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中国で困窮者を狙う自動車ローン詐欺が横行、独居老人が車を見ることすらないまま多額の負債

日本ではEVに代表される中国の自動車事情が頻繁に報道されるが、その急成長の隙間を突く形で、組織的な犯罪も深刻な問題になっている。今回は中国中央テレビ(CCTV)において報道された自動車ローン詐欺を紹介する。

この事件は四川省を発端とする、被害総額が3000万元(約6億6千万円)を超える組織的詐欺だ。この事件の被害者は、70代の生活保護受給者、障害者といった社会的地位が低い人々である。

自動車を購入する貯金などまったくなく、「ローン」の意味すら理解していない彼らが、契約書にサインした結果、わけも分からぬまま数十万元(数百万円)もの借金を背負わされる。彼らは「借金背負い役」と呼ばれる、自動車ローンの違法ビジネスチェーンの最底辺となっている。

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「もらった金は山分けしよう」と持ちかけられ…

被害者である王さんは、70歳を過ぎ、身寄りもなく毎月数百元の生活保護だけで暮らす独居高齢者だ。社会の底辺で暮らすこの老人が、数年前から執ような借金返済の督促電話やショートメッセージに悩まされるようになった。そこで初めて、自身名義で20万元余りものローンが組まれている事実を知ったのである。

しかし、王さんは自らローンを申し込んだ覚えなど一切なかった。では、この融資はどこから生じたのか。記憶をたどると、数年前に市場へ出かけた際、見知らぬ中年女性から声をかけられたことを思い出した。

「ローンを組む手伝いをしてあげる。もらった金は山分けしよう」と持ちかけられたのだ。言われるがまま自動車ディーラーへ行き、わずか2カ所に署名しただけで、王さんは20万元もの負債を背負わされた。

約束された金は一銭も受け取っていない。車も手に入らず、金ももらえないまま、身に覚えのない債務者に仕立て上げられたのだ。

役割分担された組織犯罪の全貌

事件の発端は、4年前に同省の自動車ディーラーから寄せられた被害届にさかのぼる。

2022年、四川省の自動車ディーラーは30万元近いSUVを販売した。顧客は頭金10万元を支払い、20万元の分割ローンを組んだ。警察が調査したところ、購入者は小さな雀荘を営む53歳の女性で、安定収入はなく、ローンで車を購入して毎月の返済を行う能力など持ち合わせていなかった。

ところが彼女は半月の間に四川省と重慶市で2台の高級車をローンで購入。その総額は50万元超、ローンは30万元を超えていた。そしてナンバー登録からわずか1週間以内にすべて転売され、ローンの返済は踏み倒されていた。

捜査を進めると、役割分担された違法ビジネスチェーンの全貌が浮かび上がった。

フロント:調達役

信用情報に事故歴がないターゲットを探し出す担当。ターゲットの多くは低学歴層や障害者であった。

ミドル:司令塔

主犯格であり、ローンに必要な書類の偽造から審査、納車に至る詐欺プロセス全体を統括していた。

バックエンド:換金役

中古車販売店の経営者が頭金を支払い、車両を引き取って現金化する役割を担った。

被害車両180台以上、被害総額3000万元以上

犯罪グループは中高年の無職、低所得者といった、信用情報に傷はないが誘惑に弱い層を標的に定めていた。「契約書に何カ所かサインするだけで高額の報酬が得られる」と甘言を弄(ろう)し、自動車ローン業界に魔の手を伸ばしたのである。

警察の捜査により、主犯格、仲介役、資金提供者、中古車ブローカーなど計60人以上の関係者が逮捕され、被害車両は180台以上、被害総額3000万元以上に及ぶことが判明した。

この事件は氷山の一角に過ぎない。中国では違法ビジネスチェーンが関与する金融犯罪が多発している。購入書類を偽造して融資をだまし取る手口や、車両を詐取して金融機関に数百万元規模の損害を与える手口が横行している。

こうした社会的弱者を食い物にする手口は、決して海を隔てた遠い国の話ではない。日本国内でも近年、SNSや闇バイトを通じて高級ミニバンなどのローンを組まされる被害が後を絶たない。「安易なサイン一つが人生を破滅させる」という教訓は、私たちの足元においても重く響いている。

文/下川英馬 内外タイムス

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