中国で硫黄燻製タケノコ問題、インフルエンサーの告発動画で発覚した利益優先の恐るべき実態
未明の豪雨を突いて走る青いトラックを、動画配信者が乗った車がひそかかに尾行する。高速道路を降り、たどり着いたのは人気のない山奥だった。
鼻を突く異臭が立ち込め、周囲の立ち木が枯れ果てたバラック小屋へドローンを飛ばすと、そこには二酸化硫黄の白煙に巻かれ、一晩で不自然な白さに漂白されていく大量のタケノコが横たわっていた。
以前に報道された「ホルムアルデヒド白菜」に続いて中国の食の安全を再び震撼(しんかん)させた「硫黄燻製(くんせい)タケノコ」の摘発は公的機関の検査ではなく、ひとりの配信者による潜入調査によって幕を開けた。
検出された二酸化硫黄は基準値を桁外れに超えていた。だが、この数値以上に重い影を落とすのは、なぜ今回の違法加工が、行政による監督ではなく、ひとりの配信者による潜入調査によって初めて表面化したのかという疑問である。
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告発系配信者による潜入調査
事の発端は環境系インフルエンサーの「漁猟斉哥」による告発動画だった。9月15日、彼と取材チームは広東省・英徳市で買い取られたタケノコを運ぶ青いトラックを追跡した。そして、そのトラックは高速道路を経由しながら人目につきにくい山奥へと入っていった。
そこでは、かなり離れた場所からでも鼻を突く煙の臭いが漂い、周囲の樹木の大半は燻(いぶ)されて枯れ果てていた。
そこで彼らは林の背後から回り込んで燻製小屋に近づき、ドローンを用いて現場の作業員がタケノコを二酸化硫黄で燻製している様子を捉えたのだ。

その後、彼らは18日に動画を公開するのと前後して現地の市場監督部門に通報した。すべて証拠がそろっていたため、現地の対応も迅速だった。
当日のうちに、市場監督部門は通報内容が事実であると発表し、違法製品を差し押さえるとともに、タケノコの流通経路を緊急追跡していると公表した。
「漁猟斉哥」の告発によれば、彼らは現場で燻製・袋詰めされたタケノコを1袋入手したが、開封すると異様な刺激臭が立ち込め、「このタケノコは食べられない、恐ろしすぎる」と語った。
関係部門による検査の結果、このタケノコから検出された二酸化硫黄の残留濃度は4860mg/kgに達していた。中国の法規制では工業用硫黄を食品加工に使用することは禁止されており、硫黄を食品用に加工・処理したものであっても、乾燥果物など一部の食品加工に限定されている。
通常は数日を要するタケノコ加工が一晩で完了
では、なぜ業者は高いリスクを負ってまで硫黄を使うのか。言うまでもなく利益のためだ。
通常のタケノコの加工は工程が煩雑で数日を要するのに対し、硫黄燻製を用いれば一晩で完了する。また、硫黄で野菜を燻製することによって変色を抑え、保存性を高める効果がある。
過去には同様にタケノコを硫黄で燻製した事例や、白キクラゲ、トウガラシを硫黄で燻製して摘発された事例が発生している。中国でも、こうした食品への違法加工は懲役刑が科されるほか、懲罰的な損害賠償が待ち受けている。
刑罰は決して軽くはない。それにもかかわらず、過去にも同様の事件が繰り返し摘発されている。問題は罰が重くないことにあるのではなく、摘発される確率が極めて低いことにある。
こうした場所で夜間に行われる違法加工を、通常の監督で発見することは容易ではない。結果として、発覚するかどうかが偶然に左右される状況が生まれる。
違法行為によって得られる利益が摘発されるリスクを上回っている限り、この危険な賭けに打って出る者は必ず現れる。
違法業者を行政が発見できない現実
告発の詳細を見ると、問題の拠点からは製品を省外へ運ぶ車両が存在し、加工規模も工業化された様相を呈していた。このことから、硫黄燻製タケノコという違法行為は一時的なものではなく、長期にわたって存在し、常態化していた可能性が高い。
今回の事件は、ひとりの配信者によって違法加工の現場が暴かれた事例である。しかも、硫黄による食品加工そのものは今回初めて確認された手法ではない。
そう考えると、問題は「なぜ違法業者が存在したのか」だけではない。なぜ行政による日常的な監督では発見できず、配信者による潜入調査が必要だったのか。過去にも類似事例が存在するなかで、監督の網から漏れ続けていた理由は何なのか。
被害を受ける無数の消費者と、泥を塗られた誠実な生産者を守る責任は、本来行政が背負うべきものだ。監督機関が摘発を偶然から逃れられない必然へと変えられたとき、初めて食卓に本当の平穏が戻るのだろう。
文/下川英馬 内外タイムス






