「残業45時間ルール」はどう変わったのか…労基の一律指導取りやめ
労働者の残業時間に関して、労働基準監督署による「月45時間以内」という一律指導が今月から見直されている。
厚生労働省が「マンジャロ」の健康被害を周知「根本的な解決になっていない」という批判も
残業時間の上限は、労使で36(サブロク)協定を結べば月45時間以内、特別な条項を結べば月100時間未満まで認められている。この法律上の残業時間の原則上限そのものは変更されていない。
時間数だけで一律に「45時間以内に抑えるよう」指導するやり方を改め、今後は企業における「健康及び福祉を確保するための措置(健康・福祉確保措置)」の実施状況を重点的に確認する運用へ移行した。健康障害が生じる恐れが高いと判断される実態がある場合については、引き続き厳格な指導や是正が行われるということだ。残業規制が緩和されたわけではないが、労働団体は「時間外労働を促しかねない」と指摘している。
今回の運用見直しの背景には何があるのか。政府は7月に閣議決定した成長戦略などで、「労働時間や健康確保措置に関する労使の合意にのっとった指導が行われるよう速やかに見直す」との方針を盛り込んだ。深刻化する人手不足の中で、高市政権の成長戦略との整合性を取る必要があった。
指導の重点が「時間数」から「健康確保措置の実施状況」に移る以上、従業員の健康確保への取り組みが今まで以上に重要になる。例えば、医師による面接指導の実施体制、深夜業の回数制限、代償休日・特別な休暇の付与などが考えられる。
従業員の健康という視点でもっとも重要なのは「勤務間インターバル」の確保だ。
例えば、23時まで残業していたとする。会社の始業が朝9時なら、通常通り翌日朝9時に出社させる会社が多い。通勤に1時間かかるとすれば、食事や入浴時間を除くと、睡眠はギリギリ6時間確保できるかどうかだ。
仮に勤務間インターバルを11時間に設定すれば、翌日は朝10時の出社で良いことになる。人間の身体はある程度ハードワークであっても、十分な睡眠時間と食事があれば、健康維持が可能だ。とくに睡眠時間は絶対である。さらに、10時出社であれば、通勤ラッシュに巻き込まれなくて済むので、疲労度もかなり軽い。
「勤務間インターバル制度」は、2019年4月から企業には導入が努力義務として課されている。現在のガイドラインおよび助成金の要件に基づくと、「9時間以上」が最低ライン、「11時間以上」が望ましい水準とされている。ちなみに、11時間以上というのは、EUで採用されている国際標準(EU労働時間指令)である。
この他、長時間労働を是正するために国ができる方策として、時間外労働の割増率を高めるという手がある。経済評論家の門倉貴史氏がこう指摘する。
「日本の時間外労働の割増率は25%以上だが、欧米諸国では2倍の50%が一般的となっている。国際的に見て低くなっている残業代の割増率を引き上げることによって、超過労働に対する補償を手厚くすれば、会社側のコスト意識が高まり、できるだけ社員を早帰りさせ、従業員の超過労働を少なくしようというインセンティブ(動機づけ)になる」
真っ当な会社なら門倉氏が言うように動くだろうが、“ヤミ残業”や“隠れ残業”が増える可能性もあるので、やはり労基の厳しい監視は必要だ。
文/横山渉 内外タイムス






