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4年間で1000万円超を勤務先から着服した経理担当の30代女 「夫の暴力」と説明も信憑性は…【裁判傍聴記】

「夫に『必要な金額を用意して』と言われて…」。神奈川県内のある法人組織の経理担当職員だったE被告(37)は、横領に手を染めた理由をこう説明した。

E被告は19年3月から23年6月にかけての4年余りの間に、同法人の口座から計1100万円余を着服横領したとして業務上横領罪に問われた。横浜地裁での公判で、E被告は「生活費のため」に横領したことを認めた。

11年から同法人に勤務し、口座の管理などを長く担当していた。なぜ19年から法人の金に手を付けたのか。きっかけとなったのは、18年12月に夫と結婚したことのようだ。その3か月後から、横領行為を始めたとされる。

E被告自身の説明によると、結婚時、夫は定職についておらず、建築関係の仕事を始める準備をしている段階だった。夫から月10~20万円程度の「仕事関係者との交際費」を求められ、当時月収が二十数万円ほどだったE被告は当初、カードローンなどを利用して夫に渡していた。ほどなくローンは上限に達し、法人の口座の金に手を付けるようになったという。

「結婚当初、夫は『すぐに働く』と言っていたのですが、半年間は仕事せず、生活が崩れていってしまいました」

その後、夫は仕事を始め、月55万円前後の収入を得るようになった。だが「交通費や交際費がさらにひどくなり、余計に出費がかさむようになりました」(E被告)。夫は交通費に一日に1万円ほど、交際費も月30万円ほどかけていた、とE被告は説明する。

弁護人「夫に相談はできなかったのですか」

E被告「言ってしまうと、暴力を振るわれてしまうので」

弁護人「どのような暴力を」

E被告「殴られるとか、物を投げられたり包丁を突き付けられたり…」

弁護人「家族や友人に相談は」

E被告「できませんでした」

約4年間で計37回も着服

E被告は約4年間で計37回にわたり、同法人の口座から着服したとされる。ほぼ毎月といっていいほどのペースで着服していたことになる。

1回あたりの額については「10万から30万円くらい」と説明。だが、検察側は20年1月に108万円、同年10月に96万円、21年9月に92万円と、E被告の説明を大幅に上回る額を着服していた事実を突きつけた上で、なぜここまで多額なのかを問いただした。

E被告「夫から、必要な金額を用意するように言われました」

検察官「100万円となると、さすがに多すぎるのでは」

E被告「その金額を、そのまま夫にお渡ししていた形になります」

検察官「100万円も、何に使われていたのですか」

E被告「そこまで問うことができませんでした」

要は、夫の暴力が怖くて、言われるがまま多額現金を用意し、使途を確認もせずそのまま夫に流していた――というのがE被告の言い分だ。

夫と離婚後も横領

E被告はその夫と22年3月に離婚。つまり、E被告は離婚後も着服横領行為を続けていたことになる。検察側によると、計37回のうち10回ほどは離婚後の犯行で、しかも1回に50万円も着服したこともある。

離婚後の犯行についてE被告は「夫の借金の返済」と、やはり夫が原因であることを強調しつつ、「車のローンもあった」「手元にお金がないと不安というのがあって…」「まだ大丈夫というような、自分の認識の甘さもあった」とも明かした。

この「元夫」なる人物については、横領額の大半を費消したことを裏付ける証拠や元夫自身の供述資料が検察側から裁判所に提出された形跡はなく、弁護側が元夫本人と接触して暴力の事実も含めて事情を確認したような形跡も示されなかった。

あるのは「E被告の主張」だけで少なくとも法廷では裏付けが明示されず、E被告の主張を信用するかしないかという情緒的なレベルの話にとどまる。離婚後も横領を重ねていたという事実だけでも、その主張の信用性は大きく揺らぐ。

逮捕後に親族から借りて一括弁済

E被告は23年9月に横領していた事実を自ら法人に申告。24年1月に解雇された。東北地方の実家に戻り、法人とは月々の分割で被害弁済していく約束をしていた。だが「就職先がなかなか見つからず、返済できていなかった」(E被告)。

E被告は25年11月に逮捕。その1か月後、約1200万円を親族から借り受けて一括弁済した。

裁判官は被告人質問の中で、こう指摘した。「最初から分割で支払っていれば、逮捕されることもなかったのでは。(法人側と)話し合いはきちんと続けていたのでしょうか」。

言外に「逮捕直後に慌てて一括弁済するくらいなら、最初から分割弁済をしっかりやっておけばよかったのに」という本音がにじむ。この弁済の遅れも含め、E被告自身の「認識の甘さ」が根本にあったのではないか。

夫の暴力が事実であるならば当事者には深刻な問題だが、それと他人の金に手を出すこととは全くの別問題としか言いようがない。横浜地裁はE被告に懲役2年6月、執行猶予3年(求刑・懲役3年)を言い渡し、自ら犯行を申告したこと、起訴分の額を超える弁償を済ませたこと、前科がないことなどに触れて一定の情状酌量を認めた。

ただ、「夫の暴力」について地裁は言及せず、“スルー”した形となった。裁判官は「問題が起きたら周りの人に必ず相談するなどして、犯罪以外の方法で解決してください」と諭していた。

文/篠田哉 内外タイムス

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