サイバーステップに事業譲渡したMAKE VALUEが4か月で民事再生法を申請 M&Aによる多角化の功罪
中古品の売買などを手掛けるMAKE VALUEが、7月13日に東京地方裁判所に民事再生法の適用を申請、監督命令を受けた。負債総額は48億円。実はこの会社、運営していた中古ブランド時計の売買事業を今年3月にサイバーステップに売却していた。
サイバーステップはオンラインクレーンゲーム「トレバ」を運営している。最盛期の売上高は130億円を超えていた。しかし、ゲーム人気が一巡したことで2026年5月期の売上高は21億円。6期連続で赤字に陥っている。
破産した全東信被害オーナーが語る、なぜ全東信は加盟店を集められたのか
2025年7月に持株会社体制へと移行。代表取締役が創業者の佐藤類氏から湯浅慎司氏となった。湯浅氏はアパレル事業のANAPの社長を務めた人物で、エステサロン「エルセーヌ」などを手掛ける株式会社TLCを買収するも、数カ月後に全額減損損失を計上する憂き目に遭った。サイバーステップも湯浅氏が代表に就任してから、M&Aによる事業の多角化を進めるようになった。
サイバーステップはMAKE VALUEの中古ブランド時計の売買事業を9億5000万円で取得した。取得した事業の2025年6月の売上高は31億1000万円、8200万円の営業利益を出している。資産は現金や売掛金、商品など2億100万円で、負債は買掛金100万円。
取得した事業自体の財務内容は悪くなかったように見える。しかし、サイバーステップはこのM&Aによって生じたのれん6億8000万円を全額減損計上した。MAKE VALUEが民事再生手続きの申請を行った結果、事業継続と取引関係の維持に不確定要素が生じ、事業計画の信頼性に重大な疑義が出てきたという。
帝国データバンクは、MAKE VALUEは不適切会計が発覚して事業環境が悪化。資金繰りに窮したと報じている。サイバーステップはMAKE VALUEの被害者であるようにも見える。しかし、他のM&Aでも失敗が目立つ。
純資産2000万円の会社を12.5億円で取得
サイバーステップは2025年10月にテレマーケティングなどを手掛ける株式会社3rdの全株を取得する基本合意書を締結、2026年1月に株式を取得した。対価として売主に支払った金額は12億5000万円だ。
しかし、AI技術の急速な普及で前提条件を大きく見直す必要があったため、契約を解除して支払い済みの12億5000万円全額の返還を要求。売主に対して譲渡代金相当額の保全を求めていたものの、保全がなされていることの裏付けを得ることができなかった。売主の資力も十分ではなかったとしている。
結果として12億5000万円を貸倒引当金に計上、特別損失を出すに至っている。サイバーステップは2026年5月期に34億1700万円もの純損失を計上した。
株式会社3rdは2025年3月末の純資産が2000万円の会社だ。営業利益は1500万円。設立は2024年4月である。設立から2年足らずの純資産2000万円の会社を、12億5000万円で取得しているのだ。
アポイントの獲得やクレーム対応などコールセンター業務がAIの脅威にさらされているのは事実だ。しかし、AIに代替されるとの見方は、以前から指摘されていた。2025年12月には三井住友カードがソフトバンクの子会社Gen-AXの自律思考型AIの音声応対ソリューション「X-Ghost」を導入すると発表している。基本合意書を交わしたころには、すでに具体的なサービス導入が始まっていたのだ。
サイバーステップは株式会社3rdの評価額を高く見積もっているように見受けられるが、それは事業の成長性に期待してのものだろう。一方で、株式を取得してから約半年で生成AIによって前提条件が崩れたというのは、説明として整合性を欠くようにも見える。
主力サービスだった「トレバ」の勢いが急速に失われたため、事業の多角化が必要だという事情は理解ができる。しかし、デューデリジェンス(買収監査)を十分に行わないM&Aは自滅の道を進みかねない。
文/不破聡 内外タイムス






