人が激怒した。
筆者は中島がどんな人物なのかを知りたく、裁判を傍聴し、収容先の拘置所に面会にも訪ねた。そうしたところ、わいせつ教師の素顔がおぼろげながらも見えてきた。
公判ではいつも病人のような足取りで、被告人席でもうなだれて…
被害者の特定を避けるため、犯行時期や被害者らの年齢などは伏せるが、被害者34人に対する中島のわいせつ行為はわずか2年半の間に集中的に行われたものだった。この34人という被害人数もあくまで立件された人数であり、それ以前に別の小学校に勤務していた頃にも余罪があるという。
一つ一つの犯行内容もおぞましい。
判決によると、中島は「体調を確認する」などと称して教室内で女子児童と二人きりになったうえ、女子児童の着衣をずらして胸を露出させて触ったり、女子児童の両目を手で覆って舌を出させ、その舌に自分の性器をあてたりしていた。さらにそういう犯行の様子をタブレット型パソコンで毎回、動画撮影していたという。
ほかにも中島は動画撮影機能を有する機器により、女子児童の教室での着替えや、スカートの中などを盗撮したりもしていた。学校に犯行が発覚後、罪証隠滅のために破棄したタブレット型パソコンは十数台に及んだそうで、膨大な量の動画を所持していたことがうかがえた。
そんな中島は公判にいつも、よれよれとした病人のような足取りで現れ、被告人席でも終始、思いつめたような表情でうなだれていた。とりわけ3月13日の公判で被害者の保護者たちの被害感情をまとめた調書が検察官により読み上げられた際には、何度も深くため息をついていた。
そして公判のクライマックスのような場面になったのが、6月22日、検察官の論告求刑と弁護人の最終弁論が行われた後であった中島の最終意見陳述だ。証言台の前に座った中島は嗚咽(おえつ)しつつ、被害者や保護者、学校関係者らに謝罪の言葉をとぎれとぎれに述べると、最後に立ち上がり、傍聴席のほうに向きなおった。そして、その場で土下座したのだ。
「申し訳ありませんでした! 申し訳ありませえぇーん!」
号泣しながらそう叫んだ様子は、少し芝居がかっているようにも思えた。ただ、このわいせつ教師が深い罪の意識を抱いていることもまた事実であるように思われた。
子どもを大事に思う気持ちはあるが…「“その時”は頭が欲求でいっぱいになるんです」
筆者が広島拘置所まで中島の面会に訪ねたのは、中島本人と直接言葉を交わし、その実像を確かめたかったからだ。
「子どもたちを大事に思う気持ちはあるんです」
先に紹介した中島のこの言葉については、「どの口が言うか」と思われた方もおられるだろう。
だが、アクリル板越しに筆者を見すえる中島の涙で潤んだ目は真剣だった。中島は言葉をこうつないだ。
「しかし、“その時”は欲求で頭がいっぱいになるんです」
この短い言葉は、筆者を得心させるものだった。
中島は公判で犯行に及んだ原因について、「職場の上司から追い詰められ、自制が利かない状態になっていた」と供述している。だが、一般的な成人男性は、職場の上司から追い詰められても、小さな女の子にわいせつ行為をはたらいたりはしない。
つまり、中島は「病(やまい)」を抱えているのだ。この病により湧き上がる衝動を普段は理性で抑えているが、大きなストレスに見舞われると、衝動が暴走してしまうのだ。
中島本人も自分に医学的問題があることは自覚しており、「出所してからになると思いますが、3年間は治療を受けることになると思います」と言っていた。
面会室で涙をこぼしながら語った取材に及び腰の理由
ただ、中島は面会では、取材を受けることに及び腰だった。その理由をこう話した。
「私は多くの人を裏切り、傷つけてしまいました。子どもたちや保護者の方々、学校関係者、安全ボランティアなど学校のサポーターの方々、そして自分の家族…私が取材を受け、犯行内容や動機を話すことにより、みなさんをまた傷つけることになるかもしれません。
保護者の方の中には、(性の知識が無い)子どもが被害に気づいていないので、事件のことを伝えていない方もいるそうです。何より、子どもたちをさらに傷つけてしまうことは絶対に避けないといけません」
中島はそんな話をしながら、涙をポタポタとこぼした。現在の体重は58キロだそうだが、逮捕後に獄中で10キロほど痩せ、この体重になったそうだ。それも罪の意識の表れのように思えた。
この12日後、中島から届いた便せん2枚の手紙には、やはり取材は受けられないということが丁寧な筆致でつづられていた。
判決公判では背筋を伸ばし、しっかりした足取りだったが…
1カ月後の今月19日の広島地裁での判決公判。法廷に濃いグレーのスーツ、白いシャツという姿で現れた中島は、これまでの公判とうって変わり、背筋を伸ばし、しっかりした足取りだった。以前より気持ちの整理がついたような雰囲気だった。
「計画性があり、当時教員であった被告人に対する信頼や被害者らの未熟さにつけ込んだ卑劣な犯行である」
佐藤裁判官に判決でそう非難され、中島は身じろぎせずに聞いていた。懲役9年という結果を不服に思っている様子はなく、控訴せず、このまま確定させる公算が大きそうに思えた。
もっとも、中島が刑に服しても、被害者やその家族への償いはまた別の話だ。判決によると、中島は現時点で被害者3人にそれぞれ10万円の被害弁償金を支払い、他の被害者らに対しても5万円または10万円に遅延損害金を加えた額を供託しているそうだが、この程度で償いが済むとは思い難い。今後、被害者の保護者らからはさらなる被害弁償を求められると思われる。
中島は懲戒免職になっており、退職金はもらえていない。服役中は刑務作業により作業報奨金を得られるが、それも微々たるものだ。一体、被害弁償をどれほどできるのか。金を払えば許されるような罪ではないが、中島がどこまで罪の意識を深く感じているかは、それが見極めのポイントの1つだと思う。
文/片岡健 内外タイムス






