中国「中連部長」が訪朝か トランプ訪中で動き出す中朝外交、金正恩との米朝会談を仲介も
トランプ米大統領の中国訪問を前に、中朝関係が急速に動き始めている。
トランプ氏は11月18、19日に中国・深圳で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席する予定で、習近平国家主席との首脳会談も見込まれている。
米中首脳会談では、関税や貿易、半導体、台湾問題などが主要議題となる見通しだ。朝鮮半島情勢も取り上げられる可能性がある。
トランプ氏は、11月の訪中のタイミングを利用して北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党総書記との首脳会談を実現し、外交成果をアピールしたい思惑があるとみられる。
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劉海星部長の平壌訪問浮上
そのタイミングに合わせるように、中国共産党の対外関係を担当する中国共産党中央委員会対外連絡部(中連部)のトップ、劉海星部長が近く北朝鮮・平壌を訪問するとの観測が浮上している。中朝関係に詳しい関係者が筆者に明らかにした。
実現すれば意味は大きい。中国が北朝鮮に米国との対話を促し、米国側には「北朝鮮との対話には中国の協力が必要だ」と存在感を示すことができるからだ。米朝首脳会談の地ならしを中国が担う可能性もある。
中国には別の狙いもありそうだ。軍事協力などを通じて急接近する北朝鮮とロシアの関係をけん制し、北朝鮮への伝統的な影響力を再び強めたいとの狙いである。
北朝鮮側にも計算がある。米国との対話を通じ、核保有国としての事実上の容認や、経済制裁の緩和などを引き出すのは長年の念願である。
外務省から中央国家安全委員会に転じた異色の経歴
2025年9月30日に中連部長への就任が公表された劉海星氏は、歴代の中連部長と比べても異色の経歴を持つ人物だ。
北京外国語学院のフランス語学科で学び、1985年に外務省入り。フランスの国立行政学院(ENA)などで学んだ。在フランス中国大使館公使、外務省欧州局長などを歴任した。
異色なのは、むしろ2017年に外務省を離れてからの歩みだ。
まず、中央国家安全委員会弁公室副主任に転じた。2022年7月には、同弁公室で日常業務を担当する副主任に昇格した。
中央国家安全委員会は、国家安全保障政策を統括する重要機関である。劉氏は外交だけでなく、国の安全保障の分野でも経験を積んできた。
北朝鮮との関係でも重要な役割を果たしてきた。4月には北京で李龍男・駐中国北朝鮮大使と会談し、朝鮮労働党第9回大会の内容について説明を受けている。
6月には習近平国家主席の訪朝に同行。劉氏は訪問終了後、随行記者に対して中朝首脳会談の成果を説明した。
中連部は政府間外交を担う外務省とは別に、中国共産党と外国政党を結ぶ「党対党外交」の重要なルートである。中国共産党と朝鮮労働党との関係では、とりわけ重要な役割を担ってきた。
過去にも中連部長は、中朝外交の節目に訪朝している。
王家瑞部長(当時)は、北朝鮮の核問題や金正日、金正恩両体制の移行期に何度も平壌を訪問した。中国指導部の親書を携え、北朝鮮最高指導部と直接対話することで、中朝間の意思疎通を維持してきた。
2017年11月には宋濤部長が習近平総書記の特使として訪朝した。中国共産党第19回党大会の結果を伝えるとともに、核・ミサイル開発で軍事的緊張が高まっていた北朝鮮との意思疎通を図った。
その後、中朝、南北、米朝の首脳外交が相次いだことを考えれば、宋濤氏の訪朝は重要な接触の1つとなったのは間違いない。
12年間眠っていた「新鴨緑江大橋」にトラック走行
中連部をめぐる動きとタイミングを合わせるように、中国・丹東と北朝鮮・新義州を結ぶ「新鴨緑江大橋」にも変化が起きている。
中国側の負担で建設が進められ、2014年には橋本体が完成した。しかし北朝鮮側の接続道路や税関など関連施設の整備が進まず、約12年間にわたって事実上使われない「眠った橋」だった。
ところが今年に入り、北朝鮮側で税関、出入国管理、検疫などを備えた複合施設の整備が進展し始めた。9月には橋の上を大型トラックが走行する姿も確認され、試験運用が始まったとの情報も出ている。
10月6日の中朝国交樹立77周年に合わせた開通説も浮上したが、同日に正式な開通式が行われた事実は確認されなかった。
一方、北朝鮮側の施設整備や車両の往来は続いている。地元の丹東市では、今月中にも正式開通するとの見方が強い。
新鴨緑江大橋が本格的に稼働すれば、中国と北朝鮮を結ぶ新たな物流ルートとなる。長く停滞してきた中朝経済交流が動き出す象徴になる。
日本と韓国も動く
韓国も北朝鮮への働きかけを続けている。
韓国では9月、非武装地帯(DMZ)で地雷が爆発し、韓国兵が負傷した。韓国側は北朝鮮が埋設した地雷と判断している。
その一方で、韓国政府は北朝鮮への医療機器支援を進めている。平壌市江東郡病院に対し、X線装置や手術台、除細動器、人工呼吸器などを含む医療機器を提供する計画だ。
軍事的な緊張が続く中でも人道協力を進め、南北協力の糸口を探ろうとする韓国政府の姿勢が表れている。
高市早苗首相も、米朝首脳会談を見据えて動いている。
9月の日米首脳会談では、トランプ大統領に対し、金正恩総書記と会談する際には自らとの日朝首脳会談も働きかけるよう要請した。米朝関係が動けば、拉致問題を抱える日本が蚊帳の外に置かれる可能性があるためだ。
韓国の国家情報院(国情院)は9月末、国会情報委員会に対し、11月のAPEC首脳会議前後に米朝対話が実現する可能性を「50%程度」と分析していると報告した。この席で国情院は、北朝鮮側も今回の外交的な機会を逃さないよう動いている、との見方も示している。
北朝鮮にとっては有利な状況だ。中国、ロシア、米国、日本、韓国をそれぞれ競わせることで、自国に有利な環境をつくることができるからだ。
トランプ大統領の訪中を契機に、北東アジアの外交がいっそう活発化しそうだ。
文/五味洋治 内外タイムス






