韓国保守系大手紙・中央日報が経営危機に 新聞中心のビジネスモデルの限界示す
韓国の三大保守紙の一角を占める中央日報と、系列テレビ局JTBCが深刻な経営危機に陥り、韓国メディア界に大きな衝撃を与えている。
発端となったのは、JTBCが約206億ウォン(約20億円)の資産担保融資を返済できず、債務不履行(デフォルト)を宣言したことだった。これを受けて信用格付けが急落し、債権者による返済要求が相次ぎ、中央グループは主要5社について更生手続きを申請した。
一方、中核企業である中央日報は独自再建を選択したものの、資金繰りは改善せず、現在は銀行主導の経営再建に追い込まれている。
今回の危機の直接的な要因として挙げられるのが、JTBCがオリンピックやサッカー・ワールドカップの放送権取得に巨額の資金を投じたものの、期待した収益を確保できなかったことだ。
しかし、より根本的な原因は、急速に変化するメディア環境への対応の遅れにある。動画配信サービスやSNSの普及によりテレビ広告市場は縮小を続けており、JTBCは開局以来、赤字経営が続いていた。不動産売却による資金調達も市況悪化によって頓挫し、系列企業間の債務保証が連鎖的な資金危機を招いたと分析されている。
テレビ事業への執念と読者離れ
中央日報は1965年、韓国最大級の財閥であるサムスングループ創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル)によって創刊された。同紙は1980年、全斗煥(チョン・ドゥファン) 軍事政権による「言論統廃合」によって系列テレビ局を失っており、それが2011年のJTBC設立につながった。
JTBCは数々のヒット作を生み出した。熾烈(しれつ)な受験競争と上流階級社会を描いた「SKYキャッスル」や、若者たちの挑戦と復讐(ふくしゅう)を描いた「梨泰院クラス」は、日本でも高い人気を集めた。また、朴槿恵(パク・クネ)政権を揺るがした「崔順実ゲート」のスクープ報道でも大きな存在感を示した。
一方、グループの中核である中央日報は、財界や市場経済を重視し、日韓関係の改善にも比較的前向きな穏健保守路線を取ってきた。
しかし韓国社会の保守・革新対立が激化するなかで、保守層からは「保守色が弱い」との批判を受けることもあり、読者離れの一因になったとの指摘もある。中央グループはさまざまな事情から、サムスングループと距離を置いており、直接的な支援は受けられない状況になっている。
日本の新聞業界にも迫る構造的課題
中央日報とJTBCの危機は、日本のメディア業界にとっても決して他人事ではない。
日本新聞協会の統計によると、日本の新聞総発行部数は30年足らずで半減し2025年には約2486万部まで落ち込んだ。各紙とも販売部数の減少に対応するため、夕刊の休止や支局の統廃合、取材体制の縮小を進めているものの、苦戦が目立つのが毎日新聞だ。かつては数百万部規模を誇ったが、現在100万部割れが目前に迫っている。
日本の新聞社やテレビ局が、韓国の中央グループのような急激な経営危機に直面する可能性は現時点では高くない。しかしインターネット上でニュースが無料で流通する時代に、読者や視聴者が対価を支払ってでも求める独自の情報や分析を提供できるか。中央日報とJTBCの苦境は、日本のメディア業界にも深刻な課題を突き付けている。
文/五味洋治 内外タイムス


