原点回帰のG-SHOCKが狙う新市場 スマートウォッチ全盛でカシオが業績を伸ばせる理由
カシオ計算機が11月7日にG-SHOCK「2500」シリーズのアナログモデルを発売する。初代モデルの角型フォルムを継承しつつ、ケースにはより丸みを持たせた。デジタル液晶ではなく、針によって時刻を表示するフルアナログモデルとして再解釈した意欲作だ。
この新作は、カシオの経営戦略上も重要な意味を持ちそうだ。
2億円の高級時計をわずか10秒で強奪 来日4日のチリ人2人をスピード逮捕も残る“謎”
新型G-SHOCK「2500」は合計9機種で、価格は2万900円~4万9500円。樹脂製のベゼルとバンドを採用したモデルに加え、金属製ベゼルを採用したモデルや、金属製バンドを組み合わせたモデルなどを展開する。そのレトロなデザインに懐かしさを覚える人も少なくないだろう。
落としても壊れない時計というコンセプトの下で生み出されたG-SHOCKの初代モデル「DW-5000C」は、1983年に発売された。タフで実用性が高いことが評価され、アメリカを中心に評判を呼ぶようになった。初代モデルを小型化した「DW-5600C-1V」が1994年公開の映画「スピード」に登場すると、G-SHOCKは世界的な注目を集めるようになった。
90年代にはスケーターやヒップホップアーティストがG-SHOCKのさまざまなモデルを愛用し、ストリートカルチャーとの相性の良さから大ブームを巻き起こした。
近年は、初期モデルへの回帰を強めている。2024年12月に発売した「DW-5000R-1AJF」は、初代の「DW-5000C」を忠実に再現した復刻モデルだ。人気のフルメタルモデルも初代スクエアデザインを継承している。
こうした動きの背景には、若者を中心とした「レトロブーム」があるとみられる。
欧米では「チープカシオ」が若者を中心に人気だ。チープカシオとは、ホームセンターなどでも販売されていた、1000円から5000円前後の手頃な腕時計を指す。シンプルで機能性が高く、コストパフォーマンスに優れていることに加え、レトロなデザインがファッション感度の高い若者に支持された。
カシオは業績を伸ばしている。2026年3月期の決算では、営業利益が前期比で約62%増加した。四半期ベースでは、2026年4~6月期の営業利益が前年同期の3.4倍に急伸している。
「米特殊部隊が使う」と言われなくなっても
カシオが販売するようなデジタル腕時計は、かつてスマートウォッチに市場を奪われるとの見方もあった。健康管理や位置情報の取得、外部との通信など、高度な情報処理機能を比較すると、スマートウォッチの方が圧倒的に優れている。
「アメリカの特殊部隊がG-SHOCKを好んで使う」というエピソードは、商品のタフさを象徴するものだった。しかし、最近ではGPS機器メーカーのガーミンが手掛けるスマートウォッチ「タクティクスシリーズ」が使われているとも言われる。弾道計算や座標の参照、降下地点や着地予想地点の算出など、高度な情報処理ができるためだ。
だが、デジタル腕時計の淘汰(とうた)は進まなかった。最近では、双方のすみ分けが進んでいるように見える。
スマートウォッチ大手のガーミンは、2025年通期は前期比15%の増収となり、2026年7~9月期も12%の増収だった。特にスマートウォッチなどを扱うFitness部門は、16%増収と好調だ。2026年通期の売上高予想も、80億5000万ドルから81億5000万ドルへと引き上げた。
なぜ業績が同時に伸びるのか
一方、カシオも2026年4~6月期に20%近い増収を記録している。「スマートウォッチ対デジタル腕時計」という単純な図式そのものが崩れている可能性がある。健康管理や仕事で使うならスマートウォッチ、ファッションや街歩き、アウトドア活動で使うならG-SHOCKなど、消費者が使い分けているのであれば、ガーミンとカシオの両社が業績を伸ばしてもおかしくはない。

ただ、低価格帯のモデルばかりが売れていては、販売数量が伸びても売上高の拡大には限界がある。収益力を一段と高めるには、中価格帯以上のモデルの販売を強化することが重要になる。
G-SHOCKの売上構成において、デジタルモデルとデジタル・アナログのコンビネーションモデルは70~80%を占めている。アナログモデルは約20%にとどまる。新型2500シリーズには、従来のG-SHOCKユーザーだけでなく、アナログ時計を好む新たな顧客を獲得する狙いもある。
レトロなデザインを生かしながら、価格帯と顧客層の両方を広げられれば、カシオの成長を後押しする可能性がある。
Z世代を中心に、アナログ時計への回帰の動きが見られる。カシオが新たに発表した、初代スクエアデザインとアナログを組み合わせたG-SHOCKが、若者にどう受け止められるのか。その売れ行きは、今期の業績を占ううえでも重要な指標となりそうだ。
文/不破聡 内外タイムス






