人手不足の倒産が過去最多、SNSでは外国人労働者問題と結びつける暴論が跋扈
東京商工リサーチは5日、人手不足に関連する倒産の調査結果を発表した。上半期(4~9月)の「人手不足」倒産は、240件(前年同期比17.0%増)と過去最多を記録した。資本金1000万円未満の中小企業が159件で全体の66.2%を占めた。
理由としては、とくに「人件費高騰」が130件(同75.6%増)と1.7倍に大幅に増加し、「人手不足」倒産の半数超(54.1%)を占め、「従業員退職」は67件、「求人難」は43件だった。
産業別ではサービス業ほかの91件が最多で、建設業の55件が続いた。2つの産業で全体の60.8%を占めた。中小企業にとっては人件費上昇が経営を圧迫している実態が浮き彫りになった。
深刻な小売り・流通の人手不足…外国人でも働きやすいファミマの「人財戦略
中小が苦しくなるほど本当に賃金は上がっているのだろうか。厚生労働省は7日、8月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)を公表した。それによれば、物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は、前年同月に比べ1.5%増え、8カ月連続プラスになっている。春闘による賃上げ効果も大きかったため、大手と中小企業では働いている人の感じ方には大きな差がある。
中小企業の“賃上げ疲れ”にはSNSで批判も多い。例えば、漫画家の倉田真由美氏はX(旧Twitter)にこう投稿している。
《適切な賃上げが出来ずに倒産するのは仕方がないこと。「だから海外から人手を!」という話につなげたいとしか思えない》
確かに、このインフレ下で、企業に対して物価上昇以上の賃金アップが求められるのは当然であり、その社会的要請に応えられなければ、残念ながら淘汰(とうた)されるのもやむを得ない。
労働意欲ある日本人はすでに働いている
ただ、倉田氏もそうだが、やたらと人手不足と外国人労働者の問題を結びつけて外国人排斥を訴えるのはいかがなものか。「賃金を上げて日本人を雇え」という意見も散見するが、賃金を上げても人手不足が解消できない産業があるのは厳然たる事実。そして、無理に上げれば、そもそも経営自体が成り立たない。
例えば、コンビニの時給を仮に3000円にしたとしよう。おそらく、すぐに応募は埋まるが、劇的に売り上げが増えない限りその店舗は経営破綻する。そもそも、その応募で集まった人材は、他の店舗で働いていた従業員も多いに違いない。労働者総数が増えたのではなく“移動”しただけである。東京商工リサーチの調査にもあるように、サービス業や建設業では賃金を上げても人材確保は難しい。
ネットには「専業主婦や146万人のひきこもりを活用すれば外国人労働者はいらない」という書き込みも散見するが、机上の“数合わせ”としては正しくても、空論でしかない。
実際、少子高齢化で生産年齢人口(15~64歳)は減少しているが、就業者数(働いている人の総数)は過去最高水準(6700万~6800万人規模)で推移している。女性の就業率上昇やシニア層の再雇用が進んだためだ。日本人で労働意欲のある人はすでに働いている。ひきこもりをどうするかは別の社会課題だ。
そして、SNSでは「企業は賃金の安い外国人労働者を欲しがっている」との見方も多いが、厚生労働省の調査によれば、特定技能外国人の平均月給は約22万1400円で、法律により日本人と同等以上の給料を支払う必要があるとされている。外国人労働者を安くこき使っている企業があるとすれば、それは法令違反である。
文/横山渉 内外タイムス






