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【演芸諸行無常】上の助空五郎、花形演芸大賞の栄冠にも「うわのそら」にならず寄席挑戦

ここ数年、演芸ファンの間で一挙に知名度がアップした芸名がある。

上の助空五郎。

ついつい「うわのそら」と言いそうになる。正しくは「うわのすけ」。「うわのすけそらごろう」と読む。 

今月7日、七夕の夜に開催された「花形演芸会スペシャル~受賞者の会~」。その中で行われた「花形演芸大賞贈賞式」でも「うわのそら」と言い間違えられた。「覚えやすいようで間違いやすい芸名なんですよ」と本人も承知している。私はパソコンに文字登録しているので、書き間違うことはない。

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上の助空五郎という芸名を初めて目にしたのは2024年7月22日。花形演芸会の出演者として、存在を初めて認識した。17年には芸名BARONとしてボーイズ・バラエティー協会に所属し、20年に上の助空五郎に改名して活動していたのだから、演芸を見聞きすることを生業とする者としてはもっと早く気づかないといけないと反省しました、ハイ。

衝撃的な芸だった。洗練されていて、心地よくて、快適で時々毒。類似の芸をやる人がいない。

ジャンルはヴォードヴィル。日本ではなかなかピンとこない定義の芸の領域だが、要するに何でもあり、と考えてしまっても問題ない。空五郎はギターやウクレレを弾き、歌を歌い、くち三味線ならぬくちトランペット、くちトロンボーンを吹き、木製のスプーンを楽器に変え、タップダンスや帽子のパフォーマンスもお手の物で、自分ができる一切合切をふわっと組み合わせて上質なショータイムを構成する。

「全力で力を抜いて歌いたい」

何よりも声が心地良すぎて、空五郎の強味である。ボサノバの大スター、ジョアン・ジルベルトを彷彿(ほうふつ)とさせる歌声で、岐阜弁の「イパネマの娘」やジャズの名曲、民謡などを歌う。歌声に聴覚が誘惑され、三半規管がくすぐられる。平和な心持ちにもなれる。

本人いわく「自分の芸は扇風機で言えば、強でも弱でもなく微風」「雲の中をさ迷っているようなふわふわした芸」。要するに引きの芸である。先日の贈賞式でも「今後とも全力で力を抜いて歌いたい」と脱力を誓った。

24年に花形演芸会に初登場した空五郎は、その年(令和5年度)の銀賞を受賞。翌25年(令和6年度)にはカテゴリーが上の金賞を獲得。そして26年(令和7年度)には大賞の栄冠をつかみ取ったのである。

わずか3年、最少年数で銀賞から大賞へと駆け上ったことで、冒頭に記したように演芸ファン周辺での知名度が跳ね上がった。

自らの芸をもっと広く演芸ファンに届けるため、空五郎は昨年、落語協会(林家正蔵会長)に入会した。まずは準会員として代演(他の芸人が休む時に代わりに出演すること)をこなし、しくじりや不祥事がなければ1年後には正会員の色物芸人となる。

「代演に呼ばれるのは出番が浅い(=早い)時間。客席をあっためなきゃいけないので、僕みたいな引きの芸だとどうなるか。いきなり押しの芸になったりして(笑)」という会話をほんの数日前、本人とかわしたばかりだ。

ドラスティックな芸風の変化はないにしても、空五郎の芸が、寄席の時空間にどのように溶け込み、静かに響き渡るのか。早く目撃したい。

取材・文/渡邉寧久 内外タイムス

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