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中国デジタル行政の失敗 アプリ開発もユーザー1日60人で4670万元が「水の泡」に

中国は近年、急速なデジタル化が進んでおり、中国各地では行政サービスのデジタル化に向けた取り組みが加速している。

多くの地域がスマートシティの構築に注力し、行政の効率化や住民サービスの向上に向けた試みを重ねている。しかしその一方で、多額の資金を投じたプロジェクトが放置されるという事例もある。

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最近報じられた雲南省曲靖市のデジタル化プロジェクトは、その典型的な失敗例として大きな波紋を広げた。人口550万人を抱える都市でありながら、開発した行政アプリのユーザー数はわずか1日60人にとまり、最終的に4670万元(日本円で約9億円以上)もの公的資金が無駄になったのである。

プロジェクトの中心となったのは「曲靖デジタル運営センター」である。ここはかつて、地方政府肝いりのプロジェクトが数多く展開されていた場所である。しかし現在、建物はもぬけの殻で、がらんとしたオフィスには誰もいない。

ここで開発された市民用サービスアプリ「曲靖通」も姿を消していた。曲靖市の人口は550万人を超えるにもかかわらず、このアプリのユーザー数はわずか1日60人にとどまった。このアプリは小学校の入学手続き以外はほぼ使われることなく、大半の市民はこのアプリの存在すら知らない有り様だった。

曲靖市と雲南省の重複開発

この理由はいったいどこにあるのか。

「曲靖通」アプリは2021年に供用を開始したが、搭載された70余りの機能のうち、独自に開発されたものはわずか6つで、残りの多くは雲南省の行政アプリへのリンクだった。

中国の行政機構は日本でいう「都道府県と市町村」のように「省」の下に「市」が位置する。

つまり、すでに省のアプリが存在していた以上、市によるアプリ開発そのものが重複開発であり、市民が使わないのは当然の帰結だった。ではなぜ当時の曲靖市は、このような重複開発に踏み切ったのか。

成功事例に感化されて導入も

事の発端は2021年に当時の市指導部が掲げた「シティブレイン」構想にある。これは、たとえばあるビルで火災が発生したときに市の中枢となる「シティブレイン」が火災発生地点と周囲の交通状況を分析し、最もアクセスに時間がかからない消防署・警察署・病院に自動で指示を出すというデジタル都市管理システムだ。

曲靖市は先行して「シティブレイン」の成功を収めていた浙江省杭州市の事例に感化され、自治体としての実力や需要を見極めないまま導入を決定した。

なおかつ行政にはデジタル技術の知見を持つスタッフがいなかったため、基本構想や導入、検証を全て外部企業に委ねた。入札を経て市と民間の合弁会社を設立し、政府がサービスを購入する契約を結んだ。

外部企業が「シティブレイン」の成果物として提示したのはデータベース、データセンター、指令センター、そして「曲靖通」といったアプリを含む包括的なプランだった。なかでも最も目立つ成果物として造られたのが、幅十数メートルに及ぶ巨大ディスプレーを備えた指令センターだったが、それは見栄えだけの展示用スクリーンにすぎなかった。

市政府にはシステムの運用に関する明確なビジョンがなく、企業と結んだ委託契約書にも「システム運用、データ管理、保守サービス」といった抽象的な文言が並ぶだけであった。

その結果、完成したアプリは見栄えの良いだけのハリボテと化した。住民向けサービスは使われず、統合管理システムも形骸化し契約に基づき毎年の運用保守費は2022年から2024年にかけて毎年支払れ、3年間で約3000万元が消化された。

実態が伴わないシステムに対して、なぜ多額の公金が支払われ続けたずさん。その要因は、ずさん極まる形式的な検査にあった年ごとの検収は1000ページを超える資料によって行われたが、2024年の例では、検収の時間はわずか120分しか設けられていなかった。1分間に10ページ以上を精読しなければならない計算である。

さらに、集められた検収委員会の顔ぶれは裁判所、農業学校、病院などの関係者であり、ITの専門家とは到底言えない構成であった。検査の実態は、仕様書に記載された項目が作られているかをチェックするだけで、実際に稼働して成果を上げているかどうかは完全に無視されていた。

日本から見れば中国のデジタル化は著しいと思われるが、実際にはこういった多額の公費が投入されながらお役所的な対応で失敗に終わる事例も少なくない。

デジタル化は手段であって、それ自体が自己目的化してはならない。曲靖市の事例は、現実を見極めなければ、完成と同時に朽ちていく「デジタル箱モノ」を生み出すだけに終わるという教訓を投げかけている。

文/下川英馬 内外タイムス

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