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寺が売られて墓や遺骨が消えた…経営難の寺が急増、全国1万7000は“空き寺”

寺が消え、知らないうちに墓のあった場所がなくなっていた…。大都会の一等地でそんな事件がたびたび起きている。

佐賀県の寺放火事件 1950年「金閣寺放火事件」との共通点が話題に

かつて寺があった場所には新築の戸建て住宅が建ち並ぶ。寺の経営が苦しくなり、借金を返せなくなった住職が“寺の代表者の権利”と寺や本堂などの“不動産”を売却しているのだ。その不動産は転売され、最終的には不動産会社が買い取って住宅開発している。

“寺の代表者の権利”は別の寺が買い取ったり、宗教法人格の欲しい団体が買い取ったりするケースもある。宗教法人の名義を手に入れた企業は納骨堂を運営するなどしている。また、宗教法人の税制優遇措置が、犯罪に悪用されることもある。文化庁の調べだけでも不活動宗教法人は5019団体もあり、そうした団体は“脱税の隠れみの”として狙われる可能性がある。

NHK「クローズアップ現代」では、地価高騰の陰で都会の寺に起きている“闇”を取材した。大阪市住吉区の住宅街にあった「薬師寺」には600ほどの檀家がいたという。江戸時代に創建された寺の敷地400坪には十数基の墓が並んでいたが、大阪市内の檀家男性は5年前に異変に気づいた。

墓はすべて細い参道に移設されていて、しかも一部の土地は行政からの埋葬許可が下りていない場所だった。墓の持ち主たちは遺骨の引き取りを余儀なくされた。

宗教法人の売買を仲介するサイトも

全国に約7万7000の寺があるが、1万7000ほどは既に“空き寺”だ。経営難に苦しむ寺の住職は増えており、2040年までに全体の約3割の寺が消滅する可能性があるとも予測されている。

地方の過疎化や少子高齢化により、寺の固定収入を支えてきた「檀家制度」が崩壊しつつあり、離檀(お寺との付き合いをやめること)を選択する家も増えている。家族葬や直葬(火葬のみ)が一般的になり、従来の大きな葬式や七回忌などの法事を行わない世帯が増え、寺の主収入であるお布施が大幅に減少した。

空前の地価高騰を背景に、開発が進む都市部に残る寺の広大な土地が格好のターゲットになっており、寺の売買に絡む不正で逮捕者も出ている。

大阪・通天閣からほど近いところにある正圓寺(創建939年)。檀家が減少し、住職は老人ホームの運営に着手したものの金銭的に行き詰まり、複数の不動産会社が近づいてきた。不正な取引が行われ、住職を含む3人に有罪判決が出されて寺は閉山となった。

経営難の寺や神社を「売りたい」「買いたい」というニーズは年々増え、宗教法人の売買を仲介するサイトもある。NHKの取材で確認されたのは21の業者で、そのうちの1つ、7年前にサイトを立ち上げたという60代の男性は、知り合いからの紹介などを通して、売却を希望する約150の宗教法人を掲載している。

大阪市内の雑居ビルの窓には、「宗教法人売買仲介」という大きな張り紙まで貼られている。

ベストセラー小説「地面師たち」(集英社)の作者、新庄耕氏は寺社の土地売買についてこう話す。

「開発競争が過熱していて土地も限られてきている中で、都心の一等地にエアポケットのように残されていたのが寺の土地。しかも、まとまった広大な土地。開発業者や関係者にとっては極上の土地だと思う。土地には人間の欲望が詰まっている」

文/横山渉 内外タイムス

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