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死刑執行のパチンコ店放火殺人犯は氷山の一角…他にも沢山「精神崩壊した死刑囚」

先月21日、高市政権では初めてとなる死刑執行が大阪拘置所であった。この際、一部メディアの報道でクローズアップされたのが、死刑執行された高見素直死刑囚が犯行時、精神疾患を抱えていたことだ。

高見死刑囚は2009年7月、大阪市内のパチンコ店の店内にガソリンをまいて火をつけ、5人を焼死させ、10人を負傷させたが、裁判で語った犯行動機は以下のように精神疾患の影響が明らかなものだった。

「自分に取りつく『みひ』という超能力者や、その背後にいる『マーク』という集団に嫌がらせをされていた」

「世間の人たちも見て見ぬふりをしている。復しゅうのため、無差別殺人を起こそうと考えていた」

相当ひどい妄想だ。ただ、高見死刑囚に限らず、この程度に精神が崩壊した死刑囚は珍しくないのが現実だ。この機会に私が知っている実例を紹介したい。

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「職員からのいじめ」を妄想し、苦しみ続けた7人殺害犯

たとえば、2021年12月に死刑執行された藤城康孝死刑囚もその一人だ。2004年に兵庫県加古川市で自宅の両隣の家で暮らす2家族7人を殺害した人物だ。

私が2013年に大阪拘置所で面会取材した際、藤城死刑囚は一、二審共に死刑判決を受けて上告中だったが、「拘置所の職員から『いじめ』を受け続け、その苦痛で裁判どころではない」と訴えてきた。

しかし、藤城死刑囚が主張する「いじめ」とは、「(房内の)トイレで用を足していると、廊下の職員が小窓からジーと見てくる」とか、「弁当を買ったら、職員が房に入れる時に上下や横にゆするので、いつも弁当の中身がどちらかに寄っている」などという内容。私には、藤城死刑囚が「被害妄想」に囚われているとしか思えなかった。

実際、藤城死刑囚は裁判の控訴審までに精神鑑定を3度受け、「妄想性障害」などと診断されていた。事件を起こした動機は「被害者らにずっと馬鹿にされ、見下されていた」というものだったが、そもそもこれも「被害妄想」だったのではないかと思えた。

死刑を執行されて刑場の露と消えたが、藤城死刑囚本人は「いじめ」の苦しみから解放され、楽になれたのかもしれない。

衛生夫が証言する死刑囚フロアの現実「話すこともできない死刑囚たち」

高見死刑囚や藤城死刑囚は犯行時、すでに精神疾患を抱えていたが、裁判で死刑確定後に精神を崩壊させた死刑囚たちもいる。その実例を私に教えてくれたのは、東京拘置所の死刑囚たちの収容フロアで「衛生夫」をしていた男性Aさんだ。

衛生夫とは、刑務所や拘置所で被収容者たちの生活の世話をすることが仕事の受刑者のことだ。死刑判決を受けた者は裁判を終え、死刑が確定した後は親族や弁護人など一部の者以外とは面会をほぼ許されない。死刑囚たちの獄中での様子を知る衛生夫経験者はある意味、「貴重な証言者」ともいえる存在だ。

Aさんによると、リンチで4人が死亡した2004年の架空請求詐欺グループ仲間割れ事件の主犯格・清水大志死刑囚は精神崩壊状態だったという。

「清水は朝、僕ら衛生夫がご飯やみそ汁を配食すると、すぐに器ごとひっくり返していました。ひっくり返したご飯やみそ汁はずっとそのままのこともあれば、時間が経ってから食べていることもありました。話しかけても『うん』としか言わなかったり、いきなり笑い出したり、意思の疎通ができない感じでした」

清水死刑囚以外では、2005年に茨城県鉾田町(現在の鉾田市)で独居高齢者2人を殺害した藤崎宗司死刑囚や、一般市民3人を含む4人が暴力団の抗争に巻き込まれて死亡した2003年の前橋スナック銃乱射事件の実行犯・小日向将人死刑囚も精神状態がおかしかったという。

「藤崎さんは言葉を発せず、いつも一日ずっと部屋の中で立っていました。小日向さんは身体が太く、刺青(いれずみ)があり、コワモテでしたが、色んな種類の薬を飲んでいて、いつもボーとしていました。この人もあまり話をしませんでした」

小日向死刑囚は死刑執行を待たず、今年1月、心筋梗塞を疑われる症状で獄死した。いつ執行があるか分からない死刑の恐怖に脅える日々で精神が崩壊し、寿命を縮めたのかもしれない。

壁に頭をぶつけ続けるIQ63の死刑囚

私が過去に面会取材した死刑囚たちの中にも、死刑確定後に精神が崩壊したとおぼしき者が1人いる。現在も大阪拘置所に収容されている高柳和也死刑囚だ。

高柳死刑囚は2005年に兵庫県相生市の自宅で金銭トラブルになった交際相手の女性とその友人の女性をハンマーで撲殺、死体をバラバラにして海や山に遺棄した。事件発覚当初の報道では、自分のことを「資産家の息子」と偽って被害女性と交際していたと伝えられ、悪賢い殺人犯だと思われた。しかし実際にはIQ63の軽度な知的障害者だった。

私が2013年に面会取材した当時、高柳死刑囚はすでに最高裁に上告を棄却されており、ほどなく死刑が確定するのは確実な状況だった。身振り手振りを交え、私に向かって必死に何かを訴えかけてきたが、吃音(きつおん)があり、たどたどしい話し方で、何が言いたいのかよくわからなかった。

高柳死刑囚とは死刑確定後、面会できなくなった。しかし数年後、大阪拘置所の同じフロアに収容された別の被告人に面会取材した際、高柳死刑囚の近況を聞かされた。

「あの人、いつも壁に頭をゴン、ゴンとぶつけているんです。それが気になって落ち着けないんです」

高柳死刑囚も死刑執行への恐怖で精神に異常をきたしたのだと思う。

あのオウム真理教教祖の「廃人化説」を裏づける証言も…

このほか、1999年の池袋通り魔殺人事件の造田博死刑囚(東京拘置所収容中)も犯行時に「精神分裂病(現在の統合失調症)の辺縁群の疾患」、2013年の山口5人殺害事件の保見光成死刑囚(広島拘置所収容中)も犯行時に「妄想性障害」だったとそれぞれ裁判で認定されている。

また、有名どころでは、2018年に死刑執行されたオウム真理教の教祖「麻原彰晃」こと松本智津夫元死刑囚も逮捕後に精神が崩壊し、廃人化していたという説がある。実際、前出の衛生夫経験者Aさんは「廃人化説」を裏づけるような話を聞かせてくれた。

「麻原は東京拘置所でも他の死刑囚たちが収容されているフロアにはいませんでした。別のフロアで誰にも姿を見せないようにされていたと聞きました」

日本では現在、全国7カ所の拘置施設に100人を超す死刑囚が収容されている。「精神が崩壊した死刑囚」は私が知る者以外にも多数いると思われる。これは、法務当局が死刑囚たちを外部の者に会わせたがらない理由の1つだと思う。

文/片岡健 内外タイムス

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