上場廃止の瀬戸際に立つニデック 永守重信体制からの転換で「東芝化」を阻止できるか
ニデックが上場廃止の危機に直面している。9月30日に提出した有価証券報告書に含まれる連結財務諸表などに対して、監査法人のPwC Japanが2期連続で「監査意見」を表明しなかった。必要な資料をニデックから入手できず、適切な監査を実施できなかったことを意味する。
同社は、10月末までに「内部管理体制確認書」を東京証券取引所に提出する予定だ。東証は提出された資料を審査し、今年中に上場維持・廃止の判断を行う。
監査法人が問題視しているのは、提出する資料自体の信頼性だ。不適切な会計処理に関与したり、指示したり、認識していたりした人が、現在も財務報告の責任を負う立場にいる。それだけでなく、資産やのれんの減損が合理的であると裏付ける証拠も不足している。
大乱高下したキオクシアの株 1千万円超の損失、2兆円の利益が飛び交う悲喜こもごも
ニデックは2026年3月期に6321億円もの減損損失を計上し、最終赤字は5646億円となった。だが、同社には巨額の損失を計上することや社長を交代させることだけでなく、数字の正確性や根拠、人員配置を含む体制が適正であるかどうかも問われている。
10月1日の社長就任会見に臨んだ戒田理夫氏は、監査法人の指摘を受け入れ、上場維持を目指す姿勢を示している。会見にはPwC Japanの代表執行役である久保田正崇氏も同席し、監査での「意見不表明」の理由を説明。期限までに資料を提出する姿勢を示した。
しかし、この時点では必要な証拠をそろえる見通しが立っていたわけではない。
創業者より株を持つ「ファンド」の狙い
ニデックの不正会計とよく似ているのが、産業ガスや医療機器などを手がけるエア・ウォーターだ。同社でも、業績目標の達成を最優先する企業風土やトップダウンの組織運営、グループ会社を管理する内部統制の不備などが問題視された。
ただし、エア・ウォーターの2026年3月期の連結財務諸表に対して、あずさ監査法人は「限定付適正意見」を表明している。監査法人側は一部の情報について「正しい数字」であることを確認できなかったものの、決算情報そのものを信頼できない、という結論にはならなかったようだ。
一方のニデックは、資料や経営者の説明の信頼性に対する懸念が決算全体に及び、監査法人は「未発見の誤り」の影響を限定できていない。この違いが、監査意見の違いにつながった。
上場維持への対応と並行して、ニデックは大株主から経営の選択肢を広げるよう求められている。物言う株主として知られる投資ファンドのオアシス・マネジメントが、非上場化の検討を求めているのだ。
オアシスが10月15日に提出した変更報告書では、ニデック株の保有比率が7.97%から9.00%に上昇したことが明らかになった。
創業者である永守重信氏の保有比率は3月31日時点で8.61%。つまり、永守氏の資産管理会社「エスエヌ興産」を除けば、オアシスがニデックの筆頭株主になったことを意味する。
オアシスは10月7日の声明で、上場維持への取り組みと並行して社外取締役主導で買収候補を探すよう要求。独立したアドバイザーを起用し、国内外の事業会社や投資ファンドから初期提案を募るよう求めたのだ。
この動きには既視感がある。2015年に不正会計問題が発覚した電気機器大手の東芝だ。
「物言う株主」同士で団結
不正の発覚後、経営陣の刷新や東芝メモリ(現・キオクシア)の売却、約6000億円の増資などを進めたが、その過程で株主構成が大きく変わり、物言う株主たちの意見が通りやすくなった。

2022年、物言う株主の3Dインベストメント・パートナーズは、投資ファンドなどから買収提案を募るよう求める株主提案を行った。オアシスはこの提案に賛同し、東芝が提案した「事業分割案」に反対した。
当時の東芝は不正会計で信頼が揺らぎ、相次ぐ減損損失で経営危機に直面していた。オアシスは外部資本による再建を検討すべきだと判断したことになる。
東芝の場合、会社の運営方針をめぐる対立が「迷走」の原因になっていたが、ニデックの経営陣は、本業の立て直しに向けた方針を明確にしている。
家電・車載事業のうち、収益性や成長性が低い分野を見直し、AI・半導体関連機器、発電・蓄電などのエネルギー分野や工作機械などに経営資源を移す計画だ。
10月1日には、電子部品を製造するニデックコンポーネンツを、投資ファンドのカーライルに売却すると発表。事業の選択と集中を進める姿勢も示した。10月20日に公表した役員責任調査委員会の報告書では、利益目標を優先し、損失処理を先送りしていた経緯や歴代経営陣の責任が詳述された。
2025年に不適切会計の疑惑が浮上すると、永守氏らによる過度な業績至上主義の風潮、パワハラや雇い止め問題なども相次いで明らかになった。監査対応と事業再編を進めつつ、長年にわたり形成された組織風土を改められるだろうか。
文/不破聡 内外タイムス






