• 全国
  • 18歳女性を装って家族らに連絡 殺人で無罪主張の被告に残された謎【裁判傍聴記・前編】
  • HOME
  • 全国
  • 18歳女性を装って家族らに連絡 殺人で無罪主張の被告に残された謎【裁判傍聴記・前編】

18歳女性を装って家族らに連絡 殺人で無罪主張の被告に残された謎【裁判傍聴記・前編】

2023年6月7日、渥美遼馬被告(33歳)は交際していたAさん(18歳)をナイフで刺して殺害。その後、高校の同級生B(33歳)を呼び出して遺体をブルーシートで包み、山梨県の山中に遺棄したとして起訴された。

その後、渥美被告はAさんの携帯電話から家族や友人にメール返信し、被害者がまだ生存しているかのように偽装。4か月間、隠ぺい工作を続けていたが、行方不明届が出された。渥美被告が駐車場に放置したクルマからAさんの血痕が。

事情聴取されたBの供述から、一部白骨化した遺体を発見。歯型鑑定でAさんと確認された。渥美被告は死体遺棄については認めたが、殺害は否定した。弁護側は、犯行時の車内には渥美被告とBが一緒にいて、Aさんが刃物を取り出した時、止めに入ったBがAさんを刺したと。被告人質問でも、渥美被告は殺人罪について無罪を主張した。

「Aさんと2人でコンビニの駐車場に行って、Bと会った。後部座席でAさんがパパ活と覚醒剤をやっていることを追及して口論に。カッとなって、『バラして、地元にいられないようにしてやる』と言ったら、Aさんはナイフを取り出したので、腕をつかんだ。前の座席にいたBが後部座席にきて、Aさんからナイフを奪おうとして、逆にAさんを刺してしまった。

『ウッ』というAさんの声が聞こえて、Bが『やっちまった』と。刺したんだなと。Aさんは後部座席でぐったりしていた。『大丈夫か』と聞いたが、返事はなかった。『救急車を呼ぶから』と。Bは自分の車に戻って、『俺も死んでやる』と。Bが騒いだので、警察を呼ばれたらまずいと、駐車場を離れた」

「どうして救急車を呼ばなかったのですか」という質問には「どうせ助からないと思ったから。ぐったりした様子を見て呼んだところで…」と。

被告に借金を申し込んだB

法廷でBが証言した。渥美被告が、「Aさんを刺した」と主張した人物だ。証言した動機を「本当の話をしなければと思った」と。Bは今回の事件で、死体遺棄罪で執行猶予付きの有罪判決が確定していた。

「渥美は高校の同級生で、家族のように思っていました。お互い高1で退学になったときは、毎日のように連絡を取っていた。

お金に困って、渥美に借金を申し込んだ。700万円くらい。渥美の祖父が亡くなり3000万円くらいの遺産が入ったと聞いていたので。

(事件当日)手持ちのお金を貸してもらうために、指定されたコンビニの駐車場に行った。クルマで来た渥美の腕や足には血がついていて、後部座席に人の足が見えた。びっくりした。わけがわからなかった。『誰なんだ』と聞いたが、『半グレの人』とはぐらかされた。

車内で血の付いたナイフを見せられて、『生々しいでしょ』と言われた。ナイフの刃の部分全体に血がついていた。何と言っていいのかわからなかった。その後、ブルーシートやロープなどを買うためにドン・キホーテへ。1人で店内に入って購入した。どうしてもお金を貸してもらいたかったから、お願いされたら断り切れないと思った。

ブルーシートで(遺体を)包むのを手伝ってくれと言われたが断った。遺体を見たり触れたりするのが嫌だったので。運転するだけならと自分のクルマを運転した。奥多摩で渥美がブルーシートに包んだ遺体を道路下に落とすのを、かなり遠くから見ていた。この日は2万円借りました」

繰り返された偽装工作の内容とは

渥美被告の弁護士がBに質問した。

「被告人に対して何か言いたいことはありますか? 被告人の方を向いて言えますか」

Bは4メートル左に座っている渥美被告の方を向いて、言い切った。

「事件を起こす前に相談してほしかった」

渥美被告への罪名には、殺人、死体遺棄に加えて、横領と電子計算機使用詐欺も。横領は血痕が付いた代車を返さず、駐車場に放置したため。電子計算機使用詐欺は、携帯電話を使って、Aさんの預金口座から20回にわたって計23万7000円をチャージして奪ったため。

被害者Aさんが働いていた会社の女性上司が証言した。「Aさんは高3からアルバイトをはじめて、卒業して正社員に。仕事は高齢者のデイサービス。勤め始めて2か月後、LINEで『体調が悪いのでお休みをください』と。それまで遅刻したり無断で休んだことはなかったのに、無断欠勤が続いた。その後、会社を解雇された」

Aさんのスマホからは、家族や友人らにメールが入っていた。すべて渥美被告によるもので、生存しているという偽装工作を繰り返していたのだ。

「会社の全員が、Aさんがずる休みしていると思っていました。試験に合格して資格を取ったので、他の会社へ移ったのかな、職場が嫌だったのかなと。

彼女が悪者になっていました。自分も信用してあげられなかった。なりすましのLINEだと知ったときは……とても悔しかったです。Aさんの成長を見守ることができなくて残念です」

裁判の争点は2つ。刺したのは渥美被告なのか、Bなのか。そして十分に立証できているかどうか。

遺族の父が「トイレで泣いた」弁護士が語った親子の食事【裁判傍聴記・後編】に続く

文/青山泰 内外タイムス

関連記事一覧