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エイチ・アイ・エスが90億円の黒字予想から一転して10億円の赤字に ホテルの土地取得は吉か凶か

旅行会社大手のエイチ・アイ・エスが、2026年10月期は10億円の純損失を出す見込みとなった。従来予想は90億円の純利益で、通期予想を100億円引き下げて赤字に転落する。

赤字の主要因となっているのは、エイチ・アイ・エスが展開する「グアムリーフホテル」が借りている土地を取得したことに伴い、賃貸借契約のリース解約に伴う損失約60億円を特別損失として計上したことだ。

会社側は土地を取得したことにより、年間数億円の賃借料負担軽減が見込まれ、土地と建物をセットで所有することで資産の流動化等の選択肢が増加すると説明している。

資産の流動化とは、不動産を証券化するなどして資金調達をする手法のことだ。しかし、対象不動産が生み出す収益力が重視されるため、十分な資金を調達できるかについては疑問の余地がある。なぜなら、グアムの日本人旅行者は激減しているからだ。

グアムの観光客は激減している

在ハガッニャ日本国総領事館によると、2019年のグアム旅行者は166.6万人で、そのうち日本人が4割の68.4万人を占めていた。しかし、2024年の日本人来島者数は20.8万人だったという。日本人旅行者は全盛期の3割ほどなのだ。2025年も23.8万人程度だったようだ。

日本は円安基調が続いており、物価高で節約志向も高まっている。この状況が続く限り、グアム旅行者が2019年の水準に回復するとは考えづらい。

グアムのホテル市場が中期的に回復することへの期待感は、今のところ薄そうだ。2025年6月にエイチ・アイ・エスと同じくグアムのタモン地区にある「ザ・ウェスティン・リゾート・グアム」が売却されている。ウェスティンはマリオットグループのプレミアムブランドだが、有名ホテルでさえ集客には苦戦をしているのだ。

エイチ・アイ・エスはホテルの売却ではなく、賃料負担が減るとはいえ60億円もの損失を出してまで土地の取得を決めたわけだ。集客に相当な自信があるのだろう。

総取扱高1兆円という高い目標を掲げるが…

2026年10月期の通期見通しについては、本業の稼ぎである営業利益を20億円引き下げた点も見逃せない。従来は通期営業利益を140億円としていたが、120億円としたのだ。

減益要因になっているのが中東情勢の緊迫化だ。今年2月28日にアメリカとイスラエルによるイラン攻撃が発生すると、送客数が多い3月とゴールデンウィークを含む4月出発に影響が出た。ドーハ・ドバイ・アブダビ各空港での乗継便を利用した主に欧州方面の催行を中止したのだ。

それ以外にも、ヨーロッパ方面やトルコ、エジプトでの新規予約も鈍化。原油価格高騰で燃料サーチャージが急騰したことなども、計画下振れの要因となった。

こうしたなか、エイチ・アイ・エスは12日に中期経営計画を発表した。2030年度に総取扱高1兆円、営業利益250億円の達成という野心的な目標を掲げたのである。

成長時のデフレ、円高とは構造が違う

成長戦略の中核にあるのは日本人向け旅行事業で、原点である日本発海外旅行事業に磨きをかけて他社を寄せ付けない確固たるポジションを築くという。

エイチ・アイ・エスはデフレ下の日本で格安海外旅行を手がけて急成長した会社だ。1995年に上場し、2004年に東京証券取引所市場第一部に指定替えとなった。2004年といえば、ドル円が100円台で推移していた時代だ。円がドルよりも相対的に強く、海外旅行をしやすかった時代である。

エイチ・アイ・エスは旅行におけるオリジナルコンテンツを開発し、デジタル技術によるマーケティングの強化などによって成長する青写真を描いている。しかし、インフレと円安という構造的な変化が訪れる状況下で、需要を掘り起こすことなど容易ではないだろう。

それであればなおのこと、保有するホテルなどの資産を売却し、日本発海外旅行事業に経営資源を集中すべきだったようにも見える。

文/不破聡 内外タイムス

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