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岩屋前外相の訪中は中国でどう報じられたのか 関係改善の可能性を残す“二重のメッセージ”

9月27日から30日にかけて、日本の岩屋毅前外相が訪中し、28日には王毅(ワン・イー)外相、29日には何立峰(ホー・リーフォン)副総理と会談した。

日本国内の報道では「高市首相の台湾発言に対する是正要求」や「厳しいけん制」といった対立がクローズアップされがちだが、日本国際貿易促進協会の会長として訪中した岩屋氏に対し、外交・経済の両分野を代表する中国指導部の幹部が会談したことは異例とも言える。

折しも、習近平国家主席が訪米でトランプ大統領と合意を取り付け、北京へ帰国した直後のタイミング。中国側はこの会談を国内でどう報じ、いかなるシグナルを日本に向けて放ったのか。中国公式報道や言論から、関係正常化に向けた意図を読み解く。

米中首脳会談を中国メディアはどう報じたのか 対等性の強調と第3ステージへの移行

中国メディアが伝える関係改善に向けたハードル

中国の有力オピニオンメディア「観察者網」は、日本の共同通信の報道を引用しながら、今回の会談を「極めて異例」と位置づけ、その背景と政治的意図を紹介している。

1. 「2日連続」が持つ重み

高市早苗首相による昨年11月の「台湾有事」発言以来、日中関係は急速に冷え込んだ。観察者網は、今回の会談が関係悪化以降、中国指導部にとって日本の国会議員との初の本格的な対話であることを強調。外交トップの王毅外相に加え、経済政策を統括する何立峰副総理が「2日連続」で時間を割いた厚遇について、「極めて異例」とクローズアップしている。

2. 河野洋平氏の「遺志」と中国側の期待

王毅外相の発言として、日本国際貿易促進協会の前会長である河野洋平氏を「良識ある政治家」と高く評価したと強調している。その上で新会長の岩屋毅氏が「河野洋平氏の遺志を継ぐこと」「平和的発展の道を歩む」と応じたことを紹介している。

3. 関係改善への「3つの要求」の提示

王毅氏は、来年(2027年)に迎える日中国交正常化55周年を視野に入れつつ、日中関係は「再び正常化を実現する局面に直面している」と指摘。その上で、日本側に対して以下の3段階のハードルを突きつけたことを詳報している。

・台湾問題での言動の早急な是正

・歴史問題において正しい態度をとること

・客観的かつ理性的な対中認識を形成すること

ここで注目すべきは、中国側の要求が「撤回」ではなく「是正」という表現で示されている点だ。

「是正」は、必ずしも発言の全面撤回を意味するものではない。日本側に何らかの軌道修正を求めながらも、具体的な対応については一定の余地を残す表現とも解釈できる。中国側が台湾問題で譲歩したわけではないが、対話を通じた関係改善の可能性を閉ざしているわけでもない。今回の会談には、そうした二重のメッセージが込められているように見える。

4. 何立峰副総理による「経済の実利」アピール

翌29日に行われた何立峰副総理との会談では、王毅氏の原則論とは対照的に、実利的な経済協力が前面に押し出された。何立峰氏は「重要な経済貿易パートナー」という伝統的フレーズを用いつつ、日本企業の中国市場進出と発展を歓迎する姿勢を鮮明にした。岩屋氏もこれに応じ、日本の経済界として中国との交流を拡大し、相互協力を深める意向を表明したと結んでいる。

米中合意がもたらした「潮目の変化」

筆者は、今回の岩屋毅前外相の訪中と、それに対する中国側の対応は、先日に行われた米中首脳会談を踏まえた中国外交の転換シグナルであると考える。

中国外交の伝統的な力学として、対米関係が激突するか、あるいは逆に米中首脳間で一定の枠組みが定まったタイミングで、日本への外交カードを切り替える傾向が一貫して見られる。

例えば、2017年に第1次トランプ政権が発足し、米中間の対立が徐々に深まるなか、中国は日本との関係改善を進めた。2018年5月には李克強総理(当時)が訪日し、第7回日中韓サミットに出席。同年10月には安倍晋三首相(当時)の訪中が実現した。

米中間の貿易摩擦が本格化する前後、中国が日本との外交関係を安定させようとしていたことは、今回の動きを考える上でも興味深い。

また、2022年11月にはバリ島でバイデン・習近平会談が実現。会談が行われた直前の8月には、ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発した中国が大規模軍事演習を実施し、発射した弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下する事態が発生していた。

そして、バリ島での会談では台湾問題のレッドラインを確認しつつ、実務対話の再開で合意した。そのわずか数日後、バンコクのAPEC首脳会議に合わせて習近平主席と岸田文雄首相(当時)が日中首脳会談を実施、日本との対話継続も演出した。

このように、中国にとって対日外交は、対米関係と切り離して考えられるものではない。

米中関係が緊張する局面では、日本との関係を安定化することで東アジア地域への影響を抑える。一方、米中首脳間で一定の枠組みが形成された際には、その結果を地域の安定化や対日関係の改善につなげようとする動きも見られる。

米中首脳会談を終えた習近平主席が帰国した直後、中国指導部は岩屋氏と2日連続で会談した。そこでは台湾問題に関する要求を維持する一方、経済交流や民間交流については前向きな姿勢を示している。

筆者は、ここに中国外交の現実的な計算を見る。

大国間競争の荒波のなかで、日本の立場をいかにコントロールするか。中国が放ったボールは、高市政権の対中戦略の真価を問いかけている。

文/下川英馬 内外タイムス

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