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「転職はもう古い」は本当か 注目集まる「ビッグステイ」のメリットと企業が抱える懸念点

労働市場の風向きが変化を見せ始めた。数年前まで話題を集めた離職ブームは陰りを見せ、会社を辞めずに現在の職場へ留まり続ける「ビッグステイ」と呼ばれる現象が注目を集めている。

アメリカのエコノミストが提唱したこの言葉は、転職者よりも同じ会社に留まる労働者の賃金上昇率が上回る逆転現象を指す。4月にマイナビが発表した調査でも、今後の採用活動において求職者の定着傾向が続くと見込む企業が約8割に達しており、従来の「キャリアアップ=転職」という認識に変化が生じつつある。

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背景にあるのは、企業側の慎重な採用姿勢とベースアップの実施だ。人手不足が叫ばれる一方、企業側は求める条件を満たさない応募者の採用を見送り、特定の経験や技能を持つ人材に絞る「厳選採用」を強化している。

これにより転職による大幅な昇給が難しくなった反面、同じ会社に留まることで高水準の賃上げを受けられる環境が整った。実際、同社の調査によると、20代の約27%、30代の約24%が「4%以上」の賃上げを受けたと回答しており、社内に留まる経済的な利点が再評価される結果となった。

働く側にとっても、同じ会社に残るメリットは少なくない。環境を変えた直後の一時的な給与増加に比べ、着実な昇給の積み重ねが中長期的な生涯賃金で上回るケースがあるためだ。退職金制度や長期雇用を前提とした人事体系を考慮した場合、離職が生涯報酬の減少リスクとなる可能性もある。社内での部署異動や職種変更を通じてスキルを身につける選択肢も機能している。

ネット上でも労働環境の変化に対する関心は高い。「社内で新しい業務に手を挙げた方が経験の幅が広がる」「福利厚生や退職金を維持して残る方が合理的」と定着を前向きに捉える意見がある一方、「リストラなどで動けない層が留まっている側面もある」「社内秩序や人間関係を重視する日本企業の体質では、流動化が進みにくいだけ」と冷静に捉える声も聞かれる。

一方、企業側にとってもビッグステイ現象は課題となる。主な懸念は組織の硬直化だ。離職率の低下は良好な指標に見えるものの、最低限の業務しかこなさない従業員の増加や中高年層のポスト固定化を引き起こし、若手社員のモチベーション低下を招くリスクも指摘される。

さらに、外部の市場原理が働きにくくなる分、社内評価制度の厳格化がより強く求められるだろう。成果を出している社員への適切な還元や、明確なキャリアパスの提示を怠れば、残ってほしい優秀な層から順に離脱する悪循環に陥りかねない。

社員には「単なる現状維持ではなく社内で市場価値を高める姿勢」が、企業には「優秀な人材をひきつけ続ける教育投資や公平な人事制度の構築」が求められており、離職から定着へと潮目が変わる中で、双方の真価が試されることになりそうだ。

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