女性従業員に売春を強要してGPSで徹底管理、不同意性交で訴えられたガールズバー経営者の言い分【裁判傍聴記】
東京地裁に出廷したS被告(40歳)は長髪を束ねたちょんまげスタイルだった。
東京・池袋のガールズバーの元経営者で、売春防止法違反と不同意性交の罪に問われていた。
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2025年5月から7月、従業員の女性Xさん(27歳)は、朝7時から夕方までガールズバーで勤務。その後、新宿・大久保公園で「立ちんぼをしろ」とS被告に命令され、不特定多数の男性を相手に売春をしていた。
Xさんは売春防止法違反(客引き行為)で現行犯逮捕された。身体に殴られたような痕があったことから、この事件が発覚した。
S被告は売春させただけでなく、お店やホテルでXさんに暴行して、わいせつな行為をしていたのだ。
驚くのは、Xさんに対する徹底した管理だ。S被告は、Xさんの住居の賃貸契約を勝手に解約して、店のバックヤードの狭いスペースに住み込ませた。
完全歩合制を採用して給料は払わず、食費として3000円を渡して、レシート画像を送付させてチェック。セクシーキャバクラでも働くように強要して、その給料はS被告が受け取っていた。「売り上げが少ない」と拳やシャンパンボトルで殴ることもあったという。
ガールズバーでマネジャーだった女性T被告(21歳)と共謀して、携帯電話のGPS(全地球測位システム)で居場所を確認して、売春客との会話を録音。公園付近にいないと、Xさんを探し出し、暴行を加えて連れ戻した。ロッカー内に置かれた携帯を見つけて、暴力を振るったことも。
立ちんぼから帰ってもガールズバーで勤務
T被告も、共犯者として裁判にかけられた。Xさんを監視し、状況を報告。客引きをしているかどうか、公園に確認に行ったこともあったという。
T被告は逮捕当初から捜査に全面的に協力。S被告の従属的立場で、直接の報酬も得ていない。
T被告への判決は拘禁刑1年6か月執行猶予3年、罰金30万円(求刑は懲役1年6か月罰金30万円)だった。
Xさんが売春で稼いだ金はすべてS被告が受け取っていた。避妊具を使用するかどうかで異なる料金設定も指示。携帯電話の記録によれば、36回にわたって送金した金額は64万7000円に及ぶ。
Xさんは客とできるだけ性交をしないよう交渉していたが、それがばれると暴力を振るわれた。立ちんぼから帰っても、ガールズバーで毎日働いていて、休めなかったという。
被害者Xさんは、「『セクキャバで稼げなかったら、立ちんぼするしかないじゃないか』と言われた。
『お前、本番やってねえだろう、穴広げろよ』と殴られて、ハンガーでたたかれた。『さっさとやれ。根元まで入れろ』と言われて、やりたくなかったが、解放されたいと思って、自分の中指や性玩具を性器の中に入れた」と供述。S被告はその様子を撮影してT被告に送付していたという。
被告は法廷で謝罪「教育しているつもりでした」
弁護側は、Xさんに自慰行為を強制するなど、わいせつ行為は認めた。しかしXさんの指をXさん自身の性器に入れさせたことは、不同意性交にはならない、と主張した。
検察官は、S被告に対して、懲役8年罰金30万円、追徴金20万円を求刑した。
「2024年8月頃からXさんの金銭を管理し、毎日のように叱責。殴る蹴るなど暴力を振るい、鼻血が出たことも。暴力を振るうたびに撮影していた。
Xさんに対する配慮が一切ない。売春で稼いだ金はすべて回収。常に監視下にあったことは確か。売春防止法が成立する。常習的犯行の首謀者。従わないと荒い暴力を振るった。
Xさんの供述は信用できる。覚えていないことは覚えていないと供述し、鮮明に覚えている部分を供述している。全体として客観的証拠と整合する。
女性の尊厳を無視。自己中心的な犯行で、酌量の余地がない。被害者を屈辱的な心情にさせた。心身に与えた悪影響ははかりしれない」
XさんはS被告への思いを供述していた。
「事件を忘れることはできません。(S被告には)同じ苦痛を味わってほしい。できる限り重い刑を」
弁護側は、「不同意性交罪を適用するのは誤り」と主張した。
「このような犯罪によくみられる組織性は認められない。GPSは居場所を特定して、トラブルに対する早期発見の意味もあった。Xさんはお店のなかで仮眠することはあったが、主にネットカフェに泊まっていた。Xさんは歯を磨かない、シャワーを浴びない、金銭感覚が乏しい。自己管理ができず、何度注意しても生活態度が改まらない。改善の目的もあった。
売春での売り上げのうち、生活費を除いて得た利益は数十万円程度。自慰行為を強制した事実については争いがない。強制わいせつに当たる。民事的には解決している。前科は7年以上前の罰金刑のみ。執行猶予つき判決が相当」と。
S被告は、法廷でXさんへ謝罪した。
「(Xさんを)教育しているつもりでした。暴力も、この業界では当たり前だと思っていました。自分の身勝手な考えで、精神的にも肉体的にも辛い思いをさせてしまいました。本当に申し訳ないと思います」と。
Xさんには被害弁償金として300万円支払われたが、交わされた文書には「宥恕(ゆうじょ・許すということ)」という表現はない。
裁判官は検察官の主張を支持
2026年9月9日、判決当日――。
S被告は、すっきりした髪型に変わっていた。
判決は懲役7年、罰金30万円追徴金20万円。裁判官は検察官の主張を支持した。
「暴行脅迫して、売春を強要した。行動を管理しながら得た金銭を送金させたのは悪質。不同意性交では暴力や脅迫を加えていて、被害者の人格や尊厳を顧みない犯行だ。
争点は不同意性交の有無とその成立。共犯者とのメッセージのやりとりや被害者の供述から事実と認められる。自らの指での挿入は不同意性交に含まれないと弁護側は主張するが、被害者の身体の一部を除外しない。S被告は膣を広げると称して、3回にわたり、手指を根元まで挿入させた。
Xさんの証言は具体的で、信用性は高い。被告人の証言は、共犯者へのメールとの整合性がない」
S被告は覚悟していたのだろうか。懲役7年の判決を告げられても、表情はほとんど変わらなかった――。
文/青山泰 内外タイムス






