売春防止法に「買う側」への罰則を盛り込む動きも「法改正」に賛否
売買春の規制に関する法務省の有識者検討会が24日、売春防止法改正の報告書案を示した。現行の法律に買う側の勧誘行為について規制がないため、「何らかの規制を設けるべきだ」とする内容だ。
「売春防止法」は時代遅れ…… 風営法の規制と監視でセックスワークが合法産業の日本は世界でも特殊
ここ数年、悪質なホストクラブで多額の借金を背負い、未成年を含む若い女性が売春に追い込まれる事例が多発し、問題になっていた。その中で、客待ちをする女性だけが摘発され、買う側への処罰規定がないことから「不均衡」との声が上がっていた。
そもそも、70年前の1956年に制定された売春防止法は、売春や買春行為そのものについて「禁止」を掲げるものの、罰則規定はない。ただし、公衆の面前での客待ち、いわゆる“立ちんぼ行為”は処罰される。この法律で主に処罰されるのは、「売春のあっせん」と「場所の提供」だ。
例えば、ソープランドが摘発されることがあるが、それは場所を提供したということで店(経営者)が処罰されているのであり、店で働いている女性が処罰されているわけではない。
今回の報告書案でも売春行為の処罰について「慎重であるべきだ」と記載されている。買春行為についても「成人による同意に基づく性交について、刑罰をもって公権力が介入することは慎重であるべきだ」「売買春行為が地下に潜って見えにくくなる」などと慎重論でまとまった。
TBSの取材に対して神戸大学の青山薫教授は、規制してもこのような行為自体は無くならないだろうとしたうえで、買う側に対して罰則を設けるとさらに売春行為が地下に潜ってしまい、「女性がもっと危険な目に遭う可能性があるのではないか」と指摘している。
北欧モデルの功罪と合法化のメリット
海外でも対応は分かれている。買う側のみを処罰、売る側は被害者として保護・支援をするという北欧モデル(スウェーデン、フランス、カナダなど)は、性売買を「ジェンダーの不平等に起因する暴力」として捉える考え方だ。しかし、フランスでは、売買春の減少は見られないといい、ブローニュの森のような人目のつかないパリ郊外に移動していると指摘される。
ヨーロッパでは伝統的に売春は合法であり、オランダやドイツ、ベルギーなどには、売春宿の「飾り窓」がある。アムステルダムがもっとも有名だ。飾り窓が密集するエリアは自治体や法律によって厳しく規制・管理されているので、安全な遊興地区である。
日本では売春は非合法なので、ソープランドは“特殊浴場”であり、店内でのサービスは“自由恋愛”という建前になっている。店側は客室で何が行われているのか知らないという建前だ。ホンネと建前を使い分ける日本らしいやり方だが、むしろ不健全ではないのか。
昔からソープランドの摘発は警察の“胸三寸”といわれ、実際に事件も起きている。和歌山県警の幹部が「いつでも摘発できる」と権限をちらつかせ、風俗店に“無料おねだり”していた事件が昨年9月に発覚した。店の経営者と食事をしていたというので、完全に癒着である。
ある保守系の論客はX(旧Twitter)に次のように投稿している。
「(売る側も買う側も)どちらも処罰すべきではない。世界最古の職業を無くせるわけがない。禁酒法の失敗を繰り返すな。アングラ化が進み、トラブルが起きても国家機関に相談できなくなり、マフィアの支配下に置かれるだけ。警察の汚職も助長する。(中略)戦前の日本も、現代の先進国も、できるはずもない規制ではなく、管理という方向性を取っている。検診、売り上げ把握、事件防止。そもそも日本の法律として、パパ活は売春の定義に当たらず合法である以上、こんな法案はただのポーズに過ぎない。弱者しか取り締まらない」
仮に今回、買う側への処罰規定を新しく設けたとしても、SNSを使ってこれまでと同じように“自由恋愛”は行われるだろう。もちろん、世界最古の職業は無くならない。
今回の法改正の議論は、高市早苗首相が昨年11月の国会で平口洋法相に検討を指示したことからスタートしたもの。日頃支持する保守層ではなく、人権団体向けのポーズだとすれば、高市首相の動きとしては珍しい。もし、法改正するなら、実態の伴うようなものにしてほしいものだ。
文/横山渉 内外タイムス






