批判動画に過去の映像「歌舞伎町が汚くなった」の言説に注意
「歌舞伎町が汚くなった」とする意見を、今年に入ってからX(旧Twitter)でしばしば見かける。シネシティ広場周辺に滞在する人がゴミを無造作に捨てたり、10代とみられる少女らが路上で寝転がったりといった「まとめ動画」が投稿され、外国人や小池百合子都知事らへの批判につなげる意見が併記されている。
国内に点在する歓楽街と比較して、歌舞伎町が指折りの汚い地域であることは否定しようのない事実だ。だが、歌舞伎町が「汚くなった」とする意見については、誤解を含んだ話になっている。治安上の問題はさほど改善されていないが、衛生面に関してはこれまでの自治体・民間企業の努力が実り、改善されたと評価した方が良いだろう。
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反社会的勢力が強烈な影響力を発揮していた昭和の頃から、歌舞伎町では衛生面の課題が慢性的に発生していた。現代の「トー横」に該当するエリアにとどまらず、ゴジラロード(旧セントラルロード)や西武新宿駅方面でも紙袋などが散乱。靖国通りの地下エリアに作られた商業施設「新宿サブナード」の出入口周辺には、集積所でもないのに段ボールやごみ袋が山のように積まれることもあった。
各地の雑居ビルにあったゴミが路上へとなだれ込み、車道を塞いでしまうといった光景もしばしば見かけたが、これらの衛生状態が一気に改善した出来事がある。2001年に発生した歌舞伎町ビル火災だ。小さな雑居ビルで40人以上が死傷したこの一件は消防法を改正するきっかけになり、防火への取り組みの副産物としてビル内の衛生面改善と道路の美化活動にもつながった。
コロナ禍による一連の規制が解除された2023年頃、少女と交際相手が自殺する事件が発生し、トー横キッズの問題が特に注目された時期があった。少年少女らの存在と共に問題視されたのが、歌舞伎町の衛生環境にまつわる事象である。SNSに投稿された動画には、地べたに大小さまざまなゴミが散乱している様子が収められ、不衛生さを批判する意見が投稿されていた。
また、同年には歌舞伎町の「ネズミ問題」も深刻化。相次ぐ苦情などを受けた新宿区は、補正予算を付けた上で該当地域のネズミ駆除の施策を展開。2000年代から実施してきた「歌舞伎町ルネッサンス」に続く、新たな美化活動を実行に移した。今年の1月には焼き肉店の天井からネズミが落ちてくるというトラブルが発生したが、路上でネズミを見かける頻度は明らかに減少。この施策は一定の成果を出しているようだ。
今年の動画に「2024年以前の映像」
ところで、今年に入ってから投稿された動画をよく見てみると、2023年前後に撮影されたと思われる映像が差し込まれている。映り込んでいるビルの1つには「新宿BLAZE」と書かれた看板があるが、このライブハウスは2024年に閉館済み。ビル自体も現在は工事の真っ最中なのだが、「歌舞伎町は今日も平常運転です」というテロップの背面には、ビル内にあったファミリーマートなどが営業している様子を確認できる。
別の映像では路上に人とゴミがあふれかえっているのだが、ロシア語で「1月1日の深夜」に撮影されたというテロップがあり、路上には「HAPPY NEWYEAR 2026」と書かれたノベルティもある。映像を見た限りでは、明らかに大規模なイベントが開催された後であり、これを歌舞伎町の日常として捉え、ゴミだらけになったと主張するには、若干無理がある。
冒頭で触れた通り、Xの投稿には映像と共に特定の人物らへの批判につなげる文章も併記されているため、今年に入って「歌舞伎町が汚くなった」とする言説は、一歩引いて見た方がいいかもしれない。

文/池田聖人 内外タイムス編集部






