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北朝鮮留学生のキャンパスは養豚場…「奨学金」は事実上の給与、ロシアの学校が国際制裁逃れの窓口に

「北朝鮮から来た留学生」のはずなのに、向かった先は教室ではなく養豚場――。そんな驚くべき実態がロシアで浮上した。

北朝鮮に対する国連制裁の履行状況を調査している多国間制裁監視チーム(MSMT)が16日に公表した報告書で指摘した内容だ。

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報告書によれば、現在ロシアには推計1万5000~3万人の北朝鮮人労働者が存在する。世界全体では少なくとも17カ国で3万5600~10万1280人が活動し、年間4億5000万~8億ドルを生み出していると推計されており、ロシアは中国に次ぐ受け入れ国だ。

そのロシアでは近年、学生ビザを利用した入国が急増しており、軍事用ドローン製造、鉄鋼、造船、農業などの現場に労働力として投入されているという。

北朝鮮による海外労働者からの外貨獲得を制限するため、国連安全保障理事会(安保理)は決議を出し、加盟国に対して北朝鮮労働者の新規受け入れを禁止し、国外で働く労働者の送還を義務付けている。

ところが、「労働者」ではなく「学生」や「研修生」の名目でビザを取得すれば、制裁の網をすり抜けて合法的に入国できてしまう。

そこでロシアでは「抜け道」として小規模な学校や大学が利用されている。モスクワのソデイストヴィエ・カレッジ(芸術人文カレッジ)もその1つだ。名前こそ大学風だが、実態は職業教育などを行う非営利教育機関である。

27億ルーブルの「奨学金」

MSMTの報告書は韓国の人権団体の調査を引用し、2023年10月から2025年6月までに、少なくとも76のロシア企業がソデイストヴィエ・カレッジを経由し、北朝鮮人に総額27億ルーブル超を「奨学金」名目で支払っていたと指摘した。

北朝鮮人「学生」に支払われた奨学金は月額1万8000~25万ルーブル(約3万〜47万円)にのぼり、2024年のロシアの平均奨学金と比べ最大66倍に達する。

この学校が外国人留学生に対し、気前良く多額の奨学金を出しているわけではない。これは実質的に、労働に対して支払われた「給与」なのだ。

教室ではなく養豚場へ

MSMTの報告書によれば、北朝鮮人が学生や研修生などの資格で教育機関に登録されながら、実際には「現場研修」の名目で労働現場に配置され、教育活動にはほとんど参加していなかった。

多くの現場で1日11〜18時間、週6日以上の過酷な労働が課されているとされる。 実際にロシア極東に位置する太平洋岸の港町、ウラジオストクの養豚場には、ソデイストヴィエ・カレッジの留学生名目で20代から30代の北朝鮮人女性約10人が派遣され、月給700ドル(約11万円)で豚への給餌や豚舎の清掃などに従事させられていた事例が確認されている。

入国書類には「学生」と書かれているのに、その先に待っていたのは教科書でも学校でもなく過酷な労働現場だった。

さらにその給与は、「忠誠資金」などの名目で北朝鮮当局や留学あっせん組織に強制的に差し引かれ、労働者本人の手元にはほとんど残らない。

ロシア政府も黙認か

労働者の「留学生偽装」問題は、国際的にも関心を集めている。

米紙ニューヨーク・タイムズも今年9月、「金正恩の新たな権力を支える隠された人間的代償」と題した記事を掲載した。この中で、モスクワの大学「ユスト」に籍を置いていたとされる北朝鮮の元軍人男性(現・韓国在住)の証言を伝えている。

男性は仲間の33人とともにコンテナで移動し、未完成のビルで寝泊まりしながら7時から深夜まで働いて月収600ドルを得ていたが、「(所属する)学校がどこにあるのかさえ知らなかった」と明かしている。

MSMTは報告書の中で学生ビザ発給の厳格化を呼びかけているが、ロシア側は人手不足を補うため、制度の悪用を事実上黙認している。

ウクライナ侵攻に伴い労働力不足が一層深刻化するなか、MSMTはこうしたロシアへの「偽装留学生」が、今後さらに増えると予測している。

文/五味洋治 内外タイムス

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