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「高卒プロ」が減る野球界 ピッチクロック導入で深まる高校とプロの“溝”…世界基準への改革が生む新たな課題

球界の改革が止まらない。

3日、プロ野球12球団と日本野球機構(NPB)は実行委員会を開催し、「ピッチクロック」の導入を全会一致で決定したことを発表した。

具体的な導入時期については未定。目的は、長時間化する試合によるファン離れを防ぐための試合時間短縮やテンポの改善、そしてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や国際大会など、世界基準に合わせるための国際化対応だ。

日本プロ野球が、新たなステップへ踏み出す。しかし、この改革は近年の“ある傾向”に拍車をかける可能性がある。それが、「高校からプロ」という進路の変化だ。

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世界基準へ、いよいよ日本球界も「時間」と戦う

2023年からMLBの公式ルールに導入された「ピッチクロック」とは、試合短縮を目的とした投球間の時間制限ルールだ。

投手は走者なしで15秒、ありで18秒以内に投球動作に入らなければならず、違反すると1ボール。打者も残り8秒までに構えなければならず、遅れると1ストライクとなる。さらに、けん制も1打席2回までに制限されている。

MLBではこの新ルールによって、平均試合時間が約30分短縮されるなど、劇的な効果を上げた。日本球界にとっては、試合時間短縮だけでなく、「国際基準への適応」という意味も大きい。

今年3月に開催されたWBCでは、初めてピッチクロックが採用された。日本のプロ野球選手にとっては未経験のルールだったため、対応に苦しむ場面も見られた。

WBCでメジャーリーガーと対等に戦うため、そしてメジャー挑戦を表明する選手が増えていることからも、早期導入が望まれてきた。アマチュア球界でも、すでに社会人野球では2023年から、大学野球でも今年から導入されている。

侍ジャパンの新監督に就任した井口資仁監督も、「やっぱり国際基準に合わせてやっていかないと。今回(今年のWBC)はそういうところでうまくいかなかったところはあると思う」と、早期の導入を歓迎している。

プロ野球が世界基準へ歩みを進めることに、異論はない。ただ、この改革の先にあるのは、本当に明るい未来だけなのだろうか。

「高卒プロ」が減少…2020年を境に変わった進路

高卒でプロ入りする選手は、大幅な減少傾向にある。

過去10年を振り返ると、2018年には37人の高校球児が支配下選手としてドラフト会議で指名された。しかし、2020年から減少傾向に入り、昨年は19人にまで減少している。

一つの転機となったのが2020年に猛威を振るった、新型コロナウイルスの感染拡大である。同年は春の選抜大会、夏の選手権大会が中止に。活躍を披露する場を失ったことで、スカウトの目も球児へ届きづらくなった。

高校生では、高橋宏斗(中京大中京高→中日ドラゴンズ)、山下舜平大(福岡大学大濠高→オリックス・バファローズ)らがドラフト指名を受け、プロ入りを果たした。

一方で、同学年の宗山塁(明治大→東北楽天ゴールデンイーグルス)、渡部聖弥(大阪商業大→埼玉西武ライオンズ)、西川史礁(青山学院大→千葉ロッテマリーンズ)、佐々木泰(青山学院大→広島東洋カープ)、篠木健太郎(法政大→横浜DeNAベイスターズ)らは、高校時代から有力選手として名をはせながら、4年後のプロ入りを目指して大学進学を選択した。

さらに、金丸夢斗(関西大→中日ドラゴンズ)、麦谷祐介(富士大→オリックス・バファローズ)、中村優斗(愛知工業大→東京ヤクルトスワローズ)ら、大学進学後にドラフト候補へ台頭した選手もいる。彼らは2024年のドラフト会議で上位指名を勝ち取った。“即戦力”として1年目から活躍を見せた選手も多く、大学球界への注目度をさらに高めることになった。

また、2024年には「低反発バット」が採用された。ライナー性の打球速度を弱め、「投手を守るため」として導入されると、ホームランは一気に減少した。

これによって野手の評価が難しくなった。「高校通算○本塁打」という数字は死語に等しく、もはや評価材料として聞くことはなくなった。野手を評価しづらくなれば、相対的に投手の評価も難しくなる。その打者を打ち取ったことに、どれだけの価値があるのか判断しづらくなるからだ。

こうした環境変化の中、ピッチクロック導入によってプロと高校の間に新たな“溝”が生まれようとしている。

プロと高校を隔てる「ルール間の溝」は誰が埋めるのか

前述の通り、すでにアマチュア球界でもピッチクロックの導入が進んでいるが、高校球界への導入は簡単ではないだろう。

非営利目的の運営ゆえに、潤沢な資金があるわけではない。新ルールに対応するための設備導入や運用コストは、各校や現場にとって重い負担となる。

キャッチャーがピッチャーへサインを伝達する「ピッチコム」は、サインを簡略化することで対応できるかもしれない。しかし、制限時間を選手に明示するクロックボード、違反を審判が即座に判定するための機器など、関連機器はほかにも必要になる。それらを運用する人員も必要だ。

そもそも高校野球は、プロ野球と比べてもバッテリー間のサイン交換や試合進行のテンポが速い。現時点で導入する必要性は、必ずしも高くない。

つまり、日本球界のトップカテゴリーであるプロ野球と、その最初の入り口となる高校野球に、ルール上の大きな“溝”が生じるということだ。

プロ野球選手でも苦戦を見せたピッチクロックに、高校を卒業したばかりの選手がいきなり適応するのは簡単ではない。越えるべきハードルが増えれば、プロ球団は高校球児を「戦力」として捉えづらくなるのではないか。

この上さらに議論が白熱している「7イニング制」が導入されれば、ルール間の溝はさらに深くなる。溝が深まれば深まるほど、球児にとってプロ野球への入り口は狭くなる。

世界基準への対応は、日本野球が発展していくために必要な改革だ。試合時間を短縮し、国際大会で戦うためにルールを変えることも、これからの日本野球には欠かせない。

だからこそ、その改革が「高校からプロ」という道を狭める結果になってはいけない。

高校からプロへ。そして、プロから世界へ。日本野球が本当の意味で世界基準を目指すのであれば、その入り口にいる高校球児たちが、スムーズに次のステージへ進める環境も同時につくらなければならない。

プロとアマチュアのルールをどうつなぐのか。世界基準へ向かう日本野球にとって、次なる課題はそこにあるのかもしれない。

文/加藤聡 内外タイムス編集部

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