個人情報が漏えいしたときの4つのポイント 名前や連絡先だけでも危険、免許証流出なら不正契約にも警戒
「あなたの個人情報が漏えいしました」。利用しているサービスから通知が届いても、何が危険で、どう動けばよいのか分からない人は多いだろう。判断の手掛かりになるのは、漏えい件数だけでなく「どの情報が漏れたか」だ。
「焼肉きんぐ」を運営する物語コーポレーションは5日、公式アプリの会員情報約1079万件の漏えいを公表した。対象は会員番号、登録名、メールアドレス、電話番号。パスワードは漏えい対象に含まれず、クレジットカードなどの決済情報は保有していないという。公表時点で、漏えい情報の公開や不正利用は確認されていない。
一方、タイムズカーを運営するタイムズモビリティは先月、約660万アカウントに関する本人確認書類の漏えいを確認したと発表した。対象には運転免許証画像のほか、現住所確認書類、学生証、家族関係を確認する書類などが含まれる。こちらは連絡先の漏えいに加え、本人確認書類の悪用も考える必要がある。
660万件、1078万件…情報漏えいは「防げない」時代に 企業に渡す情報を減らす自衛策は
名前を知っている相手でも、信用できない
登録名と連絡先が漏れると、本人に合わせた詐欺メールやSMS、電話に利用されるおそれがある。
例えば、「情報漏えいへの補償手続きです」「会員情報を再登録してください」と、利用している店の名前や自分の名前を挙げて連絡されれば、信じてしまうかもしれない。これは想定される手口であり、今回の漏えいで実際に発生したと確認された被害ではない。ただ、物語コーポレーションも、同社を装う不審なメールや電話への注意を呼び掛けている。
大切なのは、相手が自分の名前を知っていることを、正当な連絡の証拠にしないことだ。届いたメッセージのリンクから手続きせず、普段使っている公式アプリや、自分で開いた公式サイトから確認したい。
もし不審なサイトにパスワードやカード情報を入力してしまった場合は、連絡を待たず、正規の窓口でパスワード変更やカード会社への相談を進める必要がある。
免許証画像は、なりすまし申込みの材料にも
本人確認書類の画像が漏れた場合は、警戒する範囲が広がる。
第三者が本人になりすまし、クレジットカードやローン、携帯電話端末の分割払いを申し込む材料にするおそれがある。CICも、不審な相手に本人確認書類の画像を送信した場合について、こうした悪用の可能性を案内している。
預金口座の開設を試みられるリスクも考えられる。ただし、書類画像があれば必ず契約や口座開設ができる、という意味ではない。本人の顔やICチップ情報などを確認する方法もあり、実際に悪用が成功するかは、金融機関等の本人確認方法やチェックによって異なる。今回の漏えいを、そのまま不正契約の発生と結び付けることはできない。
「本人申告」は使えるが、万能ではない
本人確認書類の漏えいで名義の悪用が心配な場合、検討したいのが信用情報機関の「本人申告」制度だ。
日本信用情報機構(JICC)、CIC、全国銀行個人信用情報センターには、本人確認書類の紛失や名義悪用のおそれなどを登録する仕組みがある。加盟会社がローンやクレジットの審査で信用情報を照会した際、その申告を確認し、本人確認や審査を慎重に行うための材料になる。JICCは、書類の現物が手元にあっても、画像などの情報が流出した場合を登録対象として示している。
ここで誤解したくないのは、本人申告は、延滞などを記録する「事故情報」ではなく、注意喚起のための情報だという点だ。また、無断契約を一律に禁止する登録でもない。審査の判断は各社が行い、不正利用を必ず防げる制度ではない。
特に全国銀行個人信用情報センターは、照会が与信取引上の判断に限られ、預金口座開設時には行われないと明記している。「登録したから、銀行口座のなりすましも防げる」とは考えない方がよい。
各機関の公式サイトで対象や手続きを確認し、自分に必要な登録を検討したい。
身に覚えのない請求は、放置しない
漏えい通知が届いたら、まず、自分について何が漏れたのかを確認し、通知を保存する。その後もカードや口座の利用明細、契約に関する郵便物などを確認したい。
身に覚えのない契約通知や請求が届いた場合は、そこに記載された連絡先をうのみにせず、契約先の公式窓口に連絡し、申し込みをしていないことを伝える。必要に応じて自分の信用情報を開示し、知らない契約などが登録されていないか確認することも考えられる。ただし、信用情報の開示だけで、すべての不正利用を把握できるわけではない。
企業にも、「不審な連絡に注意してください」という呼び掛けに加え、漏れた情報の種類、想定される悪用、利用者が取れる対策を具体的に示す説明が求められる。
連絡先が漏れた場合と、本人確認書類まで漏れた場合では、備えるべきことが違う。通知を受け取った人が次の行動を選べる説明こそ、情報漏えいへの対応には必要だ。
文/松本理平 内外タイムス






