【田母神俊雄のニュース・レビュー】日本経済再生の決め手は大幅減税だ
1.国民負担は増えたのに、なぜ国民生活は豊かにならないのか
日本経済低迷の原因は高すぎる国民負担率にある。1975年度には約25.7%だった国民負担率は、2025年度には約46.1%に達した。50年間で約20ポイントも上昇している。税は財源ではないのに、プライマリーバランスとか意味のないことを言って増税路線を進めた結果が今日の惨状である。
その結果、バブル崩壊以降の約30年間、国民の賃金や実質的な購買力はほとんど伸びず、日本国民は次第に貧しくなっている。賃金が伸びない中で、国民から徴収する税金や社会保険料は増えて、国民の手元に残るお金は減っていく。
これでは消費が活発になるはずもなく、企業の売り上げも伸びず、賃金も上がらないという悪循環に陥る。GDPの半分以上は個人消費によるから、個人がお金を使わなければ日本経済の再生はない。
2.世界が成長するなか、日本だけが取り残された
かつて日本は、米国に次ぐ世界第2位の経済大国だった。しかし、今ではその地位は中国に奪われ、近年はドイツにも抜かれた。IMF(国際通貨基金)の見積もりでは来年度にはインドとイギリスにも抜かれ、米ドルベースGDPで世界第6位に後退するという。
もちろん、名目GDPのドル換算順位は為替相場にも左右される。しかし、順位の低下を為替だけの問題として片づけることはできない。日本政府による、できるだけ国債を発行せずに政府支出を抑制するという緊縮財政政策が長期不況を招いてきたのだ。
国債発行は借金ではないのに、これを借金と説明し、60年償還ルールを作って予算を組んで国債を償還している。令和8年度一般会計予算は122兆円であるが、その中に31兆円の国債費というのがある。うち国債の利払い費を除くと、18兆円が国債償還費として国庫に返納される。国庫に返納されればお金は消えてしまう。18兆円分予算は減額されているのだ。
3.なぜ政府は減税に踏み切らないのか
経済再生のために必要なのは、国民の可処分所得を増やし、消費と投資を活性化させることである。そのためには、小幅な減税にとどまらず、所得税、消費税、社会保険料などを含む大幅な負担軽減を検討すべきだ。
消費税を2年間だけ引き下げるという措置では、家計の将来不安を払拭し、長期的な消費拡大につなげるには不十分である。期限付きの措置よりも、恒久的な減税や社会保険料負担の軽減によって、国民が将来にわたって使えるお金を増やすことが重要だ。
減税に反対する際、必ず持ち出されるのが財源論である。しかし、政府の財政を家計の財布と同じように考えるのは間違いである。日本政府は円建て通貨を発行できる制度の下にあり、国債発行によって財政支出を行うことができる。国債発行を家計の借金と同じように捉え、財政赤字の抑制を優先する日本の財政運営には問題がある。
4.国民が豊かになる経済政策へ転換せよ
政府が目指すべきなのは、税収や財政規律そのものを目的とすることではない。国民が安心して働き、消費し、子どもを育て、将来に希望を持てる社会をつくることである。
国民負担率が上昇する一方で、実質所得と経済成長が長く停滞してきた現実を重く受け止めるべきだ。必要なのは、国民にさらなる負担を求めることではなく、国民の手元にお金を戻し、消費と投資を促す政策への転換である。
大幅減税は、単なる人気取りではない。国民生活を立て直し、日本経済を再生するための重要な選択肢である。国債発行は借金であり、これ以上借金を増やせないから増税をするという考えを修正しなければならない。
第29代航空幕僚長 田母神俊雄






