性犯罪者となった孫をかばう祖母…法廷に響く絶叫も届かず、男に下された厳しい判決【裁判傍聴記・後編】
中学生の妹の同級生に性的暴行を加えた20歳の保育士。孫が問われている不同意性交等罪の公判に情状証人として出廷した男の祖母は冷静に尋問に答えるも、徐々に冷静さを欠いていく。
尋問の終盤では、祖母が「私は孫を信じます!」と声を荒げるシーンもあった。
中学生の妹の同級生に手を出した保育士「俺のこと好きなんだ」勘違いの果てに…【裁判傍聴記・前編】
徐々に冷静さを欠き、孫の擁護に徹する祖母
弁護人「どうしてお孫さんは事件を起こしてしまったと思いますか?」
証人「話していて楽しかったから年齢を考えなかったのではないですかね。男友だちはいるけどモテたことがないから、自分がモテたと勘違いしたのではないかと思います」
弁護人に男の今後について聞かれ、祖母は答える。
「今後はよく話して、日常生活を見ていかないといけないと思っています。今の仕事(保育士)も辞めないといけないと思いますので本人が自暴自棄にならないように見ていきたいと思います。孫は職場でもイジメみたいなのがあったみたいなんです。本人は真面目であるのですが、心配です。今回は親にもかなり注意されているので本人も反省しています。被害者の方には大変申し訳ないです」
質問は反対尋問に移る。
検察官「今回はなぜあなたが証言を?」
証人「9月5日に法廷で証言してくれとお願いされました。9月5日までは事件のことは知りませんでした」
検察官「なぜ?」
証人「娘が私に心配をかけまいと思ったのではないですかね」
検察官「事件についてお孫さんと話しましたか?なんと言っていました?」
証人「はい。4度ほど事件について話しました。『モテて嬉しかった。OKが出たと思った』と言っていました」
検察官「それで勘違いして犯行に及んでしまったと?」
証人「孫は自分で突進していくタイプではないんです!!『僕、誘われたから手を出した』と泣きながら言っていました!!私はそれを信じています!!私は孫を信じます!!孫は仕事で小さい子どもと接して大変なんです!!」
検察官「誘われたとは具体的に?」
証人「LINEで『今日泊まりにくる?』と誘われたと言っていました。警察が取り合ってくれなかったから悲しかったと言っていました」
祖母が質問に答えられない孫に救いの手を差し伸べるも
証人の祖母は検察官からの質問に徐々に冷静さを失っていった。
罪を犯しているのは承知の上だろうが、孫が性犯罪者としていいように言われることに耐えられなくなったのであろう。
祖母は勘違いしているが不同意性交等罪は13歳未満、または相手が13歳以上、16歳未満で、行為者が5歳以上年長である場合に成立する。
百歩譲って、孫が誘われようが、孫を信じようが現行法では孫は性犯罪者なのである。
被告人質問がはじまり、男はうまくしゃべれない。
弁護人「恋愛感情を持っていた?」
被告人「…」
弁護人「言葉にするのは難しい?」
被告人「…難しいです」
弁護人「キープしたかったというのはどういう意味?」
被告人「彼女と遠距離でなかなか会えなかったので身近な人とそういう風になりたかった」
弁護人「被害者に対してどう思ってた?」
被告人「…」
弁護人「Aさんはあなたのことをどう思っていた認識?」
被告人「好きなのかなぁと」
弁護人「理由は?」
被告人「身体的距離も近く、LINEでも『泊まりに来ないの?』と言われて勘違いしました」
弁護人「当日、Aさんが隣で寝ていたのはどう受け止めていた?」
被告人「…好きだから隣に寝ているのかなぁと…」
弁護人「Aさんはあなたに交際相手がいるのも知っていて、実際に好きと言われたわけでもなく、身体を触っていいと言われたわけでもないんですよね?さっき、おばあ様は誤解しているようだったけど」
被告人「はい。身体的距離が近くて触っていいのかなと勘違いしてしまいました」
弁護人「Aさんの年齢は知っていたんですよね?その年齢は良い悪いではなく、やっちゃダメなのわかります?」
被告人「はい。今後こういうことがないようにしたいです」
今にも消え入りそうな声で答える男。緊張からか、質問をされても答えられずに沈黙する場面が目立った。検察官からの「弁護人が選任されるまで被害者に謝罪がなかったのはなぜか?」との問いに答えられずにいると、傍聴席で見守っていた祖母が「よろしいですか?」と手を挙げて発言権を求めた。
「しゃべらないでください」
裁判長は祖母の行動を制止した。
傍聴席にいる被害者Aの母親が判決を聞いて涙する
論告弁論前に被害者Aの母親の心情意見陳述が代理人弁護士によって読み上げられる。
「娘は8月のあの日まで普通の中学生でした。友人が多く、真面目な子でした。Bちゃんから施設へのお泊まりに誘われ、Bちゃんの母親からも安心で安全と言われたので了承しました。娘が帰ってきて明らかに様子がおかしいので問いただすも、なかなか言わず、ようやく真相を聞きました。Bちゃんの母親から口止めをされていたようでした。娘に口止めしていたのが非常に腹立たしいです。妹の友人に性加害なんて当然信じられません。
事件後、娘は自宅の鍵をしっかりと閉めるようになりました。被告人、母親に私たちの家は知られています。同じ地域に住んでいるので会うこともあるかもしれません。なぜ加害者が堂々と生活できるのか。引っ越しを要求したいのが本音です。娘はいまだに保健室登校をしています。被告人の妹のBちゃんが同じクラスにいるからです。Bちゃんと同じクラスに通えると思っているのでしょうか?被告人には最大限、重い罰を与えていただき、反省していただきたいです」
検察は論告で、年少の健全な被害者に与えた影響は大きい。被害者にとって被告人は友人の兄であり、身近な大人、保護すべき立場にある中での犯行で悪質。被害者は被告人の妹と会えずに保健室登校を強いられているとして懲役5年を求刑した。
一方、弁護人は公訴事実に争いはないが、被害者は年齢よりも大人びており、被告人は幼く見え、外観上の年齢差を感じない中で被害者から誤信が深まる行動があった。反省しており、前科前歴がなく再犯可能性は低いとし、執行猶予付き判決を求めた。
公判から一カ月半が経過し、判決宣告が行われた。
裁判長「主文、被告人を懲役3年に処する…理由について説明します」
傍聴席で代理人弁護士と判決を見守っていたAの母親は瞬時に理解ができず、代理人に顔を向ける。代理人から耳打ちをされ、その判決を理解した母親は顔を覆って泣き出し、代理人はその背中を小さく何度もたたいていた。
文/田辺朋之 内外タイムス






